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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

マジマジのマジ

掲載日:2026/10/23

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 ふう、体育のダンスの授業もこれで終わりだね。

 踊ってみて分かるけど、まじめにやるなら身体鍛えておいたほうがいいね、こりゃ。

 練習しててもポーズとか整えるのが難しいのなんの。身体のあちこちも筋肉痛だ。


 ――そんな、一生懸命やらなくてもいいのに?


 はは、ご冗談を。つぶらやくんもだいぶ力を入れていたじゃないか。

 それに全力は出せるときに出しといたほうがいいでしょ? あんまり控えていると全力の出し方が分からなくなるし、そもそもどれほどが全力かも判断つかなくなるんじゃない?

 本気出すのがかっちょ悪い、という意見もあるけれど、僕にいわせれば優雅とかエレガントとかに憧れすぎなんじゃないかな。

 これらの人も持ち前の才能の有無こそあれ、影で努力をしている。表に出さないから知る人が少ないだけ。その努力の中で全力を出す機会は、むしろたくさんあっただろうね。そうして力の天井を押し上げてきた。

 余裕でふるまえるゆとりを作り続けてきたから、かっこよくできる。ちゃんと影で積み重ねておけよ、ということじゃないかなあ。

 そのぶん、影の練習を見るてのは珍しく、ときには危うささえはらむかもしれないよ? 仮に出くわしたとしても、見て見ぬふりをしたほうがいいかもね。

 以前におばさんから聞いた話なんだけど、ちょっと耳に入れてみない?


 おばさんが小学生だったときのこと。

 おばさんの家は学校から近く、ほんの1,2分ほどで校舎の敷地内へ入ることができたとか。

 こうも近いと出発の時間をぎりぎりまで伸ばし、だらだら過ごしたい気持ちも湧くかもしれない。けれども、おばさんはゆとりをもって早めに起き出し、教室にも一番を争う速さで着いていたのだとか。

 あのときは、それが幸いしたかもしれない。

 普段より一番乗りを競っている、もう一人の女の子。その子の醜態を他の子へ知らさずに済んだのだから。


 彼女は踊っていた。

 それだけなら、映画とかコマーシャルとかで見られるダンスの真似っこで済むかもしれないけれど、問題はその格好だ。

 彼女はほとんど、真っ裸だったというんだ。

 近くの机に、着ていた服らしきものが脱ぎ散らかされている。どうやら登校時はきっちり着替えていたらしい。今日はさほど暑くもないのに、どうしてあのようなあられもないかっこうを……。


「やめんか!」


 後頭部に、ずびしとチョップを浴びせるおばさん。

 とたん、彼女は動きをぴたりと止めるや、悲鳴をあげた。自分が裸なことに今はじめて気づいたといわんばかりの仕草だった。


 服を着直した彼女によると、どうも教室に着いてからおばさんに止められるまでの間は、どうも記憶があいまいらしかった。

 どのように踊っていたのか、おばさんが見よう見まねで一部を踊ってみると、彼女はちょっと驚いた顔をしてみせる。

 聞くと、学校に来る前に渡ってきた橋の一本。その下で、そのような踊りを踊っていた女の人を見かけたのだとか。


「ダンサー、なのかな? ちらっと橋の下が見えたと思ったら、大人の女の人が踊っていたの。水着みたいな薄い布しか着ていなくって、今みたいなヘンテコな踊り方をしてた。くrくる身体を回しながら、橋の下へ隠れて行っちゃったけれど」


 どうやら、ただのデマという線も薄そうだった。

 その後、学校に来た一部の面々が同じように踊り出してしまい、ちょっとした騒ぎになってしまったから。


 おばさんは放課後になると、さっそくその橋へ向かったそうだ。

 無策な単独行ではない。例の話を聞いた子を同行させるとともに、離れた場所で別の友達に待機してもらっていた。時間が経って、自分たちが戻らなかったときの備えだ。

 朝の様子を見るに、もしああなってしまった場合は自力での復帰は難しいとみた。外部から確実に刺激を与えてくれる味方の存在が要る。

 おばさんは各指示を終えると、例の子の案内で橋へと向かう。

 例のダンサーらしき人とやらは見られなかったものの、例の子の話した橋の下部分、上からは満足に見えない影に、細い棹らしきものが横へ渡されているのは確認できたとか。

 寝泊りまでしているか分からないが、誰かが利用しているような気配はする。そして棹には何やら上下のビキニらしいものが……。

 あれか? とおばさんがより近くで観察しようと距離を詰めるも、不意にそれらが動いた。風もないのに。

 そして見る。ビキニの黒い生地に無数の細かい切れ目が入ったかと思うと、そこから無数の眼が開いたのを。それをまじまじと捉えてしまったんだ。


 例の待機していた友達に叩かれて、おばさんは例の子と一緒に、すっぽんぽんで踊っていたことを知った。

 なるほど、確かに記憶が飛んでしまっている。例の子や他の生徒たちは効果が出るまでに時間があったけれど、あれほどに生地を間近で見なかったからだろうか、とおばさんは思う。

 我に返った時には、あのビキニたちの姿は棹にはかかっていなかった。いや、本当にビキニであったかどうか。

 けれども、あれもまた本気を発揮するための用意のひとつなのかもしれない、と話していたよ。

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