プロローグ
前から投稿してみたいと思っていたので、思い切って投稿することにしました!
宜しくお願いします!
西暦20XX年、人類は限界を知った。
地球のエネルギー問題は膠着し、化石燃料は枯渇を叫ばれ、次世代クリーンエネルギー技術は、熱力学の「壁」に阻まれていた。私たち、H大学のエネルギー研究室の面々は、その壁の前に座り込んだ、諦めを知った知識人たちだった。私もまた、若手助教として、理想と現実の板挟みに苦しんでいた。
そんな時代に、私は彼と出会った。
真波 悠人。私の協力者であり、夫であり、そしてこの世界に「マナの夜明け」をもたらした、唯一無二の賢者。
私がこの伝記を記しているのは、彼が世を去ってから既に数十年が経過した「新文明」の時代だ。現在、マナ・リアクターは世界のどこでも稼働し、砂漠は農地となり、貧困は過去の遺物となった。だが、この繁栄の始まりが、いかに奇妙で、いかに脆いものだったかを知る者は少ない。
悠人が、私たちの時間で「たった数時間」の空白を経て、H大学の研究室に戻ってきたのは、あの絶望的な春の日だった。彼の肉体は優秀な若手研究者のまま。しかし、その瞳の奥には、私たちが知る文明とは比べ物にならない異世界で、数世紀を生き抜き、一つの文明を築き上げた巨大な知恵が宿っていた。
彼の帰還は、誰にも知られることなく、静かに起こった。彼の最初の行動は、世界を救うことでも、自らの帰還を証明することでもない。
「効率が悪い。こんな熱損失、許容できない」
彼は、独り言のようにそう呟き、研究室に転がっていたジャンクパーツと、古びたバッテリー、そして異世界で培った「無属性マナ制御魔法」の知識を用いて、手のひらに乗るサイズの試作型デバイスを作り上げた。それは、人類が夢想し、誰も到達できなかった、完全なるクリーンエネルギー生成装置の原型だった。
私がそのデバイスのデータ記録を発見し、彼の前に立ちはだかったとき、私はただ、停滞した科学界に現れた一筋の「光」に興奮する、一介の研究者だった。
「これは、一体どういう原理で動いているんですか、真波さん」
私の問いに対し、彼は静かに答えた。その言葉は、私たちが信じていたすべての科学の常識を覆す、新しい時代の幕開けの宣言だった。
「原理、ですか。……そうですね。異世界の魔法、とでも言っておきましょうか。」
これが、世界を変革する若手研究者の皮を被った賢者、真波悠人と、彼がもたらすアース・ルネサンスの始まりである。




