↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

Position

作者: おりん
掲載日:2026/09/27

Position



―一緒に歩いてくれるひとを探しています―


SNSで書込んだ。


◇◇◇◇


3ヵ月目。1人参加してくれた。


ミカと言った。僕よりも3つ年下だった。


僕らはつきあい始めた。2人の邪魔をするひとはいなかった。


そして、僕たちは歩き始めた。


◇◇◇◇


3人目が参加した。ヨーコと言って独身で37のさっぱりとした女性だった。


そして、僕らは3人で歩いた。


「2人とも、どうして歩くようになったの?マラソンよりもっと地味じゃない」


「僕はマラソンしてたんですけど、膝を痛めて、こっちになりました」


「私は、ダイエット。走りたかったけど運動音痴で、これならと思って(笑)」


「わたしは、出会いよ。出会い!いけないかしら?こういうところではダメ?」


3人で笑った。


「ところで、2人はつきあっているんでしょう?」


ストレートにヨーコが聞いた。


「まぁ」


隠すことでもなかったので。正直に答えた。


「やぱっりね(笑)すぐにわかった。いいわねぇ、わたしにも誰か入って来ないかしら」


そして、3人で歩いた。


◇◇◇◇


しばらくして、4人目が参加した。


「ハジメです!」


威勢のいいいい男だった。30独身で僕より5つ上だった。健康診断の結果が悪かったので、なにか軽い運動をしたいとのことだった。


そして、4人で歩くようになった。


◇◇◇◇


RPGのような気分になった。仲間が増えると、もっと楽しくなった。


◇◇◇◇


5人目が現れた。


「運動不足なので参加させていただきました。邪魔にならないように頑張ります」


51の会社経営の男性で独身だった。ユートと言った。さすがに高価なもので身を固めていた。


そして、5人で歩くようになった。


◇◇◇◇


ここまで順調にメンバーが集まるとは思っていなかった。このくらいの人数がちょうどよいと思った。これがいつまでも続くものだと思っていた。


◇◇◇◇


ヨーコからメッセージが届いた。


「ヒロシくん、今晩お暇?食事でもどう?お姉さんがおごるからね」


その日は、ミカとの約束はなくて、断る理由もなかったので気楽にOKした。


インド料理店に入った。


「ごめんね、突然。なんか暇だなぁって、そしたらヒロシくんの顔が浮かんできたの。あ、ミカちゃんに悪いかしら・・・べつにいいよね。そんなんじゃないし」


「そうだね」


本当にいつも楽しそうに笑っている人だった。


◇◇◇◇


それから、ときどきヨーコからお誘いがあった。


次第に彼女の底抜けの明るさに引き込まれていった。


でも、このままではいけないと思うようになった。さすがにこれではまずい。自分はミカとつきあっていて、そういう資格はないけれども、ウォーキングサークルだ。出会い系じゃない。風紀が乱れる。


「あの、ヨーコさん。もう2人であうのはやめよ。いちおうウォーキングサークルだからさ。こういうのは僕の立場がないから・・・」


「そうよね。そうだよね。言っていることは正しい」


「ヒロシくんは正しい」


「酔ってる?」


2軒目のウィスキーバーだった。


「んーーーー少し、ね」


彼女は顔を赤らめて、そしていつもどおりに笑っていた。


その瞬間、その赤い顔と笑顔をしている彼女を純粋に可愛らしいと思った。年は12違うけれども、そんなことどうでもよかった。


彼女に恋してしまった。


◇◇◇◇


「ねぇ。ヒロシ。このごろ上の空ね。なに考えてるの?」


ミカの部屋で、僕はヨーコのことを考えてしまっていた。


「そんなことないだろ」


「さっきわたしが言ったことを言ってみてよ」


「・・・・・」


「このごろおかしい」


なにも言えなかった。


「じゃあ、私が言ってあげる・・・ヨーコさんとつきあっているんでしょう?ハジメさんから聞いた。街で見かけたって」


「ごめん・・・」


「12も離れた人ってどうなのよ。信じられない。いつまでも甘えていればいいのよ」


何も返せなかった。


◇◇◇◇


「ヒロシ、やけにしぼんだ顔してるな」


「ハジメくん、ハジメくんが見たんだよね。僕とヨーコさんのこと」


「あぁ、そうだ。なにか問題でも?」


「いや。ない・・・」


「ミカちゃんとうまくいってないんだろ」


「なんで知ってる」


「本人から聞いた」


「どうして?」


「相談に乗ってる」


「そう」


◇◇◇◇


「それで。ヒロシくんはどうするの?どうしたいの?」


「わかんない。ヨーコさんは大好きだ・・・・・」


「でもミカちゃんにも未練がある」


「ごめん・・・どうしようもない奴だ。こんなことヨーコさんに言うなんて」


「しょうがないわね。こっちにいらっしゃい。抱きしめてあげる」


◇◇◇◇


「ミカ。聞いてほしい」


「私はもう話すことはないけど」


何度も飲んできた彼女のコーヒーが、やけにやるせなかった。


僕にも話すことは何もなかった。なのに、こうしてミカのところに来た。


◇◇◇◇


「ヨーコさんはなんで、そんなにさっぱりしてんの?引きずることはないの?」


「わたしは、自分のためになるかどうかを考えて生きてる。基準はそこ。それだけよ。打算的よ」


「僕にはできない」


「べつにそんなこと、だれもヒロシくんには期待していないわよ(笑)」


・・・・・


「いいのよ。それで。ヒロシくんはそれでいいの。少なくともわたしにはそれでいいから」


彼女は僕を呼び寄せて、長くて深いくちづけをくれた。


◇◇◇◇


「ミカ、もう一度話をしたいんだ」


僕はなんでここにいるのだろう。ここにいる意味がわからなかった。どうして?いまさら・・・・・と。


ドアが開いて、そこに居たのはハジメくんだった。


◇◇◇◇


そのまま僕は当然のように、ヨーコの元に足を向けた。


「ヒロシくん、どうした?」


「・・・・・」


ユータさんだった。奥から彼の名を呼ぶ彼女の声がした。


◇◇◇◇


僕は誰かを選ぶ側ではなくて、誰かに選ばれる側だったと知った。


僕は選ばれなかった。


空虚さだけが残った。




了




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。