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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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幕間「天界からの帰還」 ~JOY TRIP~

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

そこは、人間たちが「天界」と呼び、畏敬の念を抱く場所。

眼下には果てしない雲海が広がり、白亜の回廊には、どこからともなく厳かな賛美歌の旋律が風に乗って流れてくる。

その宮殿のバルコニーに、一人の女性が立っていた。

べに。かつて人間界で「岩崎大神いわさきたいしん」と呼ばれた縁結びの神である彼女は、下界の遥か彼方を見つめ、静かに呟いた。

「結界が、こじ開けられた」

彼女の美しい瞳が、微かに細められる。

「二十年……か……。時間も正確……ウカノミタマ様、相変わらずね」

「た……たまげた! こじ開けたのは、あの白い……」

背後から、驚きを隠せない声が響いた。

声の主は、けい。神とは思えぬラッパーのようなファンキーな出で立ちをした彼女は、口元を手で覆った。

紅はすかさず慶の口をさらに手で塞いだ。

「しーっ。"あ・の・方"は何考えてるのか分からないから……余計な事いうと、また、"変・な・噂"を人間たちに広げる可能性があるから。その話はダメ」

紅は語尾を強めて釘を刺した。慶は「んぐぐ」と頷き、解放されると大きく息を吸った。

「OK! OK! 分かるよ。私の"足・を・掻・く・と・願・い・が・叶・う"なんて、変な噂を立てられて、今も大変だからね」

慶こと、ビリケン様は、自分の足をさすりながら肩をすくめた。かつて人間界で広まったその奇妙な信仰は、彼女にとって笑い話であり、少しばかりの悩みでもあるようだ。

「紅、帰るのか……」

その時、鈴を転がすような、しかし抑揚のない声が聞こえた。

はく。まるで精巧なビスクドールのような美しさを持つ天使の少女が、無表情のままそこに立っていた。

紅は、愛おしそうに白を見つめ、力強く頷いた。

「帰るよ! ふるさとへ……。ウカノミタマ様との約束の時が来たらしい」

「プロミス! 約束! ウチラ、これでも神様だからね! 白、約束やぶっちゃ~あ、ノーグッド!」

慶が、身振り手振りを交えて大げさに言った。その独特な英語交じりの軽快な口調は、天界の静寂には似つかわしくないが、彼女たちの間では日常の風景だ。

「で、でも、紅のところにはウカノミタマ様がいる……」

白の淡々とした声には、僅かながら懸念が滲んでいた。

「HAKU! ウカノミタマ様がいようがいまいが関係ないんだよ!」慶は笑い飛ばした。「紅は約束を守って、ふるさとへ帰るだけ。ま、ウチもこれでもジャパンなゴッド……ビ・リ・ケ・ン様って言われてるから、一緒にジャパンに帰るけどさ」

慶は「プププッ」と笑い、紅にウィンクを送った。

「私も、付いていく……」

白が静かに、しかしはっきりと告げた。

「一緒に行ってくれるのは嬉しいけど」慶が少し真面目な顔に戻る。「ヘブンやドリームランド、天界の仕事は?」

「私は四人いるケルビムの一人。今の時代に生命の木を狙う無知な輩はいない……。あとの三人、ミカエルやガブリエルたちと違って、私には戦う力もない。人の気持ちを繋ぐ力を持つだけ……」

白は自身の胸に手を当てた。

「プリーズ! プリーズ! 私の恋の願いを叶えて~キューピッド様ね」

慶がおちゃらけて、ヘヘッと短く笑った。

「慶!」

紅がたしなめるように名を呼ぶ。

「ソーリー。ごめんごめん。兎に角、紅……白が来てもいいの?」

慶の問いかけに、紅は白の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

「ここで私たちは出会って、大好きな歌で繋がった仲間。白が一緒にくるのは嬉しいけど……。でも、それは結局、"白"自身が決めること……」

紅の言葉に、白は小さく、けれど確信を持って頷いた。

「ヒュー♪ 紅、ウチは紅のそんなところが好きよ」

慶が口笛を吹き、紅の横に並んで背中をバンバンと叩いた。

「イタタ……慶、叩くの強い。痛いって」

紅は苦笑いしながら背中をさすり、そして、眼下に広がる雲海の先にある「故郷」を見据えた。

「では行こう! いざ、我がふるさと、SAGAへ!」

「HEY! JOY TRIP! いざ、喜ビノ旅へ! 善は急げ! レッゴー!」

慶が高らかに叫ぶ。

「JOY TRIP……いい言葉……」

白がボソリと呟いた。

ビィィィーン……

何もない空間が歪み、次元の扉が開く音が響く。

三人の神様、シンガーユニット「IS:Tイズティー」の足音は、光の中へと吸い込まれ、やがて聞こえなくなった。

彼女たちの「喜びの旅」が、今、始まる。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

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