営業危機と雫の嘆き
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
佐賀県鹿島市・前線カフェ。オープン後三週間。正午頃。
店内のテーブルに座る稲穂は、ふーっと大きなため息をついた。
「暇~」
向かいの席の亜都も、残念そうに同調する。「そうね……暇」
厨房から出てきた雫は、呆れたように言った。「毎日毎日、同じ事ばかり言ってないか」
「暇だもん」稲穂は即答した。
亜都も「稲穂ちゃんと同じくです」と頷く。
「まあな……」雫は腕を組み、はっきりと認めた。「いつも暇なのは間違いない!」
その現状を打開しようと、美琴が声を上げた。「て、店長! 何かこうお客様がくるいい案でもみんなで考えませんか?」
「そうね。暇、暇って言う時間を有効に使わないと……」神那も美琴に同意する。
彼女は視線を店の外に向けた。
「それにしても……いつもの二人は……」
いつものように、店の前にある赤い布が被せられた床机台には、**祈里と沙希**が並んで座り、ぼーっとしていた。
「平和だね……沙希ちゃん」祈里がのほほ~んとした声で呟く。
「はい。平和です」沙希は穏やかに答えた。
「この床机台に座って、この参道へと続く静かな商店街を眺めながら、日向ぼっこできるこの幸せ……」
「はい!」沙希は嬉しそうに頷いた。
店内のメンバーが呆れる様子をよそに、神那はゆっくりと外へ出た。そして、平和を満喫する二人に対し、怒声を浴びせる。
「祈里!そして、沙希!」
沙希は驚き、ひきつった声で「は、はい!」と飛び上がった。
だが、祈里は特に何事もないように、神那をなだめる。「神那ちゃん、怒らない、怒らない」
「お客さんが来ないのは、本当に**死活問題**なのよ!」神那はやや怒鳴るような声になった。
「分かってるよ……」祈里はいじけた声で言った。「でも、仕方ないよ。こんな閉まってる店しかない商店街に来ても人間達は楽しくないでしょ?」
「どうしようもないのは私も分かってる。でも、何かしないと変わらないでしょう?」神那はため息をついた。「稲荷神社には毎日毎日沢山、お客さんが来るのに、本当にここには来ない……。私たちは、**"おとぎ前線"の監視が本当の仕事よ。でも……この"おとぎ前線"**があるこのお店が潰れてしまうと、それどころでもなくなるわ」
神那は少し間を空けて、改めて説得した。
「だから、どうしたら、お客さんが来るか美琴さんが話し合いをしましょうって言ってるのよ」
「分かった……沙希ちゃんも……」
祈里と沙希は、ゆっくりと床机台から重い腰を上げ、店内へと戻った。
「やっと来たか……」雫は二人を迎え入れた。「じゃあ、とりあえず、このお客様が来ない現状をどうするべきか皆で考えてみよう」
美琴は、議論の方向性を決めた。「私が思うのは、まず、この**お店の場所**です」
「それは仕方ない。ウチの社長が決めたことだから文句は言えん」雫はそれを却下し、次の意見を促した。「次は……神那!」
「**シャッターばかり**の商店街で魅力がない」神那は現実的な問題点を指摘した。「駐車場の問題は仕方ないとしても、魅力的なお店があれば、お客さんは必ずやってくる」
雫は神那の意見に同意する。「そうだな。亀さんやウチが頑張っても他の**お店の大半が閉まって**たりしていたら、誰もこないな……」
雫は少し間を空け、祈里を指名した。「じゃあ、次は祈里」
祈里は非常に悩んだ声色で、場違いな答えを口にした。「う~~~ん。商店街のみんなが歳をとったから」
「(呆れた声で)はい却下」雫は即座に切り捨てた。「次は沙希、なにか思うところはあるか?」
沙希はオドオドして口を開いた。「わ、わたしは……」
「(意外な驚きで)おっ! 何か思うことがあるのか?」雫が急かす。
「わ、わたしは……」沙希は言葉を詰まらせた。
「わたしは?(急かすように)それから……なんだ?」
沙希は顔を赤くして、小さな声で言った。「わ、わかりません……」
雫は心の底から残念な声で大きなため息をついた。「は、はあ……。兎に角だ。気を取り直して、稲穂や亜都も何か言いたいことはあるか?」
稲穂は椅子にもたれかかり、「ない!」と答えた。
亜都も「私もです」と追随する。
「そうだな……」雫は呟いた。「人間ではないにしろ、十歳の女の子たちが、さびれゆく商店街の危機なんて分かる訳ないか……」
祈里が、議論の矛先を店長へ向けた。「てんちょー、それじゃあ店長はどうおもってるんですか?門前商店街の事?」
「そうだな……」雫は少し考えた。「一部はとんでも発言だったが、皆が言った事で間違いないと思う。でも、どうにかしないといけないんだ」
雫は、深刻な経営状況について打ち明けるため、少し間を空けた。
「ウチの会社は、この店の損を補填するほどの余裕がある訳でないからな。(きっぱりと)大体、本来、**専務の私が店長**してるほど、会社に余裕はない!」
雫は深く息を吐いた。
「それに……この大所帯……(しばらく間を空ける)客は来ないがお前たちの食費はかかるからな。神様の眷属って最初は聞いたから、仙人みたいに**霞**を食うとか、食事しなくても良いとか思ってたが、そんなところは人間と同じなんだよな……」
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。




