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真説・おとぎ前線 【小説版】  作者: かたしよ


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ケルト音楽と印税の金塊

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

場所: フリッグの海の宮殿「フェンサリル」内部。

時間: トールとの別れ直後。

ヴァルキリーの案内に従い、「IS:T」の三柱は海の宮殿の回廊を歩いた。

その内部は、トールが「男の子禁制」の宮殿に入るのを嫌がるのも納得できるほど、金銀財宝で飾り立てられていた。壁面は磨き抜かれた黄金で覆われ、天井からは宝石がちりばめられたシャンデリアが下がり、床には珍しい貴石が敷き詰められている。

「(ヒソヒソ声で)あの手土産どうしたんだ? 紅、紅はあんな金の塊、興味ないだろう? なんで、あと十本って……何本持ってるんだ?」

慶は、周囲の豪奢さに驚きながらも、紅に耳打ちした。

「あれはこの日の為に用意してたんだよ。一時期、三人で人間の振りして歌ってたことがあったでしょ?」

「IS:T、三人で歌ってた」白が静かに説明を加える。「紅と私がボーカル、慶がラップで」

「ビルボードチャート、いきなりの一位! 驚異の謎の女性シンガーグループやら、なんやら言われてたね」慶は懐かしそうに笑った。「道端で歌ってたら、プロデューサーと名乗る……あいつ誰だっけ? まあ、いいやCD出してくれって言われて一曲歌ったけど……突然、現れて、突然消えたとか。チョー面倒くさかった」

「あの金の塊は、その時の人間でいう印・税で買っておいたやつ。私も神の端くれ。金には興味も微塵もないけどね……。そ・う・じ・ゃ・な・い・神・様もいるってこと」

紅はふふっと思い出し笑いを浮かべた。その冷静な計算こそが、彼女の強さの一端だ。

やがて、金箔が施された巨大な謁見の間の扉が、ゆっくりと開かれた。

「(驚いた声で)わー、みんな金ぴか」

白が思わず声を漏らすほど、謁見の間は黄金の光に満ちていた。

「皆様、フリッグ様へあちらです。フリッグ様の御前へ……」

ヴァルキリーはそう告げると、恭しく後ろへと下がった。

中央の玉座には、最高位の女神フリッグが、その威厳と美しさを湛えて座していた。

「ようこそ! わたくしの宮殿フェンサリルへ。ジャパンの神、紅と……」

「はじめまして。偉大なる女神フリッグ様。ウチの……(口を一度濁し)私の名前はけいといいます。人間からは"ビ・リ・ケ・ンさん"と言われてる新・参・者です」

慶は、神の序列をわきまえながらも、ユーモアを忘れなかった。

「"ビ・リ・ケ・ンさん"といえば、あなたの噂はこんな遠くの地でも聞いてますよ。足・を・掻・い・てあげると幸福をもたらすとか。お・金・持・ちになるとか……。わたしもあなたの足・を・掻・い・てみたいですわね」

フリッグは不適に、ふふふと笑った。玉座に座る彼女の眼差しは、黄金を求める欲望に揺れている。

「(焦り声で)フ、フリッグ様、足・を・掻・くのは……**"誰・か・さ・ん"**が撒いた迷信ですので」

慶は顔をひきつらせながら弁解した。

「あら、それは本当に残念ね……」

「まあ、掻いてみたいと思われるなら次回という事で。おい白!」

「私の名前は**"はく"**。ヘブンの天使です」白は静かに答えた。

「ヘブン第二階位**智天使ケルビム**の一人ね。怖い三人ではなくて可愛らしい子の方の……。ところで……」

フリッグは、他の二人への関心を打ち切り、紅の顔を見つめながら話しかけた。

「素・敵・な・贈・り・物をありがとう。あと十本もわたくしに贈ってくれるとか? 単刀直入に聞くわね。ご用は何?」

紅は迷いなく、彼女の目的を伝えた。

「歌をご教示いただきたく存じます。偉大なる女神**"フリッグ"様**。あなた様が愛する人々が伝承する**"ケルト音楽の全て"**を。あの贈り物は、そのお礼の品としてご用意しました」

「そう……そんなことで良いいの」

フリッグは、紅の要求の規模が、贈られた金塊の価値に見合わないほど小さいことに驚いたようだった。フリッグは横に立つヴァルキリーに向かい、指示を出した。

「楽団をこちらへ直ぐに呼びなさい」

しばらくの沈黙の後、ヴァルキリーの指示により、優雅で神秘的なケルト音楽が謁見の間に流れ始めた。それは北欧の厳しい自然と人々の生活に根差した、力強い旋律だ。

紅は、その音楽を全身で浴びた。ナナンにサンバを教わったときと同様に、紅の身体が薄っすらと光り輝き始める。まるで音楽が持つ知識、感情、そして神気が、紅の内に急速に吸収されていくようだ。

音楽が終わると、紅の輝きは収まった。

「ありがとうございました。確かにケルト音楽の全てを授けていただきました」

「まあ、驚いた! 摂社というと神気が低い神が任される場所なのに、あなたは本当に摂社の神なの? それとも噂にきくジャ・パ・ンのウ・カ・ノ・ミ・タ・マ様の力が想像以上なのか……」

フリッグは紅の底知れない力に疑問を呈した。

「兎に角、わたくしは約束は守りましたよ。では早速、あなたも約束を……」

紅はすぐに懐から、約束の金塊を取り出した。フリッグが金塊を受け取ると、紅はさらにその塊を次々と追加していく。

「十本っていわれたけど、十、十一、十二、十三、十四……二十本。倍もあるじゃないの」

フリッグの驚きと喜びに満ちた声が響いた。

「どうぞお気になさらずお受け取り下さい」紅は静かに微笑んだ。

「(喜びの声で)本当にあなたは素敵な方。素晴らしい贈り物をありがとう。ささやかながら宴も用意しましょう。いたいだけフェンサリルへいてもよろしくてよ」

フリッグは惜しみない歓待を申し出た。

「ありがとうございます。ただ、これでも急ぎな旅ですので、お言葉に甘えて本日だけ……」紅は宴を辞退するつもりはないようだ。

「**"UTAGE"**っていい響きだね~。フリッグ様、ご馳走になりますね♪」慶は喜び勇んだ。

「ありがとうございます」白も礼を述べた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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