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女性  作者: VISIA
12/13

誰が為に

「ヒヒ、ヒヒヒヒ…」

「……。」



「私、オカシクなったのかな?…ヒヒ。この部屋から私が出て行く所を見たんだよ、信じられる?」

「…あ、それ僕も見…」



「ヒヒ、ヒヒヒヒ、どう思う?…私、変かな。」

「い、いや変じゃな…」



「私、疲れているのかな……ヒヒヒヒ。」

「……。」

 友人は、体重3桁を無視して話を続けた。


……?


 友人の声が、段々小さくなっていく。

 その事に友人は気付いていないのか、そのまま口を動かし続けていた。


──やがて、友人の声は聞こえなくなった。


……?


 体重3桁は、耳が遠くなったのかと思い、辺りを見回して友人の携帯電話を拾うと、耳元で着信音を鳴らしてみた。


──着信音は、葬送行進曲だった。


 先程とは違う着信音に眉をしかめていると、体重3桁の手を友人の華奢で冷たい手が掴み、無理やり携帯電話を引き抜かれた。

 そして、友人は着信音を止めると、ソレを後ろに置いた。



──友人は、再び聞こえない話を始める


……?


 友人の後ろに誰かが座っているのに気付いた。

 どこかで見覚えがあった。



…あ…友人の爺ちゃん?



 彼は、次の瞬間には体重3桁の右側で、友人の方を向いて立っていた。


──友人は、彼が見えていないのか、特に変わった様子は見せなかった。



…あれ?…見えてない?



「私は、そのジジイではないよ。」

「えっ?」



 彼は、友人を見たまま話した。



「死神だ。今は、キミにしか私は見えていない。」

「でも昨日、自転車を止める為に友人が呼んだら…」



「面白いと思ってな、あの止め方はワザとだよ。」

「……その時に友人を助けたのは…?」


「私は、助けてはいないよ。…知らぬ話だ。」

「……。」



「良いことを教えよう。目の前の座っている彼女は、もうすぐ死ぬよ。」

「えっ?」



「そこの倒れている女性に殺されるだろう。元々死ぬのは、キミだったのだけれどね。」

「なぜ、友人なんですか?」



「そこの女性に何かしたかい?…もうキミを殺すことは出来ないさ。」

「……。」



「だから、キミの友人が犠牲になる。嫉妬の対象として、復讐出来なかった腹いせとして。……まあ、私にはキミであれ誰であれ、魂が手に入ればいいことだが。」

「……。」



「…ところで、キミは友人を助けたいかい?」

「……?」



「キミが身代わりとなるのだ。そうすれば、友人は助かる。」

「…えっ?」



「…時間をあげよう。女性が起き上がってくるまで考えるといい。私は此処で待ってるよ、ヒヒ。」

「……。」



──友人は、消音状態のテレビのニュースアナウンサーのように、口を動かし続けていた。

 体重3桁は、静かな部屋の中で108の煩悩と戦っていた。


……どうすれば…


 命の重さが、体重以上に重い事を改めて感じていた。


……ああ、煩悩が増えていく…

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