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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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神々の再会と祝福の秘密

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

祐徳稲荷(ゆうとくいなり)神社の奥に位置する岩崎社。午前十一時を過ぎ、周囲は神聖な静寂と「狐の嫁入(きつねのよめい)り」の熱気に包まれていた。

雅な行列から離れ、新郎と新婦の二人だけが岩崎社の**()()|内《・>**へと足を踏み入れた。朱色の社の前に並び立ち、二人は敬虔に頭を下げる。


「岩崎大神様、紅様……。どうか、私と亜依に**()()()()|福《・>を授けたまえ!」

新郎の創思**が、凛とした声で祈りを捧げた。

続いて、白無垢に身を包んだ亜依が、どこか懐かしむように目を伏せる。


「お久しぶりでございます、紅様。亜依です。二十年ぶりにお帰りになられたと聞き、()と共にご挨拶に伺いました」

その様子を、社の内側から三柱の神々が見守っていた。


「二人とも紅の名前を言ったわ。紅……知り合いなの?」

ピアノの手を止めた白が、不思議そうに尋ねる。


紅は、しみじみと外の二人を見つめた。

「あっ……。あの二人は狐神族の創思と亜依だ。あの子たちが、今回の嫁入りの新郎新婦だったんだね」


「知り合いなのかい?」

慶が横から顔を出す。 


「私はこれでも、この地での**伝承芸能(でんしょうげいのう)の末神**だからね」

紅はそう言って胸を張ったが、ふと思い出したようにいじけた声を出す。「……今は、そうは言われてないみたいだけど」


「今は立派な**恋愛成就(れんあいじょうじゅ)**の神様として通っているからね」

慶がハハハと愛想笑いをしてフォローを入れる。


紅は目を細め、遠い記憶を辿るように語った。

「あの子たちが幼い頃から知っているんだよ。当時は普通に狐神族に歌や踊りを教えていたんだ。あんなに立派になって……」


「紅、なんだか嬉しそう」


白の指摘に、紅は照れ隠しすることなく頷いた。


「いや、本当に嬉しいんだよ。私のことを忘れず、一番大事な日にウカノミタマ様より**()()()()()()|ろ《・>**に来てくれるなんてね……」


「ウチはこういう話、**()()|物《・>**なんだよね!」

慶がワクワクした様子で身を乗り出す。 


「早く二人の期待に応えてやらないと。行くよ、紅、白!」

慶はそそくさと岩崎社から飛び出していく。紅と白も慌ててその後に続いた。

社の前では、創思と亜依がなおも語りかけていた。


「岩崎大神様。私たちが幼き時、大神様に教えていただいた歌や踊りは、子々孫々までお伝えする所存です」


「大神様に直にお教えいただいたことは、私の**()()()()()|事《・>**の一つになりました」

亜依が切なげに微笑む。


「大神様としてお忙しいご身分、もうお会いすることは叶わないかと存じますが、私たちの感謝の気持ちをお伝えいたします」

一心に祈り続ける二人の背後から、紅が静かに歩み寄った。


「創思、亜依。結婚おめでとう。あんなに**()|さ《・>**かったのに、立派になったね」

突然背後から響いた懐かしい声に、二人は驚いて同時に振り返った。そこには、紅、白、そして慶の三人が並んで立っていた。


「た、た、た、大神様……っ!?」

創思が驚愕の声を上げる。亜依も目を見開き、今にも泣き出しそうな声で震えた。


「い、岩崎大神様……っ」


「ハハハ。大神って呼ばれるのは個人的に好きじゃないんだ。昔と同じ呼び方で呼んでよ。創思も、亜依も」

紅は優しく微笑み、周囲に配慮するように声を潜めた。


「あと、私たちの姿は今、あなたたちにしか見えていないし、声も聞こえていない。……そう、社に拝んでいるふりでもしておいて」

二人は言われた通り、慌てて社の方へ向き直り、再び拝む姿勢を取った。


「(かしこまって)べ、紅様……」 


「紅様?」

紅は冗談めかして笑う。


「私、聞き間違えかな……。昔は『紅さん』じゃなかったっけ?」


「(恐縮しながら)べ、紅さ、さん」

亜依が呼び直すと、紅は満足げに頷いた。


「流石、狐神族だけあるね。亜依の方が強くなったみたいだ」


「な、なんだい? その『強くなった』ってのは」

慶が不思議そうに首を突っ込む。


「狐神族は女性の方が男性より上位なんだよ。ウカノミタマ様も女性だろう?」

紅が教えるように語る。


「ここでの『狐の嫁入り』は、狐神族の**()|性《・|が|夫|と|な|る|男|性|を|迎|え|受|け|る|**儀式なんだ」


「なるほど、分かった。狐神族は女性の方が強いのね」

白が納得したように呟くと、慶がプププと吹き出した。


「尻に敷かれるとは、狐神族のことだったのかい」

慶が再びおかしそうに笑うと、紅が強めに窘める。


「慶!」


「ソーリー! 慶事に失礼だったね。前のお二人さん、ごめんよ。ウチは紅の友人で『慶』っていう名前だよ」


「慶は、ビリケンとも呼ばれてる……。なぜ隠す」


白が無表情に真実を告げると、創思がハッとした。

「ビリケン様というと……あの有名な……」


「えっ、あのビリケン様でいらっしゃるのですか?」

亜依までが目を輝かせたのを見て、白が慶を追及する。


「慶、なぜ黙る」


「……紅と一緒さ。ウチはその名前で呼ばれるのは個人的に好きじゃないんだよ」

慶はしばらく沈黙した後、遠い目をして付け加えた。


「特に今日はね……。**|ト|ラ|ウ|マ|み|た|い|な|**ね……嫌なことがあったんだよ……」

その言葉に込められた深い哀愁に、岩崎社の前には少しだけ奇妙な空気が流れた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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