裏の顔
人影が此方に近づいてきた。
一瞬、テレビの光に照らされて、その姿が明らかになる。
──友人だった。
友人は女性のそばまで来ると、その肩に手を置いた。
「久しぶりね、琴美。」
友人の声は、先程の怯えた様子とは違い、何だか別人のようだった。
「久しぶりね、琴美。そんな顔していたから気付かなかった。」
──女性の動きが止まった。
友人は、女性の肩から手を放すと、腕組みをした。
「取りあえず、その体重3桁から離れなよ琴美。似ているけどソイツ、琴美の彼氏じゃないしさ。」
女性は、ゆっくりと体を動かして押し入れから後ろ向きに出ていくと、友人の前に立った。
「そうそう。琴美は昔から素直で、私の言うことなら何でも聞いてくれてたよね。」
女性は、何か言いたそうだったが、そのまま黙っていた。
友人は、その女性の様子に少し苛ついたようだった。
「…ところで、琴美の彼氏は元気してる?」
「……。」
「あ、暫く会ってないから分からないか。ハハ」
「……。」
「私の彼氏になってたんだけど、最近会えなくてさ。」
「……。」
「私と付き合う前、アイツ言ってたよ。琴美と別れたいって。
《人形みたいだ。》
だって。でも、貢いでくれるから関係を続けていたらしいけど…」
「……。」
「…おかげで私も、お金に不自由しないから¨知らんぷり¨していたけどね。」
「……。」
「…ああ、彼氏が泥酔した時に言っていたけど、しつこく結婚迫られてキレてきたとか…」
「……。」
「…つい、首を絞めてたら動かなくなったとか…」
「……。」
「…死体を池に捨ててきたとか…。でも、琴美がココにいるから、別の女性の事だろうけどさ。」
「カレハドコ?」
「知らないよ、私が聞きたいくらい。」
「カレハドコ?」
「だから、知らないってば。そこの体重3桁でも彼氏にすれば?」
──突然、女性が両手で友人の首を絞め始めた。
「カレハドコ?」
「し…知らない…」
「カレハドコ?」
──2分ほど前
2人のやり取りを見ていた体重3桁は、事の成り行きを静観するしかなかった。
……?
尻の下に何かが有ることに気付き、それを手に取った。
──友人の携帯電話だった
その携帯電話を友人に渡そうとしたが、2人の会話の間に割って入れずに、手の中でソレを持て余した。
……う?
──手の中で、携帯電話の着信音が鳴った。
着信音が、¨短い間隔で途切れ、暫くして再び鳴る¨という事が、何回も繰り返された。
それは以前に決めた、この部屋に携帯電話を忘れた友人の、体重3桁に¨電話に出ろ¨という合図だった。




