表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女性  作者: VISIA
1/13

まさかね…

 男は、見慣れたボロアパートの自室に帰ってきた。


 以前、ここの住人が行方不明になっている、という話は聞いていたが、それで少しでも家賃が下がれば悪くない話だと思っていた。


──そして、13日目


 帰ってきた男が、部屋の奥へ進んだ時…

 男の目の前に、女性が仰向けに倒れていた。


 着衣に乱れた様子はなく、何かに驚いたその表情は痛々しく固まっていた。


 男は、恐る恐る女性のみぞおち辺りに耳をつけ心臓の鼓動を確認し、ひとまず安心して大きく息を吐いた。


…生きているみたいだな


 それにしても、この女性は誰なんだろうか。


──見かけは20代後半ぐらい。薄い水色のブラウスに、茶色のスカートという姿である。


 このような顔をしていなければ、一般的に¨美人¨と言われているだろう。



…女性だけに、ポケットを探るわけにもいかないしな


 押し入れから毛布を出してきて、顔が隠れるように全身に掛けた。

 凹凸の無いその体がミイラのようにも思えた。


…さて、どうしようか



 死んでいる訳でもないし、このまま腐敗する事はないだろうが、だからと言って床にずっと寝かせたままでは気持ちが悪い。


 顔の所の毛布を捲り、女性の顔を覗き込んだ。

 目の前で手を、振ったり叩いたりしてみても反応はなかった。


…完全に気絶しているか体を動かせないか…


 脳裏に、白馬に跨った顔の白い王子と女性タレントのコントが浮かぶ。


……。


 事態が収拾がつかなくなる前に、友人女性に相談する事にした。

 携帯電話でヘルプコールをすると、


《わかった、すぐ行くね》


と、言ってくれた。


──それから30分後、友人が訪ねてきた。


「電話のこと、本当なの?」

「ああ。」


「それで、その女性は?」

「……そこ。」



 友人は、横たわっている女性に近づくと、そっと毛布を取り除いた。

 そして、スカートのポケットに手を入れていった。


「特に何も無いみたい。」

「そう?」


「うん。でも、どうしたんだろうな…」

「ぼ、僕は何も…」


「ふふ、分かってるよ。でも、何て言うか体が動かせないだけで、私達の話は聞こえてるんじゃないかな?」

「……会話する方法がある、という事?」



「……うん。でも、目で会話は出来ないよ。」

「動いているのが分かる所…心臓?」


「心拍数で会話できるのかな?」

「時間は掛かるけど、早い遅いでYES・NOぐらいは分かるんじゃ…」


「……んー」

「試してみようか。」


 友人が、女性の体に耳をあて心音を聴く。


「いいよ。」

「じゃあ…」


 女性の耳元で簡単な質問をしてみる。


「今からする質問が正しいなら、心拍数を上げてください。…僕の声が聞こえていますか?」



「……うん、少し早くなった。聞こえてるみたい」

「じゃあ、次はNOの質問だね。」


 女性の心拍数が落ち着くのを待った。

「うん、落ち着いたみたい。」

「じゃあ、……あなたは男性ですか?」


──5分が過ぎて


「特に、変化はない……かな。」

「……よかった。」



「ニューハーフかもよ?」

「えっ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ