表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/117

帰路へ…

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

時刻は深夜二十五時(午前一時)頃を過ぎていた。


命婦大神(みょうぶたいしん)美琴(みこと)沙希(さき)亜都(あと)稲穂(いなほ)の五名が、静かにその部屋へと足を踏み入れた。


「い、祈里(いのり)ちゃんいますか〜?」

沙希(さき)は、部屋の入り口から、いつものようにオドオドと声をかける。

部屋の隅にある作業台の上には、ほぼ出来上がったばかりの**角隠し(つのかくし)**が丁寧に置かれていた。その傍らでは、祈里(いのり)が、いつの間にか来ていた神那(かんな)と会話を交わしている最中だった。


祈里(いのり)も**角隠し(つのかくし)**の制作作業は無事終わったみたいね」

神那(かんな)は安堵の表情を見せた。


祈里(いのり)は、疲労を滲ませながらも明るく答える。


「何とかね〜、今回は一つだけ縫えばよかったから……」

彼女はそこで言葉を切り、来訪者の中に沙希(さき)の姿を認めると、ぱっと顔を輝かせた。


「あっ! 沙希(さき)ちゃん……」


「あっ! 沙希(さき)

神那(かんな)は突然の訪問に驚き、そこにいる全員の名を口にした。


命婦大神(みょうぶたいしん)様、美琴(みこと)さんも、亜都(あと)ちゃんに稲穂(いなほ)も……」。

美琴(みこと)は柔らかな笑みを浮かべた。


祈里(いのり)さんも神那(かんな)さんも、作業は終わったみたいね!」


「はい。先程、何とか**和箪笥(わだんす)**の飾り作業が一段落しました」

神那(かんな)が報告した。


祈里(いのり)はやや興奮した声色で、自信作を指し示す。

「私も**角隠し(つのかくし)**できました! 我ながら会心の出来上がりです」。


沙希(さき)さん、祈里(いのり)さんも神那(かんな)さんもいて良かったわね」


美琴(みこと)が優しい声で言った。


「は、はい」沙希(さき)は頷いた。


その横で、稲穂(いなほ)がひそひそと独り言を漏らした。

「これで、いつものメンバー勢ぞろいって事ね」。


稲穂(いなほ)ちゃん、何か言った?」亜都(あと)が聞き返す。


**稲穂(いなほ)**は咄嗟に否定し、苦笑いする。

「な、なんでもない。独り言だから。独り言」


美琴(みこと)は、改めて二人に休むように促した。


祈里(いのり)さんも神那(かんな)さんの作業が終わったのなら、もう、前線カフェ(ぜんせんカフェ)の方に先に帰っていいわよ。『狐の嫁入り(きつねのよめいり)』の日まで、あと一週間。しかも、昼間の神社内で人間達と混じりながらの婚姻の儀式……失敗は許されないの。だから、十分、休める時は休みましょう」


美琴(みこと)さんは?」

祈里(いのり)が心配そうに尋ねた。


「私は少なくとも**神気(しんき)があるから大丈夫よ」

美琴(みこと)は言い聞かせた。


「この衣装工場(いしょうこうじょう)**の責任者としても『ウカノミタマ』様より拝命されているから、日が昇るまでは他の方達の衣装製作の進行の指示をしないと……」


「私も、お手伝いします」

神那(かんな)は即座に申し出た。


「私も、神那(かんな)ちゃんと同じ」

祈里(いのり)も続いた。


沙希(さき)もオドオドとしながらも、自分にできることを探した。

「私にもお手伝いすることはないですか?」。


命婦大神(みょうぶたいしん)は、威厳のある声色で、その申し出を丁重に断った。

沙希(さき)様、亜都(あと)様は『ウカノミタマ』様の大事なお客様ですので、お手伝などはご無用です」


彼女は一呼吸置いた後、全員に向けて告げた。

「そろそろ**丑三つ時(うしみつどき)**になりましたのでそろそろ……稲穂(いなほ)!」

稲穂(いなほ)は、力強く「はい!」と返事をした。


御二方様(おふたかたさま)前線カフェ(ぜんせんカフェ)の方へ……そして、美琴(みこと)祈里(いのり)神那(かんな)の三名も一緒に戻りなさい」

命婦大神(みょうぶたいしん)は、一気に指示を出した。


「今晩は私が、この工場の様子を見ましょう。あとは従者方の衣装を残すのみ。そんなに難しい作業は残っていません。わたくしも久方ぶりに昔の事を思い出しましたわ!」

彼女の瞳には、かつて自身も針を持った時代の懐古の情が宿っていた。


「し、しかし……」

美琴(みこと)は焦りの声を上げた。


命婦大神(みょうぶたいしん)は、その懸念を遮った。


「『狐の嫁入り(きつねのよめいり)』は一週間後、まだ明日もあるのですから……。手が空いた祈里(いのり)神那(かんな)も、他の者達の補佐は明日に改めて、沙希(さき)様、亜都(あと)様と今晩は**前線カフェ(ぜんせんカフェ)**に戻り、ゆっくりお話しでもしていなさい……」

亜都(あと)は安堵と共に感謝を述べた。


命婦大神(みょうぶたいしん)様、ありがとうございました。良かったですね沙希(さき)様」


命婦大神(みょうぶたいしん)様、本日は大変、勉強になりました。ありがとうございました」

沙希(さき)は、オドオドしながらも深々と礼をした。


祈里(いのり)神那(かんな)も、その温情に甘えることにした。

命婦大神(みょうぶたいしん)様、ありがとうございます。お言葉に甘えます」祈里(いのり)


「私も祈里(いのり)と同じく。命婦大神(みょうぶたいしん)様、ありがとうございました」と神那(かんな)も続く。

命婦大神(みょうぶたいしん)は、最後に美琴(みこと)に向き直る。


美琴(みこと)も行きなさい……」。

一瞬の間を空けて、彼女は上品に、ふふふと笑った。


「それとも、わたくしに任せるのが心配なのかしら」。


「いえ、そういう事では……」

美琴(みこと)は焦り声で弁明した。


「では、早々に行きなさい」

命婦大神(みょうぶたいしん)は促した。


「**『おとぎ前線』**も今晩は誰も監視すべき者もおらぬ故、そのままでは心配ですから……」。


「はい。分かりました」

美琴(みこと)は頷いた。そして、皆を振り返る。


「それでは、みなさん、**前線カフェ(ぜんせんカフェ)**へ帰りましょう!」


沙希(さき)ちゃん、今晩はゆっくりお話ができるね」

祈里(いのり)が嬉しそうに言った。


「そうね」

沙希(さき)も微笑み返した。


神那(かんな)が、すかさずツッコミを入れた。

「あなた達。昼間は毎日、飽きもせずに床几台の上で話してるじゃない」。


「それとこれとは別なの」

祈里(いのり)は負けじと反論する。

沙希(さき)は、そんなやり取りを微笑ましく見つめながら、皆を誘った。


稲穂(いなほ)ちゃんも亜都(あと)ちゃんも楽しかったね? それじゃあ、行こうか?」


「はーい」

稲穂(いなほ)は元気よく返事をした。


亜都(あと)ちゃん、帰ろうか、うちに……」


亜都(あと)も親友と帰ることに喜びを感じていた。

「うん、一緒におうちへ帰ろう……」。


五人の少女たちは、**命婦大神(みょうぶたいしん)に見送られながら、夜の奥の院(おくのいん)を後にし、前線カフェ(ぜんせんカフェ)**への帰路についた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ★★★ブクマ・ポイント評価お願い致します!★★★


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ