表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/117

岩崎社の神々と、正真正銘の嫁入り

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

祐徳稲荷(ゆうとくいなり)神社、その一角に鎮座する岩崎社。六月後半の午前十一時を過ぎた頃、社の中には独特の緊張感と静寂が漂っていた。


一時間前に起きたあまりの出来事に、慶は魂が抜けたように茫然自失(ぼうぜんじしつ)の体で座り込んでいる。


その傍らでは、紅が何事もなかったかのように一人ボイストレーニングに励み、白が静かにピアノを奏でていた。


不意に、流麗なピアノの音が止まった。白が鍵盤から手を離し、外へと意識を向ける。

()()()が聞こえてくる……こちらに近づいてきているみたい」


紅も喉を休め、瞳を細めた。

「狐の嫁入りの行列が、そろそろ来る頃か……」


ふと、紅は何かを感じ取り、眉を動かした。「……この**()()**」


「気配」というその言葉が、慶の耳を叩く。死んでいた魚のような慶の目に、一気に焦燥の光が宿った。

「べ、紅……。あ、あいつか? あいつの**()()**なのか……っ!?」


動揺する慶の姿を見て、紅は耐えきれずに腹を抱えて笑い出した。

「ハハハハ! 慶、慶姐さん。よ~く気配を感じてみてよ」


「ムカッ……! ウチを馬鹿にしちゃいけないよ。そりゃあ……」

慶は紅の言い草に色をなしたが、すぐに声を潜めた。「……ビビってるけどさ……」


白が冷静に気配を分析する。

「この気配、人間じゃない。あの子たち……前線カフェの女の子たちと**()()()()**……」


「そう。この気配は皆、狐神族の気配だね」

紅は確信を持って頷き、それから少し不思議そうに首を傾げた。


「それにしても、これは本当に正真正銘の『狐の嫁入り』だ。白昼堂々、一体どうなっているんだ……」

慶は依然として腰が引けたまま、二人を外へ促そうとする。


「紅……白も。そ、そんなに気になるのなら外に出てみたら? ウチはこの岩崎社を……中でしっかり守ってるからさ。ね?」

白がジト目で慶を見つめた。


「慶、()()()()……」

紅は苦笑しながら、白を誘った。


「白、少しだけ外の様子を見に行こうか。もしかしたら……あの**御神様(おんかみさま)**もいるかもしれないよ」


「いや、いないいないばあっ! 絶対に、いないいないBAAAAN!!」

慶が食い気味に、必死の形相で叫んだ。


白は呆れたように肩をすくめる。

「今日の慶は、お、おかしな神様になってる……」


「白、いや、慶は元々おかしな神様だよ」

紅はハハハと冗談めかして笑った。「**()()()()()()**なんだから……。じゃあ、白、行こうか」


紅と白がゆっくりとした足取りで岩崎社を出ると、そこには立ち入り禁止の看板がどけられ、警備員たちが手際よく行列の誘導に回っていた。


「もう、そこまで来ているようだな。これは確かに正真正銘の『狐の嫁入り』だよ」

紅は、近づいてくる雅な空気に目を細める。


「紅、これが本当の狐の嫁入りなの……?」

白が隣で小さく息を呑んだ。


「私が最後に本物の『狐の嫁入り』を見たのは、いつの頃だったかな……。数十年前か、あるいは百年位前か……」

紅は遠い記憶を紐解くように語り始めた。


「私が二十年の間、修行に行っている直前までは、人間たちが狐神族――ウカノミタマ様の眷属の姿に扮して行列を行っていたから。本物は人間に姿を見られないように、皆が寝静まった頃に行うのが時代の流れだった」 


「そ、そうか……。でも、あの行列は**()()**の狐神族だよね」 


「それは間違いない。気配が違うし、少しだけ神気が混ざっているものまでいる。こうやって白昼に堂々と行列をしているのは、やっぱり、こじ開けられているおとぎ前線と関係があるのかな」

その時、背後からおそるおそる慶が這い出してきた。慶は社を出た瞬間に辺り一面を素早く見回し、例の「御神」がいないことを確認すると、ようやく憑き物が落ちたような安堵の表情を浮かべた。


「(独り言で)ほら、いや、()()()()()()()()()! だった……」

慶はフ~ッと深いため息をつき、ようやく普段の調子を取り戻した。


「慶も来たか。今から来るのは、本物の狐の嫁入りだよ」


「ウカノミタマ様の眷属である狐神族だね」

白と紅が慶を迎える。


「行列をしているのは皆、狐神族だよな。あとは人間の観光客か……」

慶が鼻を鳴らす。


白が前方を指差した。

「そろそろ、行列がこちらの社に来る……」


「(深いため息をついて)では、新しい門出に立つお客様をお迎えしましょうか」

紅はどこか照れくさそうに、口角を上げた。


「一応、私、恋愛成就と良縁成就の**()()()()|い《・>**から。全然、この響きには慣れていないけどね」

慶がそんな紅の背中を叩いた。


「人を……いや、今回は狐神族か。まあ、誰かを幸せに導くことに変わりはないよ」

慶は顔を上げ、近づいてくる新郎新婦の姿を眩しそうに見つめた。


「あの幸せな新郎新婦を、いっちょ祝福してあげましょうか! YO-YO-♪」

いつもの調子に戻った慶の言葉に、白が微笑む。


「では、**()()()()()()|事《・>**を始めましょう」

岩崎社の三人の神々は、神聖な神気を纏いながら、祝福の行列を迎え入れる準備を整えた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ★★★ブクマ・ポイント評価お願い致します!★★★


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ