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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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りなってぃ先生♪

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

午前十一時頃。佐賀県鹿島市、門前商店街に位置する「前線カフェ」のお座敷では、かつてない緊張感と、どこか場違いな期待感が入り混じっていた。


「私は一応、厨房の方に来客の準備をしておくわね。適宜、お店の様子を見ながら、『り・な・っ・て|・ぃ』先生の話を聞くのよ」

店長の碧海雫は、いたずらっぽく笑いながらそう言い残した。


「ちょ……ちょっと店長、その呼び名は……!」

理名が焦った声を上げたが、雫は止まらない。


「地元、佐賀県が生んだ伝説的なローカルアイドル『SAGAN娘。』の絶対的不動のセンター、『り・な・っ・て|・ぃ』じゃないの。ねえ?」

雫はひらひらと手を振りながら、一人で座敷を後にし、奥の厨房へと消えていった。

残されたお座敷には、期待に目を輝かせる祈里、神那、沙希、美琴、そして稲穂と亜都の姿があった。


「理名さん、いえ……『り・な・っ・て|・ぃ』先生……」

祈里がおずおずと、しかし興味津々にその名を呼ぶ。


「い、いや……その呼び名で私を呼ぶのは止めて……ね? 祈里ちゃん……」

理名は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で懇願した。


しかし、幼い稲穂が追い打ちをかける。

「理名お姉ちゃんは、本当に『SAGAN娘。』の『絶対的不動のセンター』って呼ばれていた『り・な・っ・て|・ぃ』じゃないの?」


「い、稲穂ちゃん……。あれは、あの時は偶然が偶然に重なって起きた出来事だから……。私は、アウトドアが大好きな、ただの一女子なのよ!」

必死に否定する理名だったが、神那は冷静にその核心を突いた。


「でも、偶然であろうと元『伝説のローカルアイドル』なら、素人の私達を指導することは可能なのよね?」


「し、指導ね……」

理名はたじろぎ、視線を彷徨わせた。少しの間をおいて、覚悟を決めたように言葉を絞り出す。


「指導はできないけど、楽しみながら歌を歌ったり、踊ったりすることくらいなら……みんなに教えられるかも」

その言葉に、稲穂が身を乗り出した。


「亜都ちゃんと私は、先に楽しいダンスを教えてくれる約束だったもんね。理名お姉ちゃん、私達には教えてくれるんだよね?」


「理名お姉ちゃん、楽しみにしてたから、私と稲穂ちゃんにダンスを教えてください!」

亜都も目を輝かせて理名を見つめる。


「も、もちろんよ。稲穂ちゃんと亜都ちゃんは約束してたからね」

理名はそう言って微笑んだが、祈里たちの視線に気づき、言葉を濁した。


「で、でも……祈里ちゃんたちは……」


「稲穂と亜都ちゃんは良くて、私達はダメなんですか?」

祈里が少し怒気を含んだ声で問い返す。


「ほ、ほら……稲穂ちゃんと亜都ちゃんの方は遊びだから。遊びの一環としてのダンスなの」

理名の言い訳に、今度は稲穂が驚きの声を上げた。


「えええええええ! 私も亜都ちゃんもアイドルになりたいよ! ね、亜都ちゃん?」


「理名お姉ちゃんの正体を知ったからには、私も稲穂ちゃんとアイドルみたいなことはしたいです」

亜都の言葉に、理名は頭を抱えた。


「ちょっと、二人まで……。す、少し考えさせて……」

「『り・な・っ・て|・ぃ』先生、その『少し』とはいつまでですか!」

神那が少し厳しく問い詰めると、理名は半泣きのような顔になった。


「神那ちゃんまで……。私をそんなに責めないでよ……」


「理名さん、何か理由があるんでしょうか?」

美琴が心配そうに問いかけ、沙希もおどおどしながらフォローを入れる。


「やりたくないのを無理に進めたら可哀想だよ……」

理名はふう、と大きく長い溜息をついた。


「……そんな大きな理由はないよ。でも、一応経験者の一人として忠告したいけど、アイドルなんて大変だよ。色々な意味で。アイドルになってからは、もっと大変になる。さっさと止めた私が言うのもなんだけど……」


「色々な意味で大変って……。アイドルになって、歌とダンスでみんなを幸せにすることが大変なんですか?」

祈里の純粋な問いに、理名はうーんと唸りながら考え込んだ。


「アイドルになって歌とダンスでみんなを幸せにする……か。それができたら、本当に神様だねえ。それこそ、噂の岩崎社の巫女さんみたいな奇跡でも起きたら、分からなくはないけど……」

理名は一度言葉を切り、真剣な眼差しで四人を見つめた。


「みんな、ローカルの……この神社周辺だけでしか活動しないと約束してくれる? それなら、私で良ければお手伝いしてもいいわ」


「ほ、本当!?」


「本当ですか!?」

祈里と沙希が同時に声を弾ませる。


美琴も安堵したように微笑んだ。

「もとより、この『前線カフェ』と『門前商店街』の活性化のためのアイドル活動ですから。外へ出ることはありませんわ」

それは単なる決意ではなく、彼女たちの正体が神社境内を出ると編みぐるみに戻ってしまうという「制約」ゆえの必然でもあった。


「約束は守るわ」

神那が力強く頷く。


理名は彼女たちの顔を一人ずつ見つめ、少し心配そうに、けれど温かい声で言った。

「みんな可愛いし、美琴さんは綺麗だし……心配なんだ。ファンといっても色んな種類の人間がいる。もしかしたら、のんびりとした生活はできなくなるかもしれないけれど、本当にいいの?」

少しの間をおいて、理名は再びいつもの調子に戻り、稲穂と亜都に視線を向けた。


「あと……稲穂ちゃんと亜都ちゃんは……まだ、するにしても先の話かな!」

理名はそう言って、最後には豪快に笑ってみせた。お座敷の空気は、新しい目標に向かって、ようやく一つにまとまり始めていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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