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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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狐神族、眷属達の役目…

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

場所は稲荷神社(いなりじんじゃ)奥の院(おくのいん)周辺。時刻は深夜十一時三十分頃。


一同は**「おとぎ前線」**を通り抜け、社通し(やしろとおし)を使って一気に奥の院(おくのいん)へと到着した。周囲は濃い闇に包まれている。

到着するやいなや、祈里(いのり)は元気いっぱいに手を振った。

沙希(さき)ちゃんも、亜都(あと)ちゃんも、またしばらくしたら会おうね♪ 稲穂(いなほ)ちゃんもだよ!」

祈里(いのり)はそう言い残し、暗闇の中へと姿を消した。


亜都(あと)はオドオドしながら、命婦大神(みょうぶたいしん)に尋ねる。

「あ、あの……祈里(いのり)ちゃんは?」

命婦大神(みょうぶたいしん)は、たおやかに答える。


祈里(いのり)は新婦の嫁入り道具を準備しておりますわ。

嫁入り道具と言っても、この山全体から採れる鉱物や植物を使って、昔ながらの全て手作業で作っておりますから、時間がかかりますのよ。神那(かんな)?」


「はい! 命婦大神(みょうぶたいしん)様」


祈里(いのり)は何を作る担当だったかしら……」


祈里(いのり)は**花嫁衣裳(はなよめいしょう)を作る担当で、『角隠し《つのかくし》』**を一人でつくっております」神那(かんな)が答える。


命婦大神(みょうぶたいしん)はフフッと軽く思い出し笑いを漏らした。


「そうだったわね。作業は眷属の中ではとても遅いけど、仕事は意外と丁寧なのよねぇ、あの子は……。神那(かんな)、あなたは**『和箪笥わだんす』の装飾作り**でしたわよね」


「はい。覚えていてくださって光栄です」

神那(かんな)は恭しく応じた。


亜都(あと)が、もう一人の名を挙げた。「では、美琴(みこと)さんは?」


命婦大神(みょうぶたいしん)は静かに、しかし威厳を込めて語り始めた。


「彼女は『ウカノミタマ』様の眷属とはいえ、わたくしと同じく神気を持つ立場。ああみえても次世代の『ウカノミタマ』様の称号を得るに近い者なんですのよ。普通は、あちらの神那(かんな)祈里(いのり)を指導する立場の者。まるでお友達のように振舞ってますから、そろそろ気を引き締めて指導者としての威厳を見せないと……」

そして、視線を稲穂(いなほ)に移した。


稲穂(いなほ)?」

稲穂(いなほ)は、その威圧感にやや恐怖におびえた声で「は、はい!」と返事をした。


「あなたが美琴(みこと)の指導を受けているのも、美琴(みこと)が次世代の『ウカノミタマ』様の称号を得たその時に、最も近くにいる忠実な側近の一人として、役に立てるようにとの『ウカノミタマ』様の御気持ちの顕れなのですから、ちゃんと精進するのですよ!」


「分かりました……」稲穂(いなほ)は、恐怖におびえた声色でか細く答える。

命婦大神(みょうぶたいしん)は満足げに頷いた。


「では、御二方(おふたかた)、一つご案内いたしまわね。稲穂(いなほ)もわかりましたね!」


「はい。御付(おつ)きします」

稲穂(いなほ)はいじけ気味に答えた。

そんな稲穂(いなほ)の様子を、亜都(あと)は心配そうに見つめ、彼女に近づき耳元でささやいた。

「本当にごめんなさい。こんな事になるとは思わなかった。稲穂(いなほ)ちゃんが退屈そうだからという気持ちで、祈里(いのり)さんにお願いしただけなのに……」

稲穂(いなほ)も耳元でささやき返した。


「いいのよ。どちらにしろ、いつかは私もこの場所に来なければならなかったから……。少し早まったけど……勉強になってるから……。亜都(あと)ちゃんも謝らないで。大丈夫……ちゃんと今晩は黙ってついていくよ」


「わ、分かった。でも、本当にゴメンね」亜都(あと)は申し訳なさそうに言った。


ひそひそ話をする二人に、沙希(さき)が近づいてきた。彼女はオドオドしながら声をかける。


稲穂(いなほ)ちゃん、亜都(あと)ちゃんも、はやく命婦大神(みょうぶたいしん)様のあとについていこうよ」


「は、はい。申し訳ございませんでした、沙希(さき)様。稲穂(いなほ)ちゃんも行こう」

亜都(あと)は慌てて応じ、稲穂(いなほ)を促した。


「うん。分かった」稲穂(いなほ)は小声で答えた。


亜都(あと)稲穂(いなほ)のやり取りを見ていた命婦大神(みょうぶたいしん)は、一瞬稲穂(いなほ)に厳しい視線を浴びせたが、すぐに平常の表情に戻した。


「さあ、沙希(さき)様と亜都(あと)様の御二方(おふたかた)様、こちらへ……。まずは、もう婚姻の日に近いので、余りいないとは思いますが、狐神族(きつねがみぞく)の殿方の集まる場所へ向かいましょう」


「殿方……。男性の方ですね。私、『ウカノミタマ』様の眷属は女性しか見たことなくて……」

亜都(あと)は驚いた。


「そうですね……。余り殿方は稲荷神社(いなりじんじゃ)内にはいらっしゃいませんね」

命婦大神(みょうぶたいしん)は頷いた。


「それぞれの摂社を守る者以外は、近隣の神社の眷属達が勝手に侵入しないように、結界周辺にまんべんなく警護はしておりますのよ。ただ、最近は……」

亜都(あと)は心配そうに身を乗り出した。


「さ、最近は……何かあるんですか?」

命婦大神(みょうぶたいしん)はフフッと軽く思い出し笑いを浮かべた。

「猿に手を焼いております」


「さ、猿ですか?」


「参道にある商店街なる人間が集まる場所に餌を狙いに……。こちらは本来は**猿田彦(さるたひこ)様の管轄なので、我々は何とも言えませんが……。まだ、被害も小規模ですし……。おそらく、参道に人が少ないので餌**を狙う機会が増えたからなのでしょうね……」

命婦大神(みょうぶたいしん)は、優雅な足取りで、三人を導いて闇の中を歩き出した。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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