遠距離恋愛の結末と、社長のロマン
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
佐賀県鹿島市、前線カフェから稲荷神社へ続く参道内。オープンから二か月弱、六月後半の午前十時三十分頃。
稲穂、亜都、そして志織の三人は、稲荷神社の参道内を散策し、鳥居の入口までやってきていた。
志織は驚きの声を上げた。「凄~い! 噂には聞いてたけど、この**"狐の嫁入り"のイベント行事って、"これは本物です"**と言ってもおかしくないわね」
稲穂は、今日の**"狐の嫁入り"はこれでも規模が小さい**方だよ、と教えてくれた。
「稲穂ちゃん、**"狐の嫁入り"のイベント行事を前に見たことがあるんだね」志織は人の多さと衣装の本格さに感嘆する。「でも……人の数も多いし、衣装も本格的。それに見て! あの嫁入り道具の入っている引き車! お姉ちゃん知ってるよ! あれはね"大八車"って言うんだよ。それが何台も! それに凄く本格的な家具や調度品**がギッシリ入ってるわ」彼女は自信満々に説明した。
亜都は、行列が動き出す気配を感じて、志織に伝えた。「し、志織さん、そろそろ行列が始まるみたいですよ」
行列がゆっくりと動き始めた。「そ、そうね。参道の脇に移動しましょうか?」
「それが良いわね。あっ! 見て、亜都ちゃん」稲穂が指さした。
「**創思さんがいる。隣のお嫁さんが亜依**さんだね」と亜都も気づいた。
志織は意外そうに尋ねた。「稲穂ちゃんも亜都ちゃんも、あの**新郎と新婦**の人を知ってるの?」
「知ってるよ。ね、亜都ちゃん?」稲穂は亜都に視線を送る。
亜都は一瞬ためらった様子を見せた後、説明した。「い、稲穂ちゃん……。美琴さん、祈里さん、神那さん三人のお知り合いの方です。今日の**"新郎新婦"**は……」
「だから、二人とも知ってるんだね」志織は納得した様子だった。
「は、はい。**凄い遠距離恋愛**だったそうで、会いたくても会えなかったみたいで、ようやく今日、結婚式をあげることになったそうですよ」
「**凄い遠距離恋愛か……。会いたくても会えない二人が……」志織は小声で「キャー」と歓声を上げた。「こんな晩婚化だの婚活**だの……とか言ってる時代に」彼女はうっとりとした表情で、心底ロマンティックね、と呟いた。
お囃子の演奏が始まり、行列の先頭が動き出した。その二列に並ぶのは、稲穂や亜都よりやや下の年齢の**少女眷属達数十名で、"新郎新婦"**の前を歩き始めた。
稲穂は感心した声色で「へ~~え」と声を上げた。「稲穂ちゃん、どうしたの?」亜都が尋ねる。
稲穂は亜都の側に寄り、「(亜都の耳元でそっとささやく)去年まで私、あの役をやってたの。あの子達、みんな**知り合いの子**……」
「(稲穂の耳元でそっとささやく)だから行列を外から初めて見たんだね」亜都も小声で返した。
「そうそう。凄く新鮮な感じがする」稲穂はハハハと冗談めかして笑った。
志織が二人の様子に気づいた。「稲穂ちゃん、何かおかしいことがあったの?」
「志織さん、なんでもない。知り合いがね、あの**"新郎新婦"**の先で案内する役をしているんだ」
志織は察したように笑った。「だから、笑ってたんだね♪」「そうそう」
稲穂、亜都、志織の三名の前を、少女たちの行列が通り過ぎていった。次に**"新郎新婦"**が並んで歩き始めた。
稲穂は大きな声で新郎新婦に向かって祝った。「おめでとうございます!」
亜都も負けずに声を張り上げる。「お二人ともお幸せに~♪」
**"新郎新婦"は二人の声に気づき、二人揃って顔を向けて無言で会釈**してくれた。
志織はうっとりと呟いた。「素敵ね……。素敵な二人……」
だが、急に思い出し笑いを始めてクククと笑い出した。
稲穂は引いた感じで忠告する。「志織さん、その笑い気持ち悪いですよ」
亜都は怒気をこめて、やや大きめの声で稲穂を制した。「い、稲穂ちゃん!」
「ごめんね」志織は笑いをこらえようとする。「いやね。ウチの**社長も"凄くロマンティックな結婚"**をしたらしいんだけど……」プププと笑いが漏れる。
「志織さん、だから、その笑い気持ち悪いですよ」稲穂は再び引いた様子で言った。
「ごめんごめん。いや~。あの**"新郎新婦"さん達も何十年か経つと……社長みたいな……」(しばらく間を空ける)「ま、まあね。内輪の事を思いだし笑いだから」プププと笑う志織は続けた。「結婚式はスタート地点なんだって、うちの社長**の言葉よ!」
稲穂は呆れ声で「はあ……」と息を吐いた。
亜都が、行列の進捗を告げた。「稲穂ちゃん、志織さん、先頭が**"前線カフェ"**の前まで来ましたよ」
「それなら**私達も"前線カフェ"**まで移動しようか?」志織が提案した。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




