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【完結済】真説・おとぎ前線 【壱】〜祐徳門前商店街編〜【小説版】  作者: 久遠 魂録


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最初のお披露目へ

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

八月一日、午前十一時三十分。稲荷神社境内の関係者テント内には、いよいよ訪れる「その時」を前に、張り詰めた緊張感が漂っていた。


 人形司の少年、塩善しおぜんは、目の前の四人が纏う独特の空気感に驚いたような声を上げた。

「へぇーっ! では、皆さんは今から『アイドルデビュー宣言』と『アイドルデビュー』をされるんですね♪」

無邪気ともとれるその言葉に、神那かんなが鋭い視線を向け、怒気を孕んだ声で応じる。


「そうよ。悪い?」


「……何でそんなに怒ってるんですか?」

困惑する塩善をよそに、マネージャー兼コーチの理名りなは、感心したように神那を見つめた。


「神那ちゃん、素晴らしい『塩・対・応・』よ!」

その言葉に、塩善はハハハハと苦笑いを漏らす。


「確かに『塩対応』ですね。この僕、塩・善・に塩対応とは……」

その時、境内を包んでいた和楽の音がふっつりと止まった。式典の終わりが近いことを告げる静寂だ。


「もうそろそろ式典も終わりそうだね……」

亀さんが外の気配を察して立ち上がる。


「理名さん、みんなの準備をお願いします。ちょっと、俺が様子を見てきますね」

亀さんがテントの幕を割り、外へと出ていく。


「み、みんな……頑張ろう!」

祈里いのりが震える声で皆を鼓舞すると、理名が力強く背中を押した。


「最初は失敗してもいいから……とにかく、ベストを尽くすのよ!」 


「はい!」

祈里、神那、美琴みこと沙希さきの四人の声が、テントの中に力強く響き渡った。


直後、外の様子を伺っていた亀さんが内幕をめくって顔を出した。

「もう、始めて良いって」


「よし! みんな行くよー!」

祈里の気合に、塩善が楽しそうに目を細める。


「面白そうなことが見られそうですね。僕も勝手に見学しますね」

関係者テントを飛び出した「おとぎ前線」の四人と理名たち。亀さんは一足先に放送席へと向かった。


「俺が先に境内内の放送マイクを使って案内するから……」


「亀さん、ありがとう」

理名は亀さんの背中を見送り、再びメンバーに向き直る。


「じゃあ、おとぎ前線のみんなは、亀さんのアナウンスが終わったら太鼓橋へ。あの場所が演奏会の会場、みんなの『初・ス・テ・ー・ジ・』だよ」


「はい!」


「稲穂ちゃん、亜都あとちゃんは私に付いていてね……」

理名の指示に、稲穂と亜都が元気に返事をする。


「はい! 理名お姉ちゃん」


「稲穂ちゃんとちゃんと二人で、邪魔にならないようにします」


「二人はいつもいい子ね!」

理名は二人を褒めると、傍らに立つ少年に視線を移した。「それと……あなた……し、塩善くんだったっけ?」


「僕のことはお気になさらず。もうそろそろ帰らないといけない時間ですので、皆さんの初ステージを観たら帰ります」


「分かった。帰る時は気を付けて帰るんだよ」


「皆さんの成功を祈ってますね。それじゃあ、僕は離れた場所まで行って観たら帰ります。それでは!」

塩善はそう言い残し、人混みの中へと消えていった。


間もなく、境内に設置された放送用スピーカーからノイズが混じった音が響く。

『あ~あ~、皆さん、マイクの音、聞こえますか!』亀さんの声だ。


『稲荷神社門前商店街からのお知らせです。十二時十五分から始める演奏会の前に、商店街にある「前線カフェ」さんよりご案内したいことがあります。よかったら、演奏会ステージの太鼓橋まで足をお運びください』


「さあ、みんな行って!」

理名が気合の入った声で促す。そして、ふと思いついたようにリーダーを呼び止めた。


「あと、祈里ちゃん?」


「はい。コーチ、なんですか?」


「リ・ー・ダ・ー・の・初・仕・事・、頑・張・れ!」

祈里は一瞬目を見開き、そして最高に元気な笑顔で応えた。


「ありがとうございます。頑張ります!」

理名は残る三名にも視線を送る。


「あと、美琴さんも神那ちゃんも沙希ちゃんも、リ・ー・ダ・ー・が・固・ま・っ・ちゃ・っ・た・ら・、フ・ォ・ロ・ー・に・回・っ・て・あ・げ・て!」


「はい。分かりました」

美琴が静かに頷くと、神那がからかうように笑った。


「美琴さん、祈里のことだから大丈夫よ! 大丈夫!」


「私もそう思う……」

沙希もオドオドしながらも、微かに微笑む。


「じゃあ、初ステージに行ってきます!」

祈里の宣言に、理名が手を振った。


「みんなに幸運を! いってらっしゃい!」

真夏の光が降り注ぐ境内を、四人の少女たちは太鼓橋を目指して力強く駆け出した。その背中には、碧海雫や理名、そして彼女たちを支える多くの者の想いが託されていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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