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真説・おとぎ前線 【小説版】  作者: かたしよ


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20/32

雫、神の帰還に驚く

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

場所: 佐賀県鹿島市・前線カフェ。

時間: 昼下がり。紅の帰還の瞬間。

紅の二十年に及ぶ不在を語る会話が続いていた、その時だった。美琴がバンと、鋭い音を立ててテーブルを強く叩きつけ、店内の空気を一瞬にして凍らせた。

「皆さん、お話はそこまで!」美琴は焦りの色を隠せず、声を張り上げる。「"おとぎ前線"から誰か来ようとしています……それに、尋常ではない、凄まじい神気です」

神那はその強大すぎる神気に目を見張り、驚愕を滲ませた。彼女はすぐに、神社本殿にいるはずのウカノミタマ様ではないと判断する。だが、その強さと気配は、ウカノミタマ様と酷似していた。

しかし、祈里は、その強烈な振動の中に、長く待ち望んだ温かい響きを捉えていた。「この神気は間違いないよ~♪ 凄い強い神気だけど、懐かしい神気」

「祈里さんの言う通りみたい。あの方の神気だわ」美琴は瞳を鋭くする。「でも、あと二つの異質な神気も感じるから……みんな気を付けて!」

おとぎ前線に通じる扉が、人間の世界ではありえないギュォンという音を立てて激しく軋んだ。まず最初に、屈託のない明るい声が響く。「ただいま~♪」と、陽気な掛け声と共に慶が最初に現れた。

「お帰り~♪(しばらく間をあける)あなた誰?」祈里は喜びながらも、見知らぬ神の登場に首を傾げた。

慶が扉から出た後、優雅な仕草で紅と白が静かに姿を現した。

紅は両手を広げ、心底嬉しそうに宣言する。「ただいま! 私のふるさとS・A・G・A!」

白は紅の背後で、静かに続いた。「ただいま……」

紅の姿を見た瞬間、祈里、神那、美琴の三人の眷属は、その神気の輝きと再会の喜びに震えた。堰を切ったように、目から涙が溢れる。

「お帰りなさ~い。紅さん、紅さんだ! 本物だ~!」

「お帰りなさい。待ってました」

「お帰りなさいませ。紅様……」

三人の感極まる声が店内に響き渡る中、紅は眷属たちから視線を外し、前線カフェ内をゆっくりと見まわした。

紅は二十年の時を経て、この場所が大きく様変わりしたことを指摘する。「二十年……か。大分、ここの**”おとぎ前線”**も様子が変わったね。(しばらく間をあける)ウカノミタマ様は相変わらずのようだ」

慶はカフェの様子に不満顔だ。「紅に聞いてたのとは、本当違うね。鯉料理屋と聞いていたんだけど……。ここは**"喫茶店"**かい? それとも何屋さん?」

その混沌とした状況に、店長である雫が、戸惑いを隠しながらも声を上げた。「し、失礼ですが、あなたたちは?」

美琴はすぐに、店長である雫の態度を厳しく窘めた。神々の前で無礼は許されない。「店長! こちらの紅様は女神さまです。私たちと違いウカノミタマ様の眷属などではありません。申し訳ございませんが、礼儀をわきまえてくださいませ」

雫は眼鏡の奥で目を見開いた。「(驚いた声で)か、神・様!?」

彼女は信じられない思いで、扉から出てきた人物たちを睨む。「だが、突然、扉から出てあの態度だぞ! 特にあの姉ちゃんは!私は初対面です!」

慶は、人間である雫を凝視した。そして、何かを察知したように瞳を大きく見開く。

「あんた人間だけど……WAAAAAAAA! **"あ・い・つ"**の関係者だーーー!」慶は興奮気味に雫を指さした。

紅は声を強め、慶を注意する。「慶、あの御方を**"あいつ"呼ばわりはダメ。絶対ダメ! 名前さえも私たちでは言うことさえ簡単には許されない原・初・の・偉・大・な・る・神・様**だから……」

紅はすぐに雫へと向き直り、詫びた。「失礼しました人間の方。私は紅。稲荷神社の小さな摂社を任されていた力なき神……」

雫は感情を抑え、冷静であろうと努めた。「そうか……紅様はこの稲・荷・神・社の神様なのは分かった。(少し間を空ける)ただ、最近、いつも**"あ・い・つ・の"と言われるが誰なんだ……。神様も名前も言えないってヤ・バ・い・や・つ**か!」

慶は、雫の切実な疑問を笑い飛ばすように答えた。「私の**"足を掻くと幸運が起きる"という噂をながしたヤツ**……。ま、まあ、お陰で結果的には人形の存在から**"神様"になれたから、文句はいえないけど……。とりあえず、はじめましてやね。ウチの名前は慶**……あんた達、人間の世界では**"ビ・リ・ケ・ンさん"**って言われてる」

「"ビ・リ・ケ・ンさん"、あの**"ビ・リ・ケ・ンさん"**?」雫は戸惑いを隠せない。「関西の方にお住いのはずでは?」


「まあね。ウチも世界中に色々と家があるから……。まあ関・西の家もそうやね」

白は静かに、短い言葉で自己紹介を締めくくった。「私ははく。**"ヘブン"**から来た」

<中略。白の出自について稲穂と亜都が驚き、会話が続く。>

紅は、仲間たちの話が終わるのを待って、本題に戻った。


「慶も白も私の仲間。そう歌が好きな大好きな仲間……。ウカノミタマ様にお願いして、異国に歌・の・勉・強に行っていた。誰か教えて欲しい。私の摂社はどうなってる?」


美琴は複雑な表情を浮かべ、紅に摂社の状況を報告した。「紅様の摂社はお宮の方々が奇麗に管理されてますよ。紅様が**"おとぎ前線"**から異国へ勉強に行かれて直ぐの時は普通でしたが……今は少し様変わりを……」


「(苦笑い気味に)な~んだか、嫌な気がする。面倒くさいほうで」慶が呟く。


紅は美琴に深く感謝した。


「美琴、ありがとう。とりあえずはウカノミタマ様にご挨拶にいくよ。そして、摂社に戻るとするか……。ただ、慶の言う通り、ここについてから嫌な気はしてる……。白?」

「何?」白が静かに答える。

紅はその白い天使の顔を見つめ、予感を確信へと変えた。「この嫌な気は白も関係している気がする。先に謝っておくよ」

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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