表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/117

佐賀の魅力とアイドルの定義

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

七月一日。梅雨の晴れ間から差し込む陽光が、佐賀県鹿島市・門前商店街にある「前線カフェ」の店内を明るく照らしていた。


店内では、祈里、神那、沙希、美琴の四人がお座敷に膝を突き合わせ、何やら真剣な面持ちで話し込んでいる。いつものテーブル席では、編みぐるみの稲穂が熱心にスマホゲームに興じ、その隣で亜都が静かに読書を楽しんでいた。


「(少し嫌そうな声で)や、やっぱり……私も入るんですか?」

美琴が眉をひそめ、念を押すように尋ねた。


「美琴さんが入らないと……始まらないです!」

祈里はここぞとばかりに甘えるような声を出し、美琴の袖を引く。


「で、でもね。確かに、数日前の『狐の嫁入り』での岩崎大神様たちの歌声は素晴らしかったわ」

美琴は困惑を隠せない様子で言葉を継いだ。


「ウカノミタマ様の加護を授けるために、一時的に弱まった結界を元に戻すどころか、あれは完全に通常のウカノミタマ様の()()|す|ら|超|え|て|い|た|……。でも、だからといって私たちが同じことをしなくても良いんじゃないかしら?」


「アイドルとはなんぞや?」

その問いに答えるように、神那が熱く語り出した。


「お店のパソコンで調べましたが、アイドルとは『偶像』『崇拝される人や物』『あこがれの的』『熱狂的なファンをもつ人』を指す言葉。英語に由来すると『|ペ|キ|デ|ィ|ア』に書かれてありました」

沙希がそっと祈里の耳元に顔を寄せ、小さな声で囁く。


「(ささやき声で)い、祈里ちゃん……ぺ、ペキディィア? って知ってる?」


「(熱く語り調で)この|人|間|界|の|事|が|色々調べられるインターネットの本みたいなものらしいよ」

祈里が自信満々に教えると、沙希は感心したように目を丸くした。


「は、はあ……そうなんだ。神那ちゃん、もうインターネットが使えるなんて凄いね!」


「私はこう思うんです」

神那が再び熱を込めて宣言した。


「このアイドルという存在は、本来はウカノミタマ様をはじめとした神様の方々や、私たちのような眷属のことこそを指すのではないかと!」


「(困った声で)う……ん、神那さん。流石にそれは言い過ぎだと思うけれど。そもそも、人間界と私たちの世界では認識の感覚が違うし……」

美琴がなだめるように言うが、祈里も引かない。


「でも、紅さんはその歌で人間を幸せにするために、二十年もの間、修行に行っていたんですよ。ご一緒された二柱様も……」


「私や祈里は確かに、岩崎大神様のような強力な神気はありません」

神那は自分たちの実力を冷静に見据えつつも、瞳に闘志を宿した。


「ですが、その昔は岩崎大神様……紅さんに歌や踊りを教えていただいた身です。似たようなことはできると思っているんです」


「(呆れた声で)そ、それが|ア|イ|ド|ル|活|動|っていうことなのね……」

美琴が溜息をつくと、祈里が身を乗り出した。


「一人じゃ無理でも、|四|人|揃|え|ば|、どうにかできると思うんですよ。それに、この|暇|す|ぎ|る|お|店|の|宣|伝|にもなると思います!」


「(少し感心して)祈里、あなたもたまにはまともなことを言うのね。ふふふ」

神那は小さく笑い、美琴に向き直った。


「美琴さん。お店にお客さんが来れば、このねじ曲がった『おとぎ前線』を監視する御神命も続けられます。でも、今のままでは店長に売上がなくて、いつこの|お|店|を|畳|む|と言い出しかねませんわ」

その会話を聞きつけ、厨房から店長の碧海雫が顔を出した。


「(茶目っ気たっぷりに)誰が、いつお店を畳むって?」


「いや……ですが、お客さんが来ないということは、売上がないということ。それはお店を畳むことに繋がりますよね?」

神那が正論を突きつけると、雫は苦笑を浮かべた。


「(はははと苦笑い)それは間違いないし……。返す言葉もない。でも、このお店もだが、商店街全体もあまり変わらないんだ。それどころか、この|佐|賀|県|自|体|もね」

碧海雫は一度言葉を切り、遠くを見つめるような目をした。


「『亀さん』がよく言ってるでしょ。|昔|の|キ|ラ|キ|ラ|し|た|時|の|門|前|商|店|街|に|戻|し|た|い|、とね。昔は活気があったし、お店の皆さんも若かった。貴女たちとは少し違うけど、人間に例えるなら、一番情熱ややる気に満ち溢れていた時期だったの。だが、人間は貴女たちと違い、過ぎ去る年月の感覚が違うの。……以前、超高齢化社会の話をしたでしょう?」


「|こ|の|国|は|子|供|が|生|ま|れ|る|数|よ|り|、|高|齢|の|方|が|極|端|に|多|い|というお話ですよね」

美琴が真剣な表情で答える。


「美琴さんなら分かるはず。若い人が少なくて高齢の方ばかりなら、この国はどうなると思う?」


「(不安げに)……この国の人間たちはいなくなってしまうのですか?」


「そう……。この状態が続けば、まだまだ先の話だけど、千年後には純粋な日本人は誰もいなくなるとも言われているわ。グローバルな国になると考えれば悪くはないんだろうけど…(笑)。その|超|高齢|化|の波が、一番|顕|著|に出ているのが、この佐賀県や地方と呼ばれる場所。子供が生まれる数は日本国内でもトップクラスなのに……なぜ|若|い|人|が|佐|賀|に|い|な|い|と思う?」


「(悩んで)う~~~ん。全然、分かんないです」

祈里が頭を抱えると、蒼羽は残念そうに肩を落とした。


「出ていくんだよ。この場所に……|佐|賀|県|に|魅|力|が|な|い|からって……」

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ★★★ブクマ・ポイント評価お願い致します!★★★


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ