天女達の魂…
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
深夜三時。佐賀県太良町の海岸線に立つ大魚神社の上空には、張り詰めた緊張感とともに、凄まじい神気が渦巻いていた。
海中鳥居を見下ろす虚空に立つのは、ジャパン原初の風神である級長津彦命と級長戸辺命の二柱。そして彼らと対峙するように、「IS:T」の面々と「Gale & thunder」のメンバーが並ぶ。紅の腕の中では、未だ苦悶に喘ぐ願居が、辛うじてその命の灯を繋いでいた。
蒼風が、畏まりながらも震える声で問いかけた。
「恐れながら申し上げます……では、もう……有・明・海・の・天・女・達・は・……」
風神の姉、級長戸辺命は、悲しみを湛えた瞳で静かに首を振った。
「“今”はいないわね……。“今”はね」
「話しに横・入・り・し・て・す・い・ま・せ・ん・」
申し訳なさそうに、しかし何かを確信したような表情で慶が割って入る。
「あら、ビリケンさん。貴女なら大歓迎よ! な〜に?」
級長戸辺命が微笑むと、慶は真剣な面持ちで尋ねた。
「“今”ってどういうことですか? 妙にその話を聞くと、既視感を感じてしまって……」
その言葉に、女神は少し驚いたように目を細めた。
「流石、勘・が・鋭・い・わね。百年そこらでキャラクターから高位神になっただけのことはあるわ。そうよ……私が、息・絶・え・絶・え・の・彼・女・達・の・全・員・の・命・の・灯・を・一・つ・に・集・め・た・の。そして、“今”はこうして私が守っているわ」
級長戸辺命が右腕を前に差し出し、手のひらを広げる。ポワッという柔らかな光と共に、そこには赤・ち・ゃ・ん・の・編・み・ぐ・る・み・の姿が現れ、愛らしく揺れた後、再び光の中に消えた。
「冴えてる〜私!」
慶は納得したように、プププッと小さく笑った。
「何か同・類・系・な・も・の・が・い・る・よ・う・な・気・がしたんですよ」
「慶、長話はあとよ。今は紅と願居を!」
白が鋭く制止すると、慶はハッとしたように表情を引き締めた。
「SORRY、ゴメンね。早く行こう!」
「ウウウウウッ……!」
願居が声にもならない呻き声を上げる。その苦痛を和らげるように抱きしめていた紅が、焦燥に駆られて風神たちを急かした。
「御神様、早くそ・ち・ら・の・前・線・へ……!」
青年風の声を響かせ、級長津彦命が厳かに告げる。
「ここからは何が起こるか分からん。俺と姉貴、そして岩崎大神殿と願威だけを連れて行く」
級長戸辺命も、残される者たちへ向かって優しく言葉を添えた。
「ビリケンさん、ごめんなさいね。あと、ケルビムさんも……大事な仲間は、ちゃんと守りますから」
「紅を……願居をよろしくお願いします」
慶が深々と頭を下げ、白もまた神々の王座を睨むような鋭い眼差しを風神たちへ向けた。
「ジャパンの風神。紅と願居を、必・ず・助けて!」
「分かってるよ。ケルビムのかわいこちゃんを泣かせたら、怖・く・て・恐・ろ・し・い・残・り・の・三・柱・が来るからな。任せておきな! 行くぜ、姉貴!」
級長津彦命が不敵に笑うと、姉の女神も頼もしく頷いた。
「貴方達、ここは頼んだわね。もし蕃神達の生き残りでもいたら、コ・テ・ン・パ・ンにしてあげなさ〜い」
「承知いたしました」
緑風が応じ、蒼風も後に続いた。
「同じく承知いたしました。願威をお願いします」
雷鳴は、堪えきれない涙を声に滲ませながら訴えた。
「お願いいたします……。願威は、俺たちにとっても……もう必・要・不・可・欠・な・大・事・な・メ・ン・バ・ー・なんで……頼みます……!」
「我が御神様に代わり、よろしくお願いいたします」
雷光も中低音の声を絞り出し、最敬礼で一行を見送った。
海中鳥居の上に揺らめく、異界への入り口。
風神二柱と紅、そして彼女に抱かれた願居は、眩い光の中に吸い込まれるようにして「おとぎ前線」を通り、姿を消した。残された海上には、ただ冷たい潮風だけが吹き抜けていた。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




