Position
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―一緒に歩いてくれるひとを探しています―
SNSで書込んだ。
◇◇◇◇
3ヵ月目。1人参加してくれた。
ミカと言った。僕よりも3つ年下だった。
僕らはつきあい始めた。2人の邪魔をするひとはいなかった。
そして、僕たちは歩き始めた。
◇◇◇◇
3人目が参加した。ヨーコと言って独身で37のさっぱりとした女性だった。
そして、僕らは3人で歩いた。
「2人とも、どうして歩くようになったの?マラソンよりもっと地味じゃない」
「僕はマラソンしてたんですけど、膝を痛めて、こっちになりました」
「私は、ダイエット。走りたかったけど運動音痴で、これならと思って(笑)」
「わたしは、出会いよ。出会い!いけないかしら?こういうところではダメ?」
3人で笑った。
「ところで、2人はつきあっているんでしょう?」
ストレートにヨーコが聞いた。
「まぁ」
隠すことでもなかったので。正直に答えた。
「やぱっりね(笑)すぐにわかった。いいわねぇ、わたしにも誰か入って来ないかしら」
そして、3人で歩いた。
◇◇◇◇
しばらくして、4人目が参加した。
「ハジメです!」
威勢のいいいい男だった。30独身で僕より5つ上だった。健康診断の結果が悪かったので、なにか軽い運動をしたいとのことだった。
そして、4人で歩くようになった。
◇◇◇◇
RPGのような気分になった。仲間が増えると、もっと楽しくなった。
◇◇◇◇
5人目が現れた。
「運動不足なので参加させていただきました。邪魔にならないように頑張ります」
51の会社経営の男性で独身だった。ユートと言った。さすがに高価なもので身を固めていた。
そして、5人で歩くようになった。
◇◇◇◇
ここまで順調にメンバーが集まるとは思っていなかった。このくらいの人数がちょうどよいと思った。これがいつまでも続くものだと思っていた。
◇◇◇◇
ヨーコからメッセージが届いた。
「ヒロシくん、今晩お暇?食事でもどう?お姉さんがおごるからね」
その日は、ミカとの約束はなくて、断る理由もなかったので気楽にOKした。
インド料理店に入った。
「ごめんね、突然。なんか暇だなぁって、そしたらヒロシくんの顔が浮かんできたの。あ、ミカちゃんに悪いかしら・・・べつにいいよね。そんなんじゃないし」
「そうだね」
本当にいつも楽しそうに笑っている人だった。
◇◇◇◇
それから、ときどきヨーコからお誘いがあった。
次第に彼女の底抜けの明るさに引き込まれていった。
でも、このままではいけないと思うようになった。さすがにこれではまずい。自分はミカとつきあっていて、そういう資格はないけれども、ウォーキングサークルだ。出会い系じゃない。風紀が乱れる。
「あの、ヨーコさん。もう2人であうのはやめよ。いちおうウォーキングサークルだからさ。こういうのは僕の立場がないから・・・」
「そうよね。そうだよね。言っていることは正しい」
「ヒロシくんは正しい」
「酔ってる?」
2軒目のウィスキーバーだった。
「んーーーー少し、ね」
彼女は顔を赤らめて、そしていつもどおりに笑っていた。
その瞬間、その赤い顔と笑顔をしている彼女を純粋に可愛らしいと思った。年は12違うけれども、そんなことどうでもよかった。
彼女に恋してしまった。
◇◇◇◇
「ねぇ。ヒロシ。このごろ上の空ね。なに考えてるの?」
ミカの部屋で、僕はヨーコのことを考えてしまっていた。
「そんなことないだろ」
「さっきわたしが言ったことを言ってみてよ」
「・・・・・」
「このごろおかしい」
なにも言えなかった。
「じゃあ、私が言ってあげる・・・ヨーコさんとつきあっているんでしょう?ハジメさんから聞いた。街で見かけたって」
「ごめん・・・」
「12も離れた人ってどうなのよ。信じられない。いつまでも甘えていればいいのよ」
何も返せなかった。
◇◇◇◇
「ヒロシ、やけにしぼんだ顔してるな」
「ハジメくん、ハジメくんが見たんだよね。僕とヨーコさんのこと」
「あぁ、そうだ。なにか問題でも?」
「いや。ない・・・」
「ミカちゃんとうまくいってないんだろ」
「なんで知ってる」
「本人から聞いた」
「どうして?」
「相談に乗ってる」
「そう」
◇◇◇◇
「それで。ヒロシくんはどうするの?どうしたいの?」
「わかんない。ヨーコさんは大好きだ・・・・・」
「でもミカちゃんにも未練がある」
「ごめん・・・どうしようもない奴だ。こんなことヨーコさんに言うなんて」
「しょうがないわね。こっちにいらっしゃい。抱きしめてあげる」
◇◇◇◇
「ミカ。聞いてほしい」
「私はもう話すことはないけど」
何度も飲んできた彼女のコーヒーが、やけにやるせなかった。
僕にも話すことは何もなかった。なのに、こうしてミカのところに来た。
◇◇◇◇
「ヨーコさんはなんで、そんなにさっぱりしてんの?引きずることはないの?」
「わたしは、自分のためになるかどうかを考えて生きてる。基準はそこ。それだけよ。打算的よ」
「僕にはできない」
「べつにそんなこと、だれもヒロシくんには期待していないわよ(笑)」
・・・・・
「いいのよ。それで。ヒロシくんはそれでいいの。少なくともわたしにはそれでいいから」
彼女は僕を呼び寄せて、長くて深いくちづけをくれた。
◇◇◇◇
「ミカ、もう一度話をしたいんだ」
僕はなんでここにいるのだろう。ここにいる意味がわからなかった。どうして?いまさら・・・・・と。
ドアが開いて、そこに居たのはハジメくんだった。
◇◇◇◇
そのまま僕は当然のように、ヨーコの元に足を向けた。
「ヒロシくん、どうした?」
「・・・・・」
ユータさんだった。奥から彼の名を呼ぶ彼女の声がした。
◇◇◇◇
僕は誰かを選ぶ側ではなくて、誰かに選ばれる側だったと知った。
僕は選ばれなかった。
空虚さだけが残った。
了




