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真説・おとぎ前線 【小説版】  作者: かたしよ


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18/32

四時ノ循環と帰還の決意

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

場所: パルナッソス山(ギリシア神話の舞台)。

時間: アースガルズから移動直後。

ペガサス二頭が、ギリシアの聖なる山、パルナッソス山の麓に降り立った。

「白ー!」

慶が大きく手を振って呼びかけると、上空からストンと静かに白が地面に降り立つ。パサリと音がし、背中から輝く巨大な翼が跡形もなく消えた。

「パルナッソス山についた。ミ・ュ・ー・ズはどこ?」

白が尋ねるまでもなく、遠くから竪琴と横笛フルートの音が聞こえてきた。

「わざわざ、探す必要もなかったみたい」紅は微笑んだ。

「ミューズの誰かが演奏してるのか?」

「複数の神気を感じる……。フルートの音からして一人は**"女神エウテルペー"に間違いないわね。竪琴は"女神テルプシコラー"か"女神エラトー"**。どちらにしろ、二人とも会いたかった女神……」

「いこうか!」慶が先を急ぐ。

「ええ」

三柱が森を抜けると、陽光が注ぐ広場に九人の女神の姿があった。九柱のミューズ全員がそこに集まり、楽器を弾いたり、会話をしたりしていたのだ。

「あら!」「あら!」「あら!」

ミューズたちは、まるで同じ声であるかのように、異国の客の登場に声を上げた。

「(わざとらしい大きな声で)OH~NO~! 一、二、三、四、ちょうど九人の美しき女神さまが~あ」

慶は九柱全てがいることに、大げさなリアクションを取った。

「あら? 珍しいお客様だこと。お三方とも凄い神気をお持ちで、さぞ高名なかたでしょうけど、私たちに何の用でしょう?」

ミューズの一人が、代表して優雅に尋ねた。

「私の名前は紅。ジャ・パ・ンから来ました」紅は名乗りを上げる。

「ウチの名前は慶です。"ビ・リ・ケ・ンさん"っていわれてる新参者の神様です」慶はヘヘッと笑い、おどけてみせた。

「**"ビ・リ・ケ・ン"様ですってよ」「あの"ビ・リ・ケ・ン"**さま、足・を・掻・くと願い事を叶えるって」「あら! **"ビ・リ・ケ・ン"様、私、"ビ・リ・ケ・ン"様の御足おみあし**を掻いてもいいでしょうか?」「凄い! 凄い! こんな遠方まで」

ミューズたちの興味は一気に慶へと集中した。

「私は白。ヘブンから来た。みんな同じ声……面白い……」

「ヘブンって天使様よね!」「あの御姿は昔、昔、拝見したことがありますわ。第二階位の怖い天使さまでは?」

紅はミューズたちに向き直り、深々と頭を下げた。

「今日はミューズの方にお願いがありやってきました。私は歌が好きなだけのジャ・パ・ンのウカノミタマ様の小さな摂社の一つを任されていた力なき者……。そんな、力なき私に一度だけミューズ様達の歌をお聞かせください」

「力・な・き・な・の・はご冗談を」

一人の女神が、上品にふふふと笑った。

「私の名はメ・ル・ポ・メ・ネ・ー。私も歌うのが大好きなんです」

挽歌の女神、メルポメネー。紅がこの旅で一番会いたかった存在だった。

「(興奮した声で)女神メ・ル・ポ・メ・ネ・ー、一発でキターーーーーーー」

「(怒声のこもった大きな声で)慶!」

紅の怒声に、慶は急にへこんだ。「ソーリー。アイムソーリー、ごめんよ……紅……」

「(ふふふと上品に笑う)私がフルートを」女神エウテルペーがフルートを構えた。

「今回は私が竪琴を弾きましょう」女神エラトーが竪琴を弾き始める。

「エラトーが竪琴弾くなら私は躍らせていただきますわ。**"ビリケン"**様もいかがでしょう。異国の踊りも見てみたいですわ」女神テルプシコラーが誘う。

「ウチが? それじゃあ、(強気な声色で)ジャパンの踊りを見せてあげるわよ!」

慶は、喜んでその誘いに乗った。

「私たちは歌は専門じゃないので楽しませていだだきましょう」「そうよ!」「そうね!」

他のミューズたちも賑やかに声を上げる。

「タレイヤもポリュムニアーも歌うでしょ」メルポメネーは笑った。

「私も歌いたい……」白もそっと手を挙げた。

「それでは紅様。エウテルペーとエラトーが演奏するので、私がそれに合わせてメロディを歌います。それに合わせて歌いましょう。人間の短い人生を四季に例えた挽歌ですわ。『四時ノ循環よつどきのじゅんかん』という歌です。もとは紅さんの国。ジャパンの言葉だとか……」

メルポメネーは、紅の国の歌を歌い始めた。


それは、春の芽生え、夏の情熱、秋の衰え、そして冬の静寂へと続く、命の巡りを歌った、優しくも力強い旋律だった。紅は深く目を閉じ、その歌声と音色を全身の神気に吸収していく。彼女の身体は、サンバやケルト音楽を聞いたときよりも遥かに強く、淡い光を放ち始めていた。

「挽歌……。本来、人の死を悲しみ悼む歌ですが、この歌は挽歌であれども挽歌ではない。運命は四季のように巡りめぐって未来へ続いていくという特別な歌……。この曲をあなたにお贈りします」

歌い終えたメルポメネーの言葉に、紅は深く感謝した。

「女神メルポメネー様、ありがとうございます」

「メルポメネー、素晴らしかったわ!」「紅様も素晴らしかった……」

ミューズの二人が、紅に賛辞を贈る。

「紅様の神気が凄いのですけど……。あれでもまだ今まで力を抑えていらっしゃったのね」

ミューズたちも、紅の神的な力の急激な成長を目の当たりにし、驚きと喜びを込めて笑った。

「紅、歌・の・神の力をどんどん吸収していく。とても強くなってる。凄い!」

白が、その力を冷静に分析した。

「さ~すが、ウチの親友。自分の力にな~にも気づかないあんたはある意味凄いけど……。これじゃあ、どこに行っても目をつけられるぞ! いい加減、この**JOY TRIP!**は終わらせようか?」

慶が、紅の背中を優しく叩きながら提案した。

「そうね、世・界・中の全ての歌・の・神と会ってきたし、もう帰らないとね」

紅は、満足そうに頷いた。

「帰ろう……ジャパンへ。私、紅が敬っているウカノミタマ様に会いたくなった」

「帰ろうふるさとへ。いざ、我がふるさと、S・A・G・Aへ!」

紅の高らかな宣言と共に、IS:Tの三柱は、ミューズたちに別れを告げ、故郷への最後のワープを開始した。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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