Sカンパニーと天乃 志織
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
美琴、神那、稲穂、亜都の四人は、突然の告白と、その後のオーナー(憂)の奔放な振る舞いに、ただ呆|れることしかできなかった。
一方、志織と理名は、この状況に慣れているのか、比較的冷静に見つめている。
碧海 雫は、呆れ返っている四人を見て、コホンと軽く咳払いを一つしてから皆に語りかけた。
「美琴さん、神那、稲穂ちゃんに亜都ちゃん……、この方が言ってるのは本当なんです……」
そして、小声で付け加えた。「多分……」
志織は、深々と頭を下げて謝罪した。
「皆さん、ごめんなさい。偶に変なテンションになってしまうのよ。ウチの社長……。はじめまして、私は理名の姉の**天乃 志織**と言います。理名と仲良くしてくれてるそうで、本当にありがとう」
稲穂は、志織の顔を見て嬉しそうに言った。
「理名ちゃんのお姉ちゃんなんだ!似てるけど雰囲気は違うね。私の稲穂だよ!」
「稲穂ちゃんは理名からよく話を聞いているわ。いい子だって……。じゃあ、あなたが亜都ちゃんね?」
志織は優しく尋ねた。
亜都は丁寧に応じる。
「はい。私の名前は亜都です。理名お姉ちゃんとは仲良くさせていただいています」
志織は微笑んだ。
「亜都ちゃんは礼儀正しいのね。理名の話していた通りだわ……」
理名が、明るい声で経緯を説明する。
「お姉ちゃんは、このお店を運営している**『Sカンパニー』**の社員なんだよ。で、その繋がりから、私がお手伝いのバイトに来てるって訳。で、今日は社長がお客様が多くなるはずだから、私に急遽、厨房のバイトに入って欲しいって、お姉ちゃんにお願いされたの。だから、今日はお客さんじゃなくて、厨房のバ・イ・ト」
「残念……」稲穂は肩を落とした。
「今度、来た時にダンスを教えてくれるって言ってたから……」
理名は、それを思い出して申し訳なさそうに謝った。
「そうだった。ゴメンね、稲穂ちゃん、亜都ちゃんも、ゴメンね」
亜都は事情を知りながらも、稲穂を宥めた。
「稲穂ちゃん、今日はお客さんが多いから……仕方がないよ。理名お姉ちゃんが言う通り、今度、遊びに来た時にダンスを教えてもらおうよ」
雫は、稲穂、亜都、理名の和やかな様子を見届けたあと、わざと、もう1度軽くコホンと咳払いをして、仕切り直した。
「紹介が本当に後に遅れてごめんね。この方が、一応、間違いなく、ここのオーナーの**緒妻 憂社長に間違いないです。先程のことは大変失礼しました。社長に代わり**、皆に謝ります。」
**憂は偉そうに顎を上げ、「代わりにって……店長**として様になってきたね!」と言った。
雫は怪訝な顔で聞き返す。
「な、なんですか……**『その様』**っていうのは……。で、いつもは、いらっしゃらないのに何かあったんですか?」
「いや……今日は**『狐の嫁入り』**の日なんでしょう。お客さんも凄く多いだろうなと思って、助|っ人を連れてきたのよ!」憂は陽気に手を振った。
理名は、冗談めかした軍人口調で答えた。
「天乃 理名、本日は**『狐の嫁入り』というビックイベントがあり、調理の人手が足りないからと、緒妻社⻑**の命によりお手伝いに参上いたしました!」
志織は苦笑いしながら言った。「私も……配膳のお手伝いい位はできるかと思ったのですが……。バイトの子達の方が優秀そうですね……」とハハッと笑った。
憂は、それを聞いて**志織に視線を向け、結論を突きつけた。
「という事で、志織ちゃんは、そこの稲穂ちゃんと亜都ちゃんと一緒に『狐の嫁入り』を見てきなさい。比較的、お客さんが少ない時ならお手伝い程度なら許せるけど……こんな楽しそうなお祭り日和なのに、小学生位の少女たちに仕事をさせるつもり?それこそ、ブラック企業と呼ばれるわ」と、ハハハと笑った。
「志織**ちゃん、今日は保護者役ね。あと、私は何人か門前商店街の人や近所に友人が住んでるから顔でも見てくる。それじゃあ、宜しく!」
「ちょ、ちょっと……社長!」
志織は慌てふためいたが、**憂**は構わずに踵を返し、厨房にも入らずに、いつの間にか店から一人で出ていってしまった。
志織は、緊張した声で稲穂と亜都に声をかけた。「い、稲穂ちゃんも亜都ちゃんも、ま、そういう事だから、今日は理名お姉ちゃんではなくて、私と遊ぼうか?」
稲穂は、小声で亜都の耳元に囁いた。
「亜都ちゃん、どうする?どちらにしても、ここのいるお客さんはほとんど、**『ウカノミタマ様』**の眷属だから問題はないけど……」
亜都も同様に小声で返した。
「とりあえず、美琴さんに聞いてみようか?」
事の次第があまりにも急展開しすぎて、美琴は茫然と無言になっていた。
「美琴さん?」
稲穂に急に声を掛けられ、美琴は驚いた声を出した。
「はいいいっ!あの……今日は……」
雫は、美琴を安心させるように言った。「美琴さん、今日は理名ちゃんも来てくれたし、お客さんも凄く多いから、**『志織』ちゃん**に見てもらって良いと思うよ。彼女は責任感のある真面目な子だから」
「はあ……分かりました」
美琴はため息をつき、皆を見渡した。
「祈里さんも、神那さんも、沙希さんもいいよね。店長のおっしゃる通り、**志織**さんに稲穂ちゃんと亜都ちゃんを任せましょう」
神那は、皮肉を込めた感じでゆっくりと返事をした。
「了解です!」
祈里は笑顔で二人を見送る。
「二人も楽しんできてね!このお店の接客は沙希ちゃんと私の二人に任せなさい!」
沙希は、オドオドしながらも二人を気遣った。
「二人とも**志織**さんを困らせちゃだめだよ」
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




