第13話:危険!!
「なぁ?プエルは?」
俺は茶の間でくつろいでいるガイルに聞いた。
「いないのか?じゃあ、今日は1日いないじゃろ」
「なんでだよ?」
「さぁ・・・。わしにもわからん。
プエルはたまにいなくなるからのう」
俺は(今日はやけにジジイみたいだな・・・)と思った。
「なんかいないと困ることでもあったのか?」
「別に」
俺はそう言い、ほりコタツに入り座った。
「もしやお主・・・」
「?・・・なんだよ?」
「プエルに惚れたか?」
ガイルのあまりの発言に俺は飲んでいたお茶をガイルに吐いた!!
「ゴホッ!!ゲホッ!!・・ありえねぇだろ!?エホッ・・・」
「そうじゃの・・・。言うだけ損じゃ・・・」
ガイルはそう言うとタオルで顔を拭いていた。
「そういや、俺今日仕事入れる予定だったんだ。
クロームハウスに行ってくる」
俺はそうガイルに言い残しクロームハウスへ向かった。
「ようよう!!金貸してくんねぇかなぁ?」
「俺たち今日金なくて困ってんだ」
俺はハウスへ向かう途中に不良にからまれた。こういうことは日本でもよくあったからなぜか懐かしい感じになった。
(そういや聖どうしてんだろ?)
不良A「聞いてんのかよ!?兄ちゃん!!」
「いやまったく」
不良B「面倒だ!やっちまおうゼ!!?」
不良C「やった後に金盗ればいいんだからよ?」
なんか俺が弱いみたいに話す不良たち。・・・ちょっとむかついてきましたよ?
不良A「そうだな?ヒャッハア!!!」
(倒すだけなら合剣はいらないだろ?)
なぜか合剣を出すことまで考えてしまっていたが今は目の前の不良を倒すことに専念した。
不良Aは腹をナイフで刺そうとするが、俺は軽く避けて腹に膝蹴りを当てる。
それを見て他二名は二人同時に襲ってきた。
俺はそれを容易く避け不良Bの首にカカト落とし、体勢を立て直し不良Cの恥部を蹴り上げた。
「弱いな・・・。これで恐喝するなんてな。
まぁいいや。疲れたから家に帰ろう・・・。無駄足だったな」
俺は不機嫌なまま家に帰った。
「ただいま・・・」
俺は家に着いても苛立ちは消せずに玄関の戸を開けた。
「おかえり。もう夕方じゃぞ?そんなに依頼は大変じゃったのか?」
「不良に襲われてボコボコにして帰ってきた・・・」
正確には1撃ずつしかいれてないのだが、そこは黙っておこう。
「それでハウスに行かなかったのか?バカじゃのう・・・」
もはや怒る気にもなれない。
「腹減った・・・。メシは?」
「今作っている。もう少し待て」
この家の食事当番は1日ごとに交換することにしたらしい。
「はいよ・・・。ん?プエル帰ってきたんじゃないのか?」
「まだ帰ってきてはおら・・・。気配がするのう」
俺はいつのまにか人の気配を読むことが出来ていた。危険な依頼をやらされて得た力だろう・・・
(ただいまぁ・・・)
玄関からプエルの声が聞こえた。帰ってきたらしい。
「お帰りプエ・・・ル。」
俺は玄関に行きプエルを迎えようとした。しかし、温かく迎えることはできそうにない・・・
血を流し玄関にもたれかかるように倒れていくプエルを見て俺は
「ガイル!!医者だ!!!医者呼べ!!」
とガイルに叫んだ。
「なんじゃ?騒がしい。どうかしたのか?・・・プエル」
「いいから早く!!このままだと死ぬぞ!!?」
俺がそう言うとガイルは急いで家を飛び出し医者を呼びに行った・・・
ガイルが出て行って3分後ぐらいにプエルはうわ言のように呟きだした。
「お父さん・・・。お父さん・・・」
(お父さん?)
俺はその意味がわからなかった。
「プエル?」
「お父さん・・・。あたしは人間のままでいたい。・・には・た・・・ない」
「!!!」
俺は今の言葉を聞いて自分の耳を疑った。俺の耳がおかしくなってしまったのではないかと。
(人間のままでいたい!?どういうことだ?プエルは人間じゃないのか!?)
様々なことが頭に浮かぶ。
そんな時にガイルが医者を連れて帰ってきた。
「連れてきたぞ!!プエルは!?」
「ここに寝かせてある」
「そうか・・・。ゼシルド!!早く見てくれ!!」
ガイルがゼシルドと言った男は22・3歳くらいで整った顔立ちをしている。
「ああ。わかっている!」
ゼシルドは聴診器を耳にかけ心臓の音を聞こうとプエルの上着を脱がせる。
「っ!!!俺茶の間にいるよ・・・」
俺は居たたまれなくなり部屋を後にした。
数十分すると、ガイルとゼシルドが茶の間に来た。
「どうだった?」
「精神的疲労が凄い・・・。肉体的疲労がないとはいえ血を流しすぎている。
危険な状態だよ」
「俺、なんかすることあるか?」
「残念ながらこれは本人の体力や精神力の問題だ。他人が助けられるものではない。
それに素人が無理になんとかして容態が悪化したら大変だ・・・」
ゼシルドは冷静に言う。
「とりあえず、明日またくるよ。容態が悪化したらすぐ呼んで」
ゼシルドはそう言い帰った。
「なんでプエルがあんなケガしてんだよ・・・?」
「まだいいほうじゃ・・・。お主がくる3ヶ月前なんて、間違いなく死んだと思ったよ。
あれは」
「【あれ】?」
「そう」
なぜかガイルは話さなかった。話したくなかったのだろう。俺も無理に聞こうとは思わなかった。
「・・・プエルはのわしを拾ってくれたんじゃ」
「拾った?お前捨て子だったのか?」
「そうじゃ。そのときのプエルは殺気の塊のような女じゃったがな・・・」
俺はプエルを恐ろしく思った・・・
「とりあえずは、プエルが目を覚ますのを待つだけじゃな・・・
メシでも喰おう。腹が減って餓死したら意味ないからの」
「あぁ。そうだな・・・」
俺とガイルは二人で冷たくなった夕食を食べた。