カレー、縁結び、そして三柱神
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
佐賀県鹿島市・前線カフェ。オープン後一か月後。午後一時前後。
「IS:T」の三名――慶、白、そして紅は、おとぎ前線の扉を通って帰還した後の時間、店の奥にある座敷で昼食をとっていた。全員の目の前には、前線カフェ特製のカレーが置かれている。
「鯉料理を期待してたけど、これも悪くない。意外と美味いな、このカレー」慶は満足そうに口にした。
「カレー。これはインドのとは違う。これはジャパンのカレー?」白は、熱々のカレーライスをゆっくりと味わいながら尋ねる。
「白、これはれっきとしたカレーだよ! (少し間を空けて)あ〜、"インド"のカレーとは違うな……。そうそう、これはジャパンのカレーだよ。この熱々のご飯にかけたスパイシーなルーがたまらない。しかも、これは正真正銘のジャパンのカフェ! 昔ながらの喫茶店のカレーの味だよ。懐かしいね〜え♪」慶は、懐かしさに浸るように呟いた。
隣で話を聞いていた美琴は、驚きを隠せずに尋ねた。「け、慶様と白様は、あの……インドに行かれたことがおありなんですか?」
「それは勿論」慶は自信満々に胸を張った。「インドどころか世界中のカレーというカレーは食べたね!(しみじみと回想しながら)いや〜あの時もハチャメチャな旅だったな……」
紅が苦笑しながら美琴に説明を加える。「美琴さん、ちょっと、ここに帰る間にね……一か月ほどJOYTRIPしてたんだよ。私達三人で……」
「ジョイ トリップですか? それは一体?」美琴が問い返す。
「最後の修行の旅ってことかな……。ほら、私、歌でみんなの幸せを与える神様になりたいからと、二十年前にウカノミタマ様に頼み込んで、外国の神様達の所へ修行の旅に行ったでしょう?」
「(察してはいるものの冷静に)は、はい。そうでした。紅様は元々、この地の伝承語りを歌で人間に伝える御神……」
「い、いや……。もう今の状況は分かったから良いけど」紅は少し気まずそうに話を遮った。(しばらく間を空ける)「私が末席とはいえ歌を司る神であることは変わらない。あんな状況になってるのは……」
紅は黙々と無言でカレーを食べる白の姿へ一度視線を向け、すぐに美琴へ目線を戻した。
「私の摂社……岩崎社が”縁結びの神様”って噂された時期と……白や、そこの慶と**「IS:T」**を結成したのと同時期なんだよ」
紅は再び、同じテーブル上で小さな口でカレーを食べている白を見つめた。
「白は海外の神様……天使って呼ばれているの。ケルビムって名前が本当の名前だけど、別名でキューピッドって呼ばれている本当の縁結びの天使なんだ。だから、私と慶と**「IS:T」を結成した時に、二柱の力が私の摂社に影響を与えたんだと思う……。白、そして、幸運を呼ぶ”ビリケンさん”**と呼ばれている慶の力が混ざり合って、私を通じて摂社に力が自然に流れていったんだと思う。ウカノミタマ様なら真実をしっているとは思うけど……私の未熟な力では理由は分からない……」
美琴は、新たな情報に頭が追いつかず、「イズティー……。どのような意味の名前なんでしょうか?」と尋ねた。
「(恥ずかしそうな声色で)イズティー。私が修行に行っていた外国の言葉、アルファベットでI、S、T」紅は頬を染めながら説明した。「IとSは私の摂社の名前**「岩崎」、Tは、私がいつかウカノミタマ様みたいな大きな神”、つまり「大神」になるまで頑張る意味を込めて「T」と名付けたの**」
美琴は絶句した。「はあ……」
「ど、どうした美琴?」
「いえ、紅様はご不在の時から既に人間達の間で**「岩崎大神」**と奉られておりますので……」
慶は、もはやカレーを飲み物のように食べながら、声を上げた。「良かったなー紅。もう、名前負けしてないぞ!」(聞こえないように小声で)「いや……最初あった時から”小さな摂社の…”なんて信じられなかったから驚きはしないけどさ」慶は、ペロリと舌を出し、愛嬌を見せた。
紅は首を横に振る。「いいや、私はまだまだ力なき末席の神。**「大神」**の称号も仲間になった白や慶の力のお陰だよ。いつも、ありがとう。慶、白」
「いや、これは紅の本当の力……。私の力は関係ない」白は静かに否定した。
「はい! 私も白と同じ意見……。紅、(甘ったるい声で)紅さ〜ん、いつも自分を過小評価し過ぎで〜す」慶はハハハと大笑いし、続けた。「紅、本気で神気を開放した事ある?」
「い、いや……(しばらく間を空ける)常に神気はギリギリまで抑え込んでるけど……。勿論、これも修行の一貫……。どんな時にも歌の力で皆を幸せにしたいから……」
「(かなり呆れて)へ、へえ……。それでもギリギリまで神気を抑え込んでるんだ……へえ……」慶は小声で呟いた。「とんでもない事になったな……マジで勘違い神もここまでくると凄いよ!」
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。




