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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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最初の目標!

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

七月三日、十四時三十分。「前線カフェ」の座敷では、なおも熱い議論が続いていた。理名りなを中心に、祈里いのりたち四人がテーブルを囲む中、不意に幼い歓声が響き渡った。

「やったー! エ・ス・テ・ル・カ・リ・バ・ーを遂にゲットー!」

稲穂いなほがスマホの画面を見つめ、大喜びで声を上げた。


理名は「妙に静かだな~と思ってたら……」と、肩をすくめてプププッと笑う。


「『七福少女えびすちゃん』のスマホゲームを座りながら隠れてしてたのね♪」


「だ、だって……稲穂たちもアイドルなりたいけど、理名お姉ちゃん、まだ早いっていうから……暇だったもん。それに……」

稲穂はふてくされたように唇を尖らせると、カフェの壁掛け時計を指さした。


「オープンしてから、既・に・ラ・ン・チ・タ・イ・ム・す・ぎ・て・る・けど、だ~れも来ない。いつもこんな感じ……暇。暇・だ・か・ら・ス・マ・ホ・ゲ・ー・ム・し・か・楽・し・み・が・な・い・もん」


「稲穂ちゃ~ん、わかる~」

祈里が共感を示すように身を乗り出した。


「私・も沙希ちゃんと、お外でボーっと日・向・ぼ・っ・こ・するのは大好き! でも、今日から変わらないといけない……」


「わ、私も変わりたい……」

沙希もオドオドしながらも、しっかりと頷いた。


「とりあえず、楽しくいこうよ! 自分たちが楽しくないと『アイドル』は始められないわ」

理名の明るい言葉に、神那かんなは一度深呼吸をしてから口を開いた。


「とにかく、コーチが言った意味は分かったわ。自分は『アイドル』だって意識しないといけないのよね?」


「そう、そして自分が持つ得意な事――アイドルの武器は磨いていかないとね。もう、神那ちゃんはそのままでも良いけど」

理名が再び茶化すように笑うと、神那は心底不安そうな表情を浮かべた。


「本当に、この人をコーチって呼んでいいのかな……と心配になってきた」


「はいはいはいは~い! もう、私は『アイドル』。アイドル以外の何者でもありません!」

祈里が元気よく、口早に宣言した。


「わ、あたしも今から『アイドル』です!」

沙希がそれに続き、最後に美琴みことが頬を赤らめ、恥ずかしそうに口を開いた。


「私も……今から『アイドル』……で・す」


「うわああああああっ、美琴さんはまだ殻を破ってないみたいね」

理名はのけぞるような仕草を見せてから、優しく微笑んだ。


「でも、大丈夫……。心強い仲間がいるからね。で、神那ちゃんはアイドル宣言しなくていいの?」


「ここで、そんなのする必要があるの?」

神那が冷たく突き放すと、すかさず稲穂が茶々を入れる。


「よ! 流石、塩対応しおたいおう!」


「い、稲穂ちゃん……。そんなことを言うと神那さん、傷つくよ……」

亜都あとが慌てて制止に入る。


「神那さんが一番冷静になって、みんなを喜ばせるアイドルになることを考えているんだし……。失礼だよ!」


「ありがとう亜都ちゃん」神那は少しだけ表情を和らげたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。


「でも、私は塩対応で勝負するわ。一・番・自・然・体・でいられるし……。言いたいことを言わないで我慢するのは嫌だから。ねっ、稲穂ちゃ~ん。今晩はお・姉・さ・ん・が・ビ・シ・バ・シ・鍛・え・て・あ・げ・る・からね~」


「う、うん? 夜に鍛えることを稲穂ちゃんとしてるの?」

不思議そうに首を傾げる理名に対し、美琴が「そ、それは……」と焦り声を出す。


「理名お姉ちゃん、鍛えるって言ってるのは家・業・の・勉・強・のことだよ」

稲穂がすかさず説明を補足した。


「これでも神那さんの実家は、工・芸・品・の・細・工・師・なんだ。実は神那さんと私・は・親・戚・なんだよ」


「だからね……。雰・囲・気・似・て・る・もんね。親戚だったんだー」

理名が納得したように頷くと、稲穂は「そうそう……」と目を伏せた。


「こんな幼気な私を、厳しい細・工・師・の・修・行・に……」

クスん、と嘘泣きをしてみせる稲穂。神那は呆れたように一言添えた。


「まあ、そういうことにしとくわ」


「神那ちゃんは、これで良いよ。別に宣言が必要なわけではないから」

理名はクスッと笑い、改めて全員に視線を向けた。


「とりあえず、この『私はアイドル』って気持ちが、アイドルになるためのスタートライン。じゃあ、今度は最・初・の・目・標・を立てましょう」


「最・初・の・目・標・っ・て・何・で・す・か・?」

祈里の問いに、理名は迷いなく答えた。


「勿論、デ・ビ・ュ・ー・日・を決めることよ! 覚悟を決めて『アイドルになりま~す』じゃ、何も始まらないでしょう。アイドルになるって決めたのなら……。次はみんなに、それを宣言しないと。しかも、出来るだけ大勢の前でね!」


その言葉に、四人の少女たちの背筋がピリリと伸びた。いよいよ、彼女たちの夢が具体的な形を持ち始めていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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