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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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アイドルとは…

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

七月三日、十三時。佐賀県鹿島市の「前線カフェ」では、繋げられたテーブルを囲み、新たな幕開けとなる重要な話し合いが行われていた。


コーチを引き受けた理名りなを中心に、祈里いのり神那かんな沙希さき美琴みことの四人と、その様子を真剣に見守る稲穂いなほ亜都あとが座敷に並んで座っている。


「では、みんなアイドルになる覚悟はあるってことね……。それが一番重要ね」

理名は一同の顔を見渡し、自嘲気味に肩をすくめた。


「私は覚悟がなかったから、最終的には辞めちゃったんだけどね。ハハハ」

その乾いた笑い声を遮るように、神那が強い意志を宿した瞳で理名を見据える。


「理名さん、みんなでアイドルになる覚悟はできました。条件は必ず守ります。どうしても、このお店と門前商店街が衰退して消えていくのだけは嫌なんです」


「みんなが、この稲荷神社門前商店街を拠・点・と・す・る・ア・イ・ド・ル・として大活躍できれば……」

理名は身を乗り出し、希望を語る。


「まずはこの前線カフェや商店街の衰退を止めるどころか、亀さんが言っていた昔のキラキラしていた商店街よりも、もっと素敵な場所にすることだってできるわ」

その言葉に、美琴が冷静ながらも熱を帯びた声で問いかけた。


「理名さん、アイドルになるために、まず私たちは何を最初にしなければいけないんですか?」


「最初にすることは……」理名はクスリと軽く笑い、意外な答えを口にする。「『自・分・た・ち・は・ア・イ・ド・ル・だ』って、自分自身に対して暗示をかけることかな」


「ちょ……ちょっと馬鹿にしないでよ!」

神那が思わず怒声を上げる。「何よ、その『暗示』って?」


「いや……じゃあ、自分がアイドルでないなら、あなたたちは何なの?」

理名の問いに、祈里が身を乗り出して答えた。


「みんなが喜んで幸せになるために歌を歌って、踊って、元気を与えるのがアイドルじゃないの?」


「それは別に『アイドル』じゃなくてもできるんだよね……」

理名は冗談を交えながら、諭すように言葉を繋ぐ。「歌手、ダンサー、それに幸せとは少し違うかもしれないけど、お笑い芸人だって人を笑わせて楽しい気持ちにさせることができる。つまり人を喜ばせることができるでしょ?」


「じゃ……じゃあ……『アイドル』って何ですか?」

沙希がいつものようにオドオドとしながら、小さな声で尋ねた。


「『アイドル』は、存・在・す・る・こ・と・で・み・ん・な・を・幸・せ・に・す・る・ってやつかな。正直、意外と歌唱力や踊りはどうでもいいかも」

理名がクスッと笑うと、祈里が納得のいかない様子で食い下がる。


「アイドルは歌って踊って、みんなを喜ばせる存在じゃないんですか?」


「そうだよ。アイドルは歌うし、踊りもする。でも、ファンが喜ぶところはそこじゃあない」

理名は一度ハハッと苦笑し、遠い目をした。


「辞めた私が言う言葉でもないけど……ファンがアイドルに喜びを感じるのは、自分たちが応援してくれる『推・し・』が、徐々に一・人・前・の・ア・イ・ド・ル・と・し・て・成・長・し・て・く・れ・る・姿・を見ることだと思う。これは私個人の意見だけどね」


「せ、成長してくれる姿……。あと『推・し・』って何ですか?」

沙希の問いに、神那が苛立ちを隠さずに口を挟む。


「相変わらず、沙希はさりげなく嫌味なことを言うのね。……『推し』っていうのは、自分が一番応援したい人のことを言うの。た・と・え・ば……このお店に来るお客さんは、意外とあなた『推し』の人が多いってことよ。そのいつもオドオドしている姿が、守ってあげたいって思うらしいのよ……」


「わ、私はそんな……」

沙希が顔を赤くして俯くと、神那はさらに続けた。


「わざとしてるのではないのは分かるけど、そういう沙希の仕草に『庇護欲ひごよく』を感じている人たちがいるのよ」


「神那ちゃん、じゃあじゃあ、私は? 庇護欲とか感じる?」

期待に満ちた目で尋ねる祈里に、神那は即答した。


「祈里……。残念だけど、ないわね」

間を置いて、少しだけ声を和らげる。「でも、いつも元気いっぱいだから、見ていて元気になるって話してるお客さんはいたわ」


「そ、そうなんだ……。ハハハ……」

祈里は少し複雑そうな苦笑いを浮かべた。


「私が生まれる前くらいのアイドル像は、歌も上手で綺麗で、『高・嶺・の・花・』ってイメージだったみたいだけど。今は違うのよ」

理名は立ち上がり、今のアイドルの本質を説く。


「最初はみんな、歌も踊りも下手くそでいい。歌が聴きたいなら伝説のアーティスト『IS:Tイズティー』を聴けばいいし、踊りなら高度なパフォーマンスグループを見ればいい。正直、アイドルは歌や踊りに関して究・極・の・姿・を・求・め・て・い・な・い・んだ」


「でも……アイドルはみんなを幸せにできるの?」

祈里の真っ直ぐな瞳に応えるように、理名は力強く、断言した。


「これだけは断言できる。アイドルはみんなを幸せにできる。……でも、一人の力じゃできない」

その言葉は、集まった少女たちの胸に、重く、そして確かな光として刻み込まれた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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