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真説・おとぎ前線 【小説版】  作者: かたしよ


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五柱のミューズと天使の翼

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

場所: オリュンポス山脈。

時間: フリッグの宮殿での宴の直後。

ギュィーンという空間が閉まる音に続いて、三柱が降り立ったのは、荒々しい岩肌と薄い空気。そこは、人間がオリュンポス山脈と呼ぶ、ギリシア神話の舞台だった。

山の頂には、風の流れで見え隠れする巨大な主神ゼウスの神殿が遠方にそびえている。

「ここはオリンポス……いにしえの旧き神々が住まうところ……」

白は、珍しく顔を顰めた。

「(少し嫌そうな声色で)享楽の神々、神としてあるまじき行為の数々……。私達、ヘブンの神々と話が合わない神々達の国……」

「まあまあ」慶は白を諫めるように言った。「YOー、紅、ここには誰に会うの?」

慶が問いかけると、紅は一瞬目を閉じ、すぐに閃いたように開いた。

紅と慶の言葉が、同時に重なった。

「ミ・ュ・ー・ズ!」

「(大はしゃぎで)B・I・N・G・O!」慶は飛び跳ねた。

「いにしえから誰もが敬う音楽の女神……。彼女に会わないと……」

「歌姫と呼ばれる人間の女の代名詞にもなってる」白もその名前に反応した。「(珍しく少し興奮した声色で)ここにいるのか」

「いる。ただ……」

「ただ……?」慶が身を乗り出す。

「ミューズは**九柱きゅうばしら**いるんだよね! 九柱の女神の総称」

紅はふふっと軽く笑った。

「(少し驚いた声で)九柱も会いに行くのか?」

「まさか! 私が会いたいのはそのミューズの中の五柱いつはしら。"喜劇"と"牧歌"を司る"女神タレイヤ"、"合唱"と"舞踊"を司る"女神テルプシコラー"、"独唱歌"を司る"女神エラトー"、"讃歌と物語"を司る"女神ポリュムニアー"。そして、私が一番会いたいのは……"挽歌"を司る"女神メルポメネー"。彼女が人間達がミューズを**"歌の女神"**だと思わせてる一番の存在……」

紅は、五柱の女神の名を一つ一つ、正確に列挙した。

「それでも五柱か……。こ~んなところのどこ探せば見つかるのやら……」

慶は遠くにそびえるゼウスの宮殿を、ただ茫然と見つめた。

「テレパシー……」

白は唐突に呟いた。

「白、テ、テレパシーを送れるのかミューズ達に!」慶は興奮した。

「い、いや……送れない。テレパシーは出来るけど……知ってるものか、下位のものにしか送れない」

「(関西弁的なノリツッコミで)それでも、テレパシーはおくれるんか~い」

慶は、白の背中をバンバンバンと強く叩いた。

「け、慶……痛い……」

「ミューズ達はここから南にあるパルナッソス山に住んでいる……」

紅は、はるか南に薄っすらと見える山々を指さした。

「パ・ル・ナ・ッ・ソ・ス・山ってどこって? パルナッソス山に住んでるのを知ってるんなら、なんでここに来たの?」

「ここが一番、パ・ル・ナ・ッ・ソ・ス・山・に・近・い・前・線だから……」

「ち、近いね……」慶はしばらく間をあけた後、ややいじけた声になった。「ここが一番近いんだ……。で、どうやっていくのさ! 空を飛ぶかい? 歩くのは無しだよ! ウチは空を飛ぶのも苦手だし……歩くのも面倒くさい。プリーズ! 白ちゃ~ん」

「何故、私は慶を背負って空を飛ばないといけないんだ……」

「OH! お察しDE~」

そんな二人のやり取りを他所に、紅は空を見つめた。空から生き物らしい物が近づいてくる。

「来た! ペガサス! 白、あのペガサスに向かって、テレパシーをお願い!」

白は、すぐに紅の指示に従った。

「分かった!(心の声=ペガサスよ、私の声が聞こえるなら、こちらに来て)」

白の心の声に導かれるように、更に勢いよく三柱へ近づくペガサスの一群。白、黒と複数のペガサスが近づき、三人の前に優雅に降り立つ。

「(呆れた声で)HEY! HEY! で、どうすんのさ! このペガサス達に頼むの?」

「(心の声=私の名ははく。私たちをパルナッソス山へ連れて欲しい……)」

ペガサスの一頭がヒヒーンと優しく啼いた。

「(心の声=ありがとう。)紅、慶、この子達がパルナッソス山へ連れて行ってくれるんだって」

「白、本当にありがと」

「(僅かに微笑みを浮かべながら)紅、紅が嬉しいと私も嬉しい……」

白の頬に、微かな笑みが浮かんだ。

慶は、そそくさと一頭のペガサスにまたがった。

「ヒーハー! いざ、パルナッソス山。飛べ、飛べーーっ!」

一足先に、慶を乗せたペガサスが天空に上がっていく。続いて紅も別のペガサスにまたがった。

「パルナッソス山まで頼むね。宜しくね!」

紅はパンパンと優しくペガサスの背中を叩く。紅を乗せたペガサスが天空へと上がってゆく。

その様子を、白はただ見つめていた。

「私もいく……」

パサリと、白の背中から、今まで隠されていた輝く巨大な翼が現れた。それはヘブンの智天使の威容そのものだった。

白は軽くジャンプした。その動作とは反するような、凄まじい速度で上空にのぼっていく。

彼女にとって、空を飛ぶのは苦手どころか、ペガサスを遥かに凌駕する速度を持つ、最も得意とする移動手段だった。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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