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真説・おとぎ前線 【小説版】  作者: 久遠 魂録


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巫女と二つ目の編みぐるみ

★関連する各作品は公式サイトとYoutubeチャンネルほか、twitterほかでも公開しています。また、この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しております。

店の奥から、呆然とした様子の雫が戻ってきたとき、入り口のドアが開いた。

「雫さん、お客さんです」

隣の煎餅屋の亀さんが、扉を抑えながら声をかけてきた。

「(不思議そうな声で)お客さん?」

「神社の巫女をされてる葵さんです。宮司さんの娘さんの……」

亀さんに促され、一人の女性が店内に足を踏み入れた。白い肌に、キリッとした眼差しを持つ、清楚な雰囲気の女性だ。

「こんにちは。私、鍋島なべしま あおいといいます。突然、お伺いして失礼します。(怪訝そうな声で)あなたが碧海さんですか?」

葵は、店の奥にいる神族の少女たちを一瞥し、すぐに雫に視線を戻した。

「え、はい。私が碧海です。今度、こちらのお店を商店街の方でオープンさせていただきます。宜しくお願い致します」

雫は、いつものようにややきょどりながらも、丁寧に応対した。

「今日は、碧海さんにお渡しするものがあって、こちらにお伺いしました。これです」

葵が差し出したのは、小さな包みだった。

「狐、……(非常に驚いた声で)狐の編みぐるみですか!?」

それを見た瞬間、店内にいた神族の少女たちから一斉に声が上がった。

祈里:「うえっ」

神那:「えっ」

美琴:「こ、これは……」

雫は、昨晩狸の編みぐるみが喋るのを見ていたため、全身に悪寒が走った。

葵は、店内の少女たちに視線を向け、静かに言葉を続けた。

「夢を見ましたの。あと、この四人の方……人間ではございませんね」

沙希は、その言葉に思わず身を縮めた。

「この"編みぐるみ"もまさか……」

沙希の言葉に、雫は再び店の奥にいる四人を振り返った。

「うっ、うーーーーーん」

雫は、混乱しすぎて言葉にならない呻き声をあげた。

「私は稲荷神社の宮司の血脈にあるもの。それぐらい分かります」葵は動揺することなく言った。「そして、私には夢見ゆめみのチカラがあります」

「葵さんは何と夢で神様と話ができるんだよ」亀さんは、興奮気味に説明した。「宮司さんの家系の人の中に、たまにそういう力をもった人が生まれるって親父が言ってた。神様いうより予言者みたいな感じしか俺に分からないけど。今までも色々なことを当ててきてるんだよ。災害がおきるとか、商店街の誰かがケガしてるから早く救急に電話してとか……言われた事、全部当たってるんですよね。俺、神社の参道内にずっと住んでるけど、神様もあまり信じてなくて……(へへっ)。でも葵さんの話だけはマジであたるっすよ!」

亀さんの興奮を静めるように、葵は凛とした声で語った。

「亀さん、私は予言者ではありません。ウカノミタマ様やほかの神様たちが、私の夢の中に降臨されて、お告げをされていくのです。私はそれに従ってるだけ。そして、昨晩も私の夢の中にウカノミタマ様が現れました」

彼女は、静かに店内の扉を指さした。

「この門前商店街内にあるおとぎ前線が開かれた。だから、**これをそこにいる私の娘たちに渡しなさい……**と」

葵は、手のひらの上の小さな包みを見つめた。

「そして、この**"小さな狐の編みぐるみ"**が私の枕元にありました。だから、ウカノミタマ様の言われる通り、この編みぐるみをこの場所に持ってきました。それだけです」

「何か……可愛いすけど普通の"狐の編みぐるみ"すよね?葵さん?」亀さんが不思議そうに尋ねた。

「この皆様は何か分かる筈です。私が今回受けたお告げはこれをお渡しする。それだけです。それでは失礼します」

葵は、踵を返し立ち去った。亀さんは、一度軽い会釈をして、慌てて葵の後ろを駆け足でついていった。

静まり返った店内には、動かない雫と、狐の編みぐるみを凝視する四人の神族の少女たちだけが残された。

読んで下されば嬉しい限りです。

心機一転、無理せずマイペースで連載します。

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