突然の異国からの訪問者
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
佐賀県鹿島市・前線カフェ。午後三時。
相変わらず、店内の空気は静まり返り、稲穂たち六人の眷属は暇を持て余してテーブルを囲んでいた。奥の厨房では、店長の碧海 雫が淡々と作業を続けている。平日の昼下がりは、観光地であるにも関わらず、まるで時間が止まったかのようだ。
その静寂を、隣の老舗煎餅屋「鶴亀商店」の亀さんが、店の扉を勢いよく開けて入る音と、慌てた声が破った。
「あ、あ、雫さん、いますか!」
カウンターから奥を覗き込んだ祈里が、「店長、亀さんが来たよ」と声をかける。
雫は手を拭き、ゆっくりとカウンターの方へ向かった。彼女の落ち着いた動きとは対照的に、亀さんは息を切らせ、興奮気味だ。
雫は尋ねた。「亀さん、どうしたんですか? 慌てて……」
亀さんは、店員たちに向けて身を乗り出し、大声で告げた。
「来ましたよ団体客が! 外国の方達がしかも大勢! 参道の真ん中まで接近してます。普段はありえないことだ! この参道の真ん中まで来るかもしれないですよ! 俺もスタンバっておきますから、雫さん達もスタンバっておいた方がいいかもです。じゃあ!」
亀さんはそれだけ告げると、急ぎ足で自分の店へと戻っていった。
亀さんの興奮につられ、稲穂たち六人の眷属も一度店の外に出て、参道の様子を窺う。シャッターが目立つ寂しい通りを、大勢の集団がこちらに向かって歩いてくる光景は、ゴールデンウィーク以来のことであり、皆の表情に活気が戻った。
稲穂が興奮の声を上げた。「おーっ、人が沢山!」
「これは本当に沢山、来られてますね!」亜都も驚きを隠せない。
祈里は目を輝かせた。「よーし、何だか気合が入ってきたぞ~! ね、沙希ちゃん!」
「わ、私も頑張ります」沙希も極度のあがり症ながら、この賑わいに意欲を見せた。
神那は、そんな祈里の様子を呆れ半分で見つめた。「祈里の場合は、ただの興味本位だと思うんだけど……。沙希はもう少し緊張をほぐしながら話すことって……」
神那の言葉は途中で途切れた。彼女の視線が、団体客の集団の中の一点に固定されている。整った神那の顔に、わずかな緊張が走った。
(しばらく間をあける)「ん、ん?」
隣にいた美琴が、静かに、しかし緊張感のある声で問いかけた。
「神那さんも気づきましたか?あの大勢の団体客の方が中に数名程、神気を感じますね……。でも、日本の神さまではないみたい」
美琴と神那は、日本の神々とは異なる、強大な異国の神々の気配を察知していた。その団体客は、今まさに「前線カフェ」の目の前へと迫っていた。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。




