第9話:夢
俺たちはチフレ婦人の屋敷に行き、アポスを届けその際に竜と戦ったことを話した。
「なぜ、アポスを捕らえたら竜が現れたのかご存知ですか?チフレ婦人」
俺は極力丁寧な言葉で話した。すると
「さぁ・・・。アポスは臆病な動物ざますから、竜に助けを呼んだのかもしれないざますね」
まったく理由になっていない返事が返ってきた。
(このババア・・・!!!ちゃんとした答えを言え)
俺は本音を飲み込み口には出さなかった。
「ですが、アポスを捕らえて本当にありがとうざます!わたくしのささやかな夢は叶ったざます」
「〈ささやかな夢〉?それは一体どういうことですか?」
プエルが怒りの声を殺し冷静な声で問う。
「そ・それは、ほら、わたくしの夢は希少動物を保護することですので・・・」
チフレ婦人は苦し紛れの言い訳をする。
「そうですか。わかりました。では依頼は完了しましたので、私たちは帰ります」
「そうざますね。お金はクロームハウスで貰ってほしいざます」
チフレは満足そうに言う。
そして俺たちは婦人の屋敷を出て、クロームハウスへ向かった。
俺たちはクロームハウスへ行き受付の男の所に行った。
「依頼を終えたようですね。ご苦労様です。では、これが依頼完了金です」
そう言うと男はプエルにお金を渡した。
「へぇ・・・。Cクラスで10000ギルドかぁ。多いね♪」
「ぎるど?」
「この世界の通貨じゃな」
ガイルが説明してくれた。
(このごろよくガイルが説明してくれるな・・・)
俺はそう思いながら二人と一緒にクロームハウスを出た。
「とりあえず、家に帰ろう。レンホウも家族みたいなもんだからね♪」
(家族か・・・)
俺には家族はいなかった。と言うよりいたが全員病気や事故などで死んでしまっていたから。
「どうしたのじゃ?」
ガイルが心配そうに俺を見て言う。
「いや、俺家族いなかったからさ」
「え!?じゃ、両親はいなかったの?」
「いや、いた。全員死んだけど」
俺は不思議と悲しくなかった。
そう言ってると、家に着いていた。
この家は、純和風の雰囲気を出していた。
「広いな・・・」
「まぁね♪」
プエルが自慢気に言う。
俺たちは中に入って談話室?茶の間?みたいな所に来た。
「とりあえずレンホウは寝たら?別な世界から来て疲れたでしょ?」
「どんなだよ?」
「気にせずに寝ることじゃ。疲れを癒せ」
俺はガイルとプエルの言葉に甘え寝ることにした。
「じゃ、明日ね♪」
「と言っても明日は請負はしないつもりじゃ。ゆっくり寝るが良い」
「あぁ。じゃ、おやすみ」
俺は布団を用意して寝た。
「ここ、どこだ?あぁ。夢の中か」
夢と言っても質素すぎるほどだ。
光が少ししかない空間。だが、しっかりと道はわかる。
「なんかいる?」
俺は道の奥に人影を見つけた。
よく見るとそれは俺の姿だった!!
「よう、宿主さん♪元気だったか?」
「お前が俺の中にいる精霊か?」
俺は表情を変えずに聞き返す。
「その通り♪やっと通じたなぁ。早く気づいてくれよ!」
精霊は傲慢な態度で言ってくる。
「ここに来たついでだ。お前に俺を呼び出す呪文を教えてやるよ」
「そんなの聞きたくないね」
俺は耳をふさぐ。
しかし
耳をふさいでもその声は聞こえてきた。
「我に託されしは大いなる殺戮の使者。我の体を汝に捧げる。汝の力存分に発揮せよ。だ」
「なんで耳をふさいでも聞こえんだよ!」
「あほか?てめぇ。ここは俺とお前の精神が繋がった世界だぜ?聞こえないなんてあるわけないぜ?」
精霊は傲慢な態度を崩さず俺に話し掛けてくる。
「そういやおまえの名前はなんだよ?精霊」
「お前の言霊だぜ?俺は〈トリス〉だ
じゃあな。宿主♪」
そう言うと、精霊〈トリス〉は消えた。そして俺もその世界から消えた。
俺が起きたのは次の日の朝だった。
「くそ・・・。胸くそ悪ぃ!!」
俺は軽く不機嫌になりながら朝を迎えた。