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真説・おとぎ前線 【小説版】  作者: かたしよ


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四百年の寝坊助

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

新たな眷属(元・編みぐるみ)である稲穂と亜都が人間の姿になり、店内がカオスに包まれてから約一時間が経過した。

少し落ち着きを取り戻した私たちは、テーブルを囲んで話し合いの席についていた。

……いや、「落ち着きを取り戻した」というのは正確ではない。私、碧海雫は、あまりの事態に思考回路がショートし、ただ呆然と彼女たちの会話を聞いているだけだ。

「ふ~~~ん。じゃあ、亜都ちゃんは沙希姉ちゃんを探す為に、この場所に来たと」

稲穂が、頬杖をつきながら興味深そうに尋ねる。

「はい」亜都は姿勢を正し、真剣な眼差しで答えた。「沙希様は次期**隠神刑部いぬがみぎょうぶ**となられるお方。ただ、四百年ほど前から一切の消息を絶たれてしまい……一族総出で探していたのですが、今まで気配さえも誰も感じることが出来ず」

四百年。その途方もない数字に、私はめまいを覚えた。

「ここ最近になって、隠神刑部様が、こちらの稲荷神社参道内にある"おとぎ前線"に沙希様の気配を感じると仰って。何か良く分からないんですけど、ここに"編みぐるみ"の姿で待っていたんです」

それを聞いた祈里が、きょとんとした顔で口を挟んだ。

「沙希ちゃんって……本当は凄い神様??」

「隠神刑部といえば」神那が腕を組み、難しい顔で解説を加える。「何人かいらっしゃる"狸神たぬきがみ様"の最高の位よ。私たちでいうとウカノミタマ様と変らない偉大な存在。いや……」

神那は、隣で背中を丸めている沙希をジロリと見た。

「この、いつもきょどってる沙希が……それはないと思うわ。狸・違・いじゃないの?」

「沙希様を”きょどってる”だの”沙希”と呼び捨てにするなぞ、私は許しません!」

亜都が色めき立ち、神那に食って掛かった。小さな体から発せられる忠誠心は本物だ。

「あ、亜都ちゃん……」沙希が困ったように止める。

神那は肩をすくめ、半ば馬鹿にしたような声色で言った。

「まさか、四百年もとは思わなかったけど、沙希はずっと冬眠してたわよ。それを偶々、祈里が見つけて起こしたって訳。で、今は私たちと一緒に行動してる」

「神那さんの言う通りね」美琴も静かに同意した。「それに沙希さんが次期隠神刑部様だとしたら、多少でも**神気しんき**を感じるはずだけど、それも感じない。逆に亜都ちゃん、貴女の方が微小だけど神気を感じるんだけど……」

亜都は少し俯いた。

「私もお恥ずかしながら、隠神刑部様直系の者。神気はございます。それに沙希様は先々代の隠神刑部様の1人娘で……」

亜都は声を潜め、ボソリと呟いた。

「本来なら、今の隠神刑部様は沙希様だったはずです」

「さ、沙希ちゃん……」祈里が心配そうに覗き込む。

沙希はおずおずと口を開いた。

「亜都ちゃん、お、お父さんは?」

「お元気にされてますよ。神・様ですから人間とは違います」亜都の表情が少し曇る。「沙希様がお消えになってから、心配で本来の隠神刑部様の仕事ができないと悩まれて……今の隠神刑部様は私の父が代わりにやってます。先々代様は本当に……この四百年、沙希様のことばかり考えこまれていて……」

「ご、ごめんなさい……」

沙希は身を縮こまらせ、消え入りそうな声で言った。

「冬眠しなくちゃと眠ってただけなの……。それにお父さんみたいな神気もないし……。次期隠神刑部なんて……」

ただの寝坊が四百年。神様の世界の時間感覚はどうなっているのだろうか。

「沙希様は歴代最高クラスの神気の持ち主だと、先々代様からも父からも聞きました。ただ、それが覚醒していないだけとも……」

「沙希ちゃん、凄~い!」祈里が目を輝かせて手を叩く。

「い、いや……。違うと思う……絶対違うと思う……」沙希は必死に首を横に振った。

稲穂がパンと手を打ち、話をまとめた。

「事情は分かったけど、亜都ちゃんは、その沙希姉ちゃんを向こうへ連れていくつもりなの?」

「いえ、違います」亜都は首を振った。「先々代様と父より、沙希様の様子を見ながら、覚醒されるのを補助せよと言われています」

「あら、私と逆ね」稲穂は「フフッ」と小声で苦笑した。「私はこちらのお姉さま方から、ウカノミタマ様より厳し~いご指導を受けつつ一人前の眷属となるようにと、ここにいるの。立場は違うけど、亜都ちゃん、仲良くしようね。これから宜しく!」

稲穂が右手を差し出す。

「い、稲穂ちゃん……私からも宜しくお願いします」

亜都がその手を握り返した。

ガッチリと交わされる熱い握手。

その光景を見て、私は唖然とし、狐神族の三人は困った表情を浮かべ、沙希だけが不安そうな顔をしていた。

(私のカフェ、本当にどうなっちゃうの……?)

静かな店内に、私の心の叫びだけが虚しく響いていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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