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女神皇主の受難〜十年探した初恋の王子に死ぬほど溺愛されています〜  作者: 如月ニヒト


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神の領域

 皇宮を飛び立ってから、ほんの数分で海が見えた。

 アンサリム皇国とソーマ王国のあいだには海峡があり、北西と南には広い海が広がっている。

 ソーマ王国は峻険な火山と荒れ狂う海に囲まれ、海峡の航路以外は人を寄せ付けない。

 陸の孤島、ドラゴンの楽園だ。


「懐かしい」

「レティシア、ソーマに来たことあるのか?」

「いえ、山脈の向こうの、赤土色のお城の国に」

「隣のゼーテン公国か」

「ええ。小さいころに大きなドラゴンに乗せてもらって。とっても楽しかった」


 楽しくて、切ない、思い出の場所……

 

「ってことは、うちが送り迎えしたのか……」


 またギリギリと歯噛みしている。

 

「ふふっ、その時に会いたかったですか?」

「あ、あー。そうだな。会いたかった」


 レギアスまで切なげに抱きしめてくる。

 普通にパーティ会場にいたらレギアスとも会えたのかな。

 ……十年前の私なら術を交えた大喧嘩になっていたに違いない。それはそれで、楽しそう?

 

 レイアの代わりに会っていたら、私は素直にレギアスを好きになれたのだろうか。

 

 話しているあいだにすっかり海の上だ。

 左側には、ソーマの山と城を背景に個性的な建物が立ち並んでいる。土の見える場所が多くて、あまり豊かな自然はないみたい。


「どこへ向かうのです」

「ほらあそこ、俺が住んでた火山島」


 広い海にポツンと大きな島がある。

 中心の火山の上には巨大な黒い岩があって異様な雰囲気。小さな森と湖はあるけれど、ほとんどが薄茶色の荒野だ。人が住んでいるようにはとても見えない。


「お城に住んでいたのではなかったのですか?」

「城には小さいころしか住んでない。だから親父も兄貴も別に家族だと思ってない」

「そんな……どうして」

「あー、この島なら、思う存分修行させられるからかな」

 

 島に降り立つと、思った以上に広大な荒野だった。

 これなら確かに、レギアスが魔力を出して暴れても問題なさそう。


「主様を乗せて飛ぶのは私の仕事ですのに!」


 シャリーアが駆け寄り抱きついてくる。


「ごめんなさいシャリーア」

「レティシア、ちょっとここで待っていてくれ」


 レギアスがシャリーアを睨みつけつつ、任せるしかないから諦め顔だ。


「お師匠様に紹介していただけないのですか?」

「レティシアの月のもの、あと十日も続くんだろ? 先にちょっと師匠と戦って気晴らししてくる」

「あ、なるほど」


 私が眠る前に担がれていたわねそういえば。

 アンネローゼはさすが暗部というか。レギアスを騙すなんて怖いもの知らずだ。


「じゃあ行ってくる」

 

 レギアスはヴァルグにも乗らず、あっという間に火山のほうへ跳んでいった。


「レギアスを教えられる人ってどんな人なのかしら。想像がつかないわ」

「あそこに見えてる」


 いつの間にか少年の姿で横に立っていたヴァルグが指を指す。火山の上にある巨大な黒い岩が動いたかと思うと、空中のレギアスに向け凄まじいブレスを放った。

 レギアスは氷の足場を作りさらに跳んで避ける。

 

「へ?」

「あれ、オレの父さん」

「ヴァルグのお父様ということは、竜王……」


 神代から生きるといわれる、神に連なる竜の王。

 気晴らしに単騎で戦う人間なんているんだ。


「あの、主様。ここで観戦するなら、結界を張っていただけます?」


 いつも自信満々なシャリーアが白い顔を青褪めさせてビクビクしている。

 見た感じ全長百メートルくらい? 大きさだけ鑑みても暴れたら相当な被害が出そうだ。


「確かにここは危険そうね。一番丈夫な結界を張るわ」


 レギアスは私には絶対に攻撃が当たらないよう配慮してくれるだろう。でもドラゴンのことまでは、おそらく考えないわね。


 理相(りそう)結界を使おうか。

 結界の中身を少しずれた世界にすることで攻撃をすり抜けさせる、ほぼ無敵の結界術。

 私以外の皇族が扱えたという資料は残っていない、神の領域の技だ。


 竜王ともなると異次元に干渉できるかしら。

 サラが離れているいま多重にすることもできないけれど……

 まあ、直接戦うわけでもないから大丈夫だろう。

 シャリーアとヴァルグもひとまとめに、理相結界の透明なキューブで囲う。


「主様、これ凄いですわ!」

「ありがとう」

「もしかして、こちらからは攻撃ができるんですの?」


 シャリーア、さすがの観察力だ。

 

「ええ。次元のズレを調整してこちらからは干渉できるようにしているわ。……この機能を無くしてシンプルにすれば、重ねてもっと頑丈にできるかも」


 考える間にシャリーアが手をかざし、レギアスに向け攻撃を放っていた。

 また音波系なのだろうか、白い光の渦が空中を貫く。

 竜王からの攻撃を回避した瞬間を狙ったらしい。レギアスは避けることが出来ず、魔力のシールドで相殺した。

 

 うわあ、凄い顔でこっちを見てる。

 と思ったら極細の光の線がレギアスの手から……認識した瞬間にはこちらを通り過ぎている。

 

 シャリーアの後ろを見ると、結界の外の地面が細く綺麗に抉られていた。

 私に当たらないようピンポイントで狙える技なのかしら……


 私って、信用されすぎてない?

 たとえ攻撃が当たらなくても、普通の女の子なら恐怖で心が折れると思うわよ?

 初めて会った日だって恐怖で震えていたのに。

 ……レギアスが気にするわけないか。

 否応なく精神力が強化されて、全くありがたいことこの上ない。


 そのあともシャリーアは竜王と戦うレギアスに攻撃を仕掛け続けた。レギアスも合間を見て反撃してくる。

 私とヴァルグはひたすら二人で身を縮ませていた。寿命も縮んだかもしれない。

 恐らく十分程度の戦いが、凄く長かった。


 何度目かシャリーアの攻撃を防いだ直後。

 レギアスは鬱憤を込めるように魔力を込めた蹴りを竜王に叩き込んだ。

 攻撃をかわし続けていた竜王は何重ものシールドを張り悠然と受け止めたが――全て突き破り、胴体に直撃した。

 竜王の巨大な体の中心が大きくへこみ、体全体に衝撃が拡がっていくのが見える。


 あ、あれ、かなりの重症じゃない??


「シャリーア、竜王のところに連れていって!」

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