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女性  作者: VISIA
10/13

男として

 体重3桁は、ためらいながらも電話に出た。


「もしもし…?」



──電話の主は、無言だった


《………。》

「もしもし…」


 電話の向こうに誰かがいる雰囲気を感じ、相手が話してくるのを暫く待っていると、


《ザザ……ザザ…》


というノイズが聞こえてきた。


……。


《ザ…ザザ…ザ…ザ》


……?


《ザ…ル…ザザ…イ》



 聞こえてくるノイズが段々と人の声へ、


《ザ…ル…シ……イ》


──そして、友人の叫び声へと


《ク…ル…シ……イ》


 携帯電話のスピーカを音割れさせて、体重3桁の鼓膜を震わせた。

 その声を聞き体重3桁は、携帯電話を放り出してしまった。


──目の前で、女性に首を絞められている友人を見る



……今の電話の声は…でも…


──どちらが本物なのか



……あるいは…




──両方が本物かもしれない




……ドッペル…




 突然、先ほど放り出した携帯電話が唸りだす。 やがて、その唸りがギー・ガーという何かに引っかかるようなギクシャクした音に変わり、



──そして、友人のしゃがれた声になった。



《…は…やく…助け…ろ…デヴ…》


……!


 電話の声に背中をゾクッとさせながら、体重3桁は押し入れを飛び出した。


 その勢いのまま女性へ突っ込んで友人を助けようとしたが、日頃の運動不足は肝心な時に悪影響を及ぼす。


 体重3桁は、2・3歩進んで脚がもつれ、標的がズレたまま軌道修正ができず、そのまま華奢な友人へ突っ込んだ。


 友人は、その衝撃で女性の手から逃れる事はできたが、体重3桁にまともにぶつけられた弾みで床を転がっていく。


 体重3桁は、友人にぶつかった後も自らの勢いを止められず、女性を巻き込んで一緒に床を転がり、壁にぶつかってようやく止まった。


 その時、女性は体重3桁の体の下で、仰向けの状態で動かなかった。

 頭をぶつけたのか気を失っているようだった。


……。


 ブラウスのボタンが取れて、胸元が少し露わになっていた。


 女性に馬乗りしていることに気づいた体重3桁は、厚い脂肪の内側からの¨ドキドキ¨という激しい鼓動を抑えられなかった。


……う。


 気持ちを抑えきれず、体重3桁の顔が女性に近づく。

 そして、その張りのあるピンク色の唇に、深海魚のような、血色の悪い紫色の唇が重なった。


……ああああ



──暫くして


 女性から唇を離すと、わずかに開いた口から白い歯が見えた。

 その歯と歯の間に、黒く細長い物が挟まっていた。


……鼻毛?……いや…



──先程、女性の口や鼻から黒い物が出てきたのを思い出した


……ぐぇ



 キスをした事を後悔し女性から慌てて離れようとした時、女性の胸元に何かが見えた。


……?


 体重3桁は、恐る恐る顔を近づけて見ると、それは胸毛だった。


……。


 まさかと思い、ためらいながらも右手をスカートの中へ入れていく。

 そして、最深部でアレがついているか探ってみた。



──あった。



 体重3桁はショックのあまり、部屋の隅に移動して寂しく座った。

 そして、動かない女性(仮)をジッと見て、これからどうすればいいのか考えていた。


………。


 だが、暫くすると考え疲れて寝てしまった。

 頬を伝う涙が乾く事はなかった。

──暫くして、


 体を揺らされて、体重3桁が目を覚ました時、目の前に友人がいた。


……。


 あの女性(仮)は倒れてままだった。

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