神様、嘘つかない…
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
稲荷神社の手水舎前。時刻は午後四時前頃。
手水舎の前に立つ白に、巫女の葵が丁寧な作法を案内し始めた。
「では、白様。この手水舎には正しい作法を僭越ながらご案内させていただきます」
葵は柄杓の取り方から説明する。「まず、右手で柄杓を取り、こちらの清水を汲んで左手にかけ、左手をお清め致します。次に柄杓を左手に持ち替えて、同じように右手をお清めいたします。ここまでは、大丈夫でしょうか?」
「分かった。こうだな」
白は、葵が説明する作法通りの動作を、一切の躊躇もなく流れるように行う。
「白様、誠に素晴らしいお手並みでした。それで、次に進みますね」
葵は感嘆の声を漏らした。白は先を促す。「葵、お願い」
「はい。左手にお持ちになられた柄杓を右手に持ちかえて、左手のひらに水を受けて、今度は口をすすぎます」
「水を口に含んで口をすすぐのか?」
白が確認するように尋ねると、葵は微笑んだ。「はい、そうです。お口をすすぎ終えたら、もう一度、左手を水で流してくださいませ。そして、柄杓置きに柄杓を伏せて置いたら、これで『ウカノミタマ』様へお会いする前の正式な作法は終わりでございます」
白は、葵の言葉の通りに水を口にすすぎ、柄杓で左手を流し、そして柄杓を柄杓置きに伏せて置いた。
「これでいいか。葵」
「はい。はじめてとは思えない無駄のない動作……私がいうのは大変おこがましいのですが、美しい所作でございます」
白は礼を述べ、しばしの間、横に立つ慶を見つめた。「ありがとう。慶はしなくていいのか?」
慶は少々困った表情と声色で首を振った。「いや~ね。これは人間が『ウカノミタマ』様へお会いする前の正式な作法だからね。『ウカノミタマ』様へ思いを伝える為に必要な、一時的な小さな加護を授かるための儀式なんだよ。私たちは、位の差はあるけど神様同士だから、そんな儀式は本当は必要ないのさ」
慶の言葉を聞いた白は、彼をきつく睨みつけた。
「慶、嘘をついたな? 神様は嘘はつけないはず!」
「OH~OH~よくよく思い出してごらんよ。私は何も嘘は言ってない」慶は冗談交じりでハハハと笑った。
「紅!……慶、酷い……」白が訴えるように紅を見た。
紅は穏やかに言った。「白、慶も悪気はないはず。許してあげて」
「紅……慶に甘い……」
慶は少々困った表情と声色で弁明した。「は、白、アイムソーリー。ゴメンね。ウチもジャパンの神だけど、元々はキャラクター人形。それもジャパンじゃない国の人形から神様になってるから……。古の御神様達のしきたりは“知ってはいる”けど……そもそも人間でないから、やったこともないんだよ」
白は容赦なく命じた。「じゃあ、ジャパンの神として勉強する為に一度してみて」
「わ、わかったよ……」慶は観念した。
慶は、たどたどしい動作で手水舎の作法をこなしていく。
そして、口に含んだ水を**「ペッ!」と、やや下品に吐き出した。その後、大雑把に柄杓で左手を流し、柄杓をバンと強く**柄杓置きに伏せて置いた。
「白、これで良いだろう?」
「慶、下品……。何だか神様らしくない。少し上品にする……」白は顔を顰めた。
その様子に、我慢していた笑いが葵からこぼれ出て止まらなくなった。「ふふふふふ……」
「あ、葵、笑うな!」慶が叫んだ。
葵は笑いを耐えつつ謝罪した。「た、大変、申し訳ございませんでした」
「慶様、白様、それでは参りましょう」しばらく間をあけて、葵は気持ちを切り替えた。「その神池と楼門を過ぎれば直ぐに、紅様の摂社でございます岩崎大社へと通じております」
葵は、手水舎の左手にある赤い橋が架かった楼門を指さして説明した。
慶は楼門の様子を見て言った。「葵、楼門っていうのは、あの門の事だろう? 何か人がごったがえしてるぞ。しかも若い人間の女性が多いな……」
紅は不吉な予感を抱きながらも言った。「益々、嫌な予感がするが、私とは関係ないこと……。では、白も慶も行こうか!」
葵と「IS:T」の四名は、赤い橋を渡り楼門を通り抜けた。そして、直ぐに見える**紅の摂社である岩崎社**の方へ視線を向けた。
紅は摂社の方を一目見て、放心状態になった。
白は目を見開いて声を上げた。「べ、紅! あれって……」
慶は状況を理解できずに言葉を失い、あちゃ~と声を漏らした。「あちゃ~。なんじゃあこりゃ? OH~MY! ゴットット……あっ! ウチもゴッドだった」苦笑いがこぼれた。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。




