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女神皇主の受難〜十年探した初恋の王子に死ぬほど溺愛されています〜  作者: 如月ニヒト


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目覚めの喧騒、夜明けの飛

「ん……」


 目が覚めると喧騒の中。

 まだリビングのカウチだ。レギアスに抱きしめられている。


 温かい。でも、お腹が変な感じ――

 あ、脇の隙間からドレスの中に手が入ってる!


「何してるの!?」


 声を上げて周囲を見渡すと、ソーマ王国の一行がまだ部屋にいる。

 時計を見るともう午後四時過ぎだ。


「レティシア。やっと目、覚めた? 具合どう?」


 私の髪の毛から顔を出したレギアスにじっと見つめられる。


「早く、服の中から、手を出して!」


 残念そうに服から手を取り出すレギアス。


「もしかして、わたくしが眠っているあいだ……皆さんの前でずっと?」

「まさか。あいつら酒飲んでこっちなんか見てないからさ、ちょっと我慢できなくてついさっきから……ちょっとだけ……」

「いやいや、俺バッチリ見てました! 女神様超色っぽいです!」


 部屋の空きスペースだった場所で席についている竜騎士のひとりが手を振っている。


「おい、殺すぞ!」

「殺したいのはこっちよ!!」

「あ、はい。ごめんなさい」


 口調だけ可愛げにまた後ろから抱きしめてくる。

 全然反省している感じがしない……

 もう、懲らしめないとダメだこの人は。

 仕方がない、奪理結界を使おう。

 紫の暗い光が床から伸び、レギアスを囲む。

 

「少しそこで反省していて」


 レギアスの腕を外してソファに転がした。

 食事とサラが近くにいる聖印の効果か、貧血は治ったかも。


「れ、レティシアッ!」


 レギアスは息も絶え絶えだ。いい気味。

 

 みな大テーブルに移り宴会になっていたようだが、静まり返ってしまった。

 いつの間にか加わっていたヴァルグとシャリーアだけ何ごともなかったように料理を口に運んでいる。


 大テーブルへ向かうと、一番手前の席ではサラがもの凄く疲れた顔をしていた。

 私が眠る前の剣呑な空気からよくここまで和やかに……


「あ、あのレティシア……陛下。あれはあなたの術なのですか?」


 マティアス殿下の問いに全員が私を見て固唾を飲んでいる。


「ええ、わたくしの結界術です」

「あの隊長が……」

「悪魔が動けなくなってる!」

「女神様、本物の女神様だ!」

「あの……術が破られたら困るので、悪魔を刺激するようなことは、あまり言わないでくださいね?」


 チヤホヤされるのは慣れているけれど、気恥しい。


「いやぁ驚きました! まさかレギアスを止められる人間がこの世にいるとは」

「ホントだよ! もう感動して泣きそう。レギアスを怒らせたら何するかわからないってビクビクする日々はもう終わったんだ」

「レティシア殿、ずっと見放さずに息子についていてくだされ。お願いします」

「父上、レギアスに戻って王になってほしかったのでは?」

「ワシはいつ殺されてもおかしくないんじゃ。いまさら戻られても正直怖い」

「ソーマの王が怖いなどと。騎士たちも見てますよ?」

「相手がレギアスならこ奴らもわかってくれる」


 なんだか、身につまされる感じ。

 竜騎士の皆さんもうなずいている。


「なんだこの親子漫才、ムカつく。レティシア、反省したからもう許してくれ」


 後ろからレギアスの苦しそうな声が聞こえる。

 ずっと呻かれるのも気分が悪いから許してあげるか。


「もう、ちゃんと礼儀正しくお父様とお兄様のお相手をしてくださいね?」


 ソファに戻り結界を解くと、レギアスの手を引いてまた大テーブルに向かった。


「そういえば、シャリーアを連れてくる代わりにレティシアの祝福が欲しいって話があった気がする」

「祝福? 月に一度地方を巡って祝福を施すのだけれど、それにソーマを追加しましょう。おじ様、それでいいかしら」

「ええ、充分です。月に一度レティシア殿に会えるとは、楽しみが増える」

「おい、息子の嫁が可愛すぎるからって馴れ馴れしくするなよ親父」

「レギアス様!」

「ご、ごめんなさい!」


 竜騎士の皆さんが顔を背けて笑いを堪えている。ちょっと気分がいい。

 おじ様も昼とは打って変わってにこにこ顔になった。

 マティアス殿下はなんだか幸せそうだ。

 この人たちが悪い人には、とても見えない……


「では、他にはなにかあるかしら? わたくしが寝ているあいだのことも教えてくださると嬉しいわ」

「ええ、ええ。これからの協力体制について色々話を詰めていきましょう。まあまず席に着いて、飲んでくだされ」


 そうして私たちは色々と楽しく話し合い、休憩を挟んで他の賓客も待つディナー会場でまた歓談した。

 ソーマ王はお父様ととても仲が良かったから、思い出話もたくさん聞かせてくれて嬉しくて。

 

 気分が良くなって少し飲みすぎた私は、久々に酔っ払って部屋に戻るなりソファに倒れ込んでしまった。


「レティシア、なんでそんなに無理するんだ」

「無理なんて、していませんよ」

「まだ笑って話せるほど落ち着いてないだろ。ほら、また泣いてる」

「泣いてませんー」

「はあ、また寝るのか……」


 私を腕に抱きながらレギアスが何かぶつぶつと言っている。


「アンネローゼ、月のものって何日続くんだ?」

「10日ほどです」

「は? マジか。そのあいだはその、子作りとか……」

「絶対厳禁です。最悪子が望めなくなります」

「な、なんだってー!?」


 レギアスが絶望的な声を出しているなかで、意識が途切れた。

 

 ⋆ ⋅ ⋆ ⋅ ⋆


 まだ暗いなか寝苦しさに目を覚ました。ベッドの中だ。

 レギアスが後ろからギュウギュウと締め付けている……


「レギアス様、苦しい」

「レティシア、ちょっと出かけよう!」

「は?」


 いきなりなんなの?

 レギアスは私を身軽なドレスに着替えさせて抱き上げた。

 バルコニーに出ると、寝そべったまま頭をもたげるヴァルグの背に乗る。


「よし、じゃあ行くぞ!」

「行くってどこへ?」

「ちょっと遠くだ。師匠のとこに行く」


 師匠? 誰??

 ヴァルグが飛び立つと、シャリーアも不満げについてきた。

 後にした皇宮の背後に見える山並みから、夜明けの光が漏れている。

 

 見つめていると少しずつ明るさが増し、世界の丸みを浮かび上がらせた。

 薄青色にオレンジが混ざっていく空にはシャリーアのシルエットが浮かび、建物の屋根が次々と照らされる。

 たまにはこういうサプライズも、悪くないかもしれない。

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