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⑥異世界研修

 YUKIが異世界に到着後は本当にいろんなことがあった。

 翌日は、体調を整えるために、ゆっくりと気の済むまで睡眠を取った後、簡単な検査などが行われた。

検査と言ってもこの世界は魔法に頼る部分が多いため、地球の医学とは違っていて、魔法による検査が中心であった。YUKIは転移による悪影響は特に見つからず、逆に神様の補正によって全てのパラメータの上昇が認められ、体格はメリハリの効いたボディー、顔は骨格がやや引き締まった様で、だらしないぽっちゃりではなく、ふくよかな美人になっていることがYUKI自身にも確認できた。そのことで、YUKIは表情も明るくなり、以前とは違って、不思議とやる気に満ち溢れている様子だった。

 後半は、ギルドの建物の見学に担当職員と二人で出た。職員は「MIRAGE」と名乗っていた。現地生まれの女性の人間属であった。一階はまるで銀行の受付か職業安定所を思わせるような造りで、正面右手には大きな掲示板があり、大きなカウンターに対面して、受付側には、人間属、エルフ属の女性が多く見られた。ホール側には、人間属、エルフ属、ドワーフ属、獣人属、ホビット属なのか見たことも無い多種属の冒険者らしき者が大勢集っており、この国のギルドの本部らしく、丸テーブルが100以上置いてあった。具体的には、冒険依頼の受付から素材の買い取り、報酬の受け取り所などがあった。

 また、その隣には長テーブルがこれまた50以上設置されている大きな食堂で、昼間っからジョッキを傾けている宴会中の冒険者パーティの姿も見られた。地下には、各扉で仕切られた多くの部屋があって、冒険者向けに開放されている各研修室や実技訓練場、買い取った品を保管するための倉庫、普段は固く施錠されている転移室などがあった。YUKIもその転移室からこちらに来たのである。2階に上がると、ギルドマスター室、会議室と書かれた大小の部屋があった。3階には魔法力や霊力の研究所、剣術、体術などの各技術の研究所が入っており、さながら大学の研究室といったフロアであった。4階は宿泊施設になっており、YUKIたちも今はここで寝泊まりしている。

 その翌日は、他のメンバーたちとも合流し、ギルドの外の城下町へも勇者御一行様は出かけることができた。城下町は、飲食物や魔法具、日用品から雑貨まで何でもありの数々の露店がある商店街のようなエリアとアパートのような集合住宅が集まった住居エリア、国王が住まうお城のような建物があり、中世ヨーロッパ建築とアラビア建築を足して二で割ったような建築様式のお城であった。六人の勇者パーティにギルド職員の女性2名も同行していた。

TOMO「YUKIさん、ギルドから外に出たのは初めてですよね?」

YUKI「はい、そうですよ。町の様子を見ると異世界に来たなって感じがしますね。」

TOMO「行ってみたいお店とかありますか?」

YUKI「そうですね。現地の果物とか雑貨とかおいしい食べ物とか、いろいろ見て回りたいですね。」

TOMO「でしょ、それじゃ、あとで私のお気に入りのカフェで昼食にしましょうか。案内するわよ。」

SEI「反対!はんたーい。あそこは何か気取ってて飯の量も少ないからやだね。」

TOMO「あなたは誘ってないわよ。男は好きな場所に勝手にいけばいいじゃんよ。」

SEI「そーですかぁー。では喜んでそうさせてもらいます!」

YUKI「ふふ、お二人は仲が良いのか、悪いのか、TOMOさん、じゃお昼はそこのお店お願いしますね。」

 午前中は、8人でぞろぞろと商店街を見て回った。大きな声でおしゃべりをしながらだったので、おそらく東京見物の観光バスツアー客の様であったに違いない。

TOMO「あー、私あれやってみたーい。」と露店のお祭りでよく見かける射的ゲームを見つけた。景品はこちらの世界の雑貨や札に番号が書かれた交換用の番号札が置かれていたが概ね日本のお祭りのそれと同じだった。

YUKI「あ、天神祭りの露店で見るやつやん、私も。」

SEI「じゃ、俺も。」

TOMO「良いわよ。じゃ、60秒でどれだけ倒すか、魔法は使用禁止、雑貨は1点で番号札はそのまま得点

   にして合計得点で勝負しましょう、最下位はお昼奢りだからね。」本来の遊び方と少し違ったが、有無を言わさず、三人の射的対決が始まった。

3人に渡された銃は、おもちゃの水鉄砲のような形状の小型拳銃タイプの銃で、玉は自動で補充される魔法弾が予め仕込まれていたので、操作は子供でも簡単に扱える物だった。

TOMO「じゃ私から、WILL、一分計ってよね。」結構な正確さで、高得点の札を中心に20個ほどの番号札を倒した。「あー疲れた、合計640点かあ。まずまずかな。」自分の思うようにパフォーマンスできたようで満足気だった。

SEI「じゃ、おれが行くよ。WILLくん一分よろ。」こちらはあまり狙いを定めずランダムに撃ちまくっていた。札は30個ほど倒れた。「これで、TOMOさんに勝っただろ。」SEIは得点の合計が出る前に勝利宣言をしていたが、

TOMO「残念でした、あなたの得点は560点でした。はい、ランチゲットー」嬉しそうにSEIをいじっているように見えた。

SEI「くそー、倒した数では完全に勝ってたのに。まあ、まだYUKIさんがありますから。」と、いじわるそうな笑みを浮かべた。恐らく周りの全員がYUKIがランチを奢ることになるだろうと考えていたに違いない。まだ異世界に来たばかりのやや小柄なオットリめの女性が二人に敵う筈がないだろうと。

YUKI「まだですよ、私結構GUNは経験ありますから。」と笑顔で答え、集中モードに入った。

YUKIの60秒は前の二人と同じ筈だったが、あっさりと猛スピードで全ての的をその中心で仕留めた。これにはさすがに露店の店主も腰を抜かして悲鳴を上げた。

「これじゃ、商売にならないじゃないか、景品全部あげるから二度と来ないでくれー。」

YUKIたちは、射的ゲームがしたかっただけだったので、店主に詫びを入れて、景品も元の状態に戻してその場を後にした。勝負の結果はYUKIの圧勝だった。

 結局のところ、昼食はSEIの奢りになったので、TOMOの紹介するカフェに全員で来たが、女子チームと男子チームで隣のテーブルに分かれて取ることになった。同行のギルド職員2名も女子チームに加わったので、5人でプチ女子会が開催された。元の世界ではおそらく接点が無かったであろうタイプの違う者たちが、こちらの世界のこのような場面を重ねることで、だんだんと仲良しになっていくのであった。


 三日目からは、もう早くも研修室での座学と訓練場での実技訓練が始まった。

座学研修の講師は、昨日外出に同行したギルド職員が務めた。ステータス研修は一昨日からYUKIの担当職員の「MIRAGE」が講師を務め、スキル研修は、「BRISE」という、どちらも女性職員が担当した。YUKI以外の者たちは基礎研修はもう済ませているらしく、初日は一人で研修を受けていた。

MIRAGE「それではYUKI様よろしいでしょうか。ステータス関連の研修を始めます。こちらの世界では

    地球の世界とは異なる点も多いので、魔王討伐の出発までに基礎をお伝えしたいと思います。

    基礎さえ頭に入れておいて頂ければ、実戦で応用が利くようになると思いますので。ではま

    ずは主要ステータスから順にご説明いたします。」ギルドの職員らしく、きっちりとした性格の様で場慣れしているのが分かった。YUKIのステータスがプロジェクターで大きく映し出されていた。


・主要ステータス

 小川幸江(YUKI)

LV132 *地球の人間属

 体力 ゲージ・・・3200/3200

 魔法 ゲージ・・・100/100

 気力 ゲージ・・・10000/10000

MIRAGE「はい、では主要ステータスをご覧ください。YUKI様のレベルは132ということですが、既に人

    間属では概ね最強の状態です。簡単に言うと地球で132年生きて得られる経験値を稼いだという 

    こと、もしくはこちらの世界ではLV99を超えると魔属とも戦闘可能な高レベルと言われており

    ます。転移者の多くは異世界の神様の加護によって、各数値の上昇を与えられます。YUKI様の

    場合は加護ベースが×100ですので、LVには100がプラスされ、体力は100倍、魔法は0から100

    へ上昇、気力も100倍となっております。」

YUKI「えっーと、神様だいぶやらかしましたねーって感じに見えますが、100倍にしとくねーって言わ

  れていた約束を本当に概ね守ってくれたようなので、安心しましたわ。ほんまにえげつないチート

  ですよねー。」と興奮気味に答えた。

MIRAGE「そのようです。100倍の方はまれかもです。体力は、筋力を鍛えることでベース値が上昇し

    、休息や睡眠、回復薬、回復魔法などでゲージが回復します。魔法は、各属性の魔法力を鍛え

    ることでベース値が上昇し、魔力回復薬、魔力回復魔法などでゲージが回復します。気力は、

    霊力を鍛えることでベースが上昇し、霊薬、御霊の力、信じる力などでゲージが回復します。

    あと、神力の力ですね。オールアップの力とも呼ばれていて、ベース値もゲージ値もかなり上

    昇させます。これが100倍っていうお約束があった神様の力に該当します。主要ステータスの

    内、一番大切なのは気力の力です。これが0になると体力や魔法が残っていても何もすること

    ができなくなります。」

YUKI「確かに、病は気からとか、元気があれば何でもできる、とか。地球でも気力の大切さは朧げに

   認識されていたんだろうなぁ。魔法とかももう使えるようになっているんか。何だかわくわく

   するなぁ。」YUKIは異世界に来て何十年ぶりかに子供のようなワクワク感を覚える気がした。


・アビリティ

 ちから 3200 すばやさ 9600 みのまもり 600 知恵 3200 

 剣 100 斧 100 槍 100 弓 100 銃 100000

 火属性 100 水属性 100 土属性 100 風属性 100光属性 100 闇属性 100

やる気 3200 根性 4800 継続力 4800 生きる力1600

MIRAGE「では次はアビリティの基礎をご説明いたします。プロジェクターの映像をご覧ください。

    こちらは全数値が100倍になっております。数値が100あればそれだけで一般人以上と考え

    て下さい。1000を超える部分はこの世界の最上位モンスタークラスの数値、例えばドラゴン

    属や地球のゴリラやライオンと人間の身体能力の差以上の数値と考えてもらえれば分かりやすい

    かと思います。銃は10万ありますので、どのような種類の銃を扱うこともできますし、人間

    離れした攻撃が可能です。すばやさも9600ありますので、無敵ですね。この後の訓練場での

    訓練では実際に武器を使用しますので、もっと理解が深まると思います。」

YUKI「えー、こちらもチートがすごい、私ってゴリラ以上ってことなんですよね。まあ最近妙に力持ち

  になったり、敏捷性が増えていることは、なんとなく気になっていたんですが、そのせいだったん

  ですね。」

MIREGE「次は魔法属性についてですが、一般的には一人1属性を使えるようになるのがやっとなん

    です。ところがYUKI様は全ての属性が100となっておりますので、訓練次第で全属性が使用可能

    なのですが、私は、そのうちの一つに特化して短時間でマスターする方を今回はお勧めします。

    勇者パーティの先輩方は、SEI様が火属性、TOMO様が全属性使えるのですが闇属性がメイン、

    WILL様が光属性、IGLEE様が主に風属性ですが、水属性と光属性もサブとしてお持ちで、

    GORRDON様が土属性を得意として使っておられますので、YUKI様はまあ消去法的に水魔法を

    マスターなさるのが、パーティのバランスを考慮すると最善かと思われます。いかがでしょ

    うか。」

YUKI「はい分かりました。私は水属性メインで問題ありません、どうぞ進めて下さい。」

MIRAGE「水魔法では、大きく分けて攻撃系と治癒系に分類されます。攻撃系では、ウォーターやアイ

    シクル、ウォーターフォールなどがありますが、YUKI様は銃がダントツで得意とされており

    ますので、魔法弾として使用していただくことになります。実際にはこの後の実技系の研修が

    ありますので、そこで見て頂くことになります。治癒系は、体力水、魔法水の生成が可能で、

    その効果はLVによって小さい方から1~5段階に分類されます。YUKI様は訓練すれば治癒水が

    5レベルで使用可能になります。」

YUKI「なるほど、水鉄砲的なやつと薬剤師的なやつってことやんね。」ワクワクする感じがしたので少し気分が高ぶって、少々茶化してみることにした。

MIRAGE「YUKI様、まあ概ねそんなイメージですが、ウォーターフォール弾など、一度に周囲の敵を

    全滅させる殺傷能力を持つ魔法弾もありますので、しっかりと訓練してくださいね。」と冷静に

返されてしまったので、YUKIはピリリと姿勢を正した。

MIRAGE「 次は気力ですが、こちらはなかなか習得に手こずる地球の方が多いですね。気力をパラメー

    ターで分解すると、やる気、根性、継続力、生きる力に分類されます。やる気は、地球では

    モチベーションや前のめりな感情とか言われてます。根性は芯の強さや忍耐力とか言われてま

    すね。根性は肝っ玉とか図太さとかですね。継続力は、それらを維持継続する力でこつこつと

    やり遂げるには必要な力です。生きる力はその場面に応じて最も最適解を得るための能力とでも    

    言えば分かりやすいかもです。死なないために大事な力です。これらの力は、地球では気力が

    ふわっとした概念で捉えられていて、言葉でお伝えするのが難しいので、これら4つの力を上

    げるため、具体的な訓練で霊力を高めるやり方はこの後実技でご教授いたしますのでどうぞ

    頑張って下さいね。何かご質問はありますか。」

YUKI「大丈夫です。」YUKIは異世界での新しい事を習得することが楽しみでワクワクしていた。

MIREGE「はい、では次は休憩を少し挟んで、BRISEさんからスキルの基礎研修を行います。では

    しばらく解散。」 


BRISE「YUKI様、もう席に着いてらっしゃいますので、スキルの研修を始めますね。座学が長いと退屈に 

   だと思いますので、ササっと終わらせて実技の訓練に回ってもらいますね、早速プロジェクターの

   映像をご覧ください。」

。スキル

 神様の加護(×100バージョン)

 言語自動変換

 速読(×100)

 記憶力(×100)

 銃技術(×100)

 鑑定(×100)

BRISE「神様の加護はもうご存じですね。神様も誰にでも特別な力を与えることは、自身の持つ原理

   原則を歪めてしまう行為なのでできません。但し違う世界に送る場合はその原理原則の法則

   の適用範囲外となるため、異世界転移者には特別な加護をお与えになることができます。」

YUKI「なるほど、神様に力があるのなら、地球の全員に特別な加護を与えてくれたらって思ったりも

   してたのですが、そういうことだったんやね。納得。」

BRISE「言語自動変換は、見たもの聞いたものが全て脳内で自動翻訳されて、YUKI様の理解できる日本語

となりますので、タイムラグは発生しません。YUKI様は本を読まれるのをご趣味とされておられた

   ようですので、速読(×100)のスキルと合わせると、あっという間にこの世界の事も理解できる

   知識が身に付きますので、空いた時間は積極的にギルドの図書室もご利用ください。」

YUKI「ヤッリー♪本、異世界の本楽しみ過ぎるー。早く研修終わらないかなあ。」

BRISE「YUKI様この後まだ実技の研修もあるんですから、ご自重頂ければと。」

YUKI「もちろん、実技も楽しみですから。」YUKIはこの世界に来て楽しいことが多すぎて、つい心の声が駄々洩れになっているようだった。

BRISE「あとは読んだ本の内容や体験した出来事を定着させるための記憶力も上がってますね。これが

   あれば一夜漬けのテストでも簡単に満点が取れるかもです。エビングハウスの忘却曲線という

   理論が地球では有名ですがそれも適用外です、忘れないレベルにまで上がってますので。あと、

   銃技術ですが、銃 100000のステータスと銃技術(×100)があれば簡単に言うと、拳銃、マシン

   ガン、RPG、レールガンなど全ての銃が扱えてかつ、精度やスピードがまさに西部劇のガンマン

   レベル、リロードも何度でも一瞬で行えるので、まるで相手はリロードの間隔が0なのではと、

   勘違いしますので、相手に隙が生じないということにもなりとても有利になります。まあこちら

   もこの後の実技で実際にやって見てもらうのが一番でしょう。鑑定(×100)は自分や相手のステー

   タスやスキルなどが閲覧できるようになります。但し通常、相手は鑑定妨害魔法で自分の情報を

   他者に見れなくするのが常ですが、×100があれば鑑定妨害を阻止できるレベルになります。人の

   鑑定以外にも物の価値が鑑定できるようにもなります。鑑定の方法はこの後の研修で学んで下さ

   い。」

YUKI「他の勇者パーティのみなさんはどんなスキルをお持ちなのですか?」

BRISE「SEI様は、勇者スキルをお持ちです。勇者スキルは攻撃力が飛びぬけているのと、パーティを必

   ず守るとか、世界を救うために戦うとかの自己犠牲の精神が実体化したようなスキルをお持ち

   です。他にもいろいろお持ちかと思いますが、詳しくはご本人に直接聞かれるのが良いかと。

   TOMO様は私が研修を務めましたので、よく存じ上げております。大魔法士スキルと威圧スキル

   が飛びぬけております。魔法は闇属性が一番ですが、全属性が中級魔法士レベルまでお使いに

   なられます。威圧は勇者様でも簡単に大人しくさせてしまうほどの効果をお持ちで、やろうと

   思えば、国王や魔王でも威圧できるかもしれませんね。」

YUKI「おーこわー。TOMOさんは怒らせないようにしないとやんね。。。」

BRISE「はい、それが賢明な判断かと、WILL様は信仰者系のスキルがメインの様です。他もお持ちです

   ので、またご本人たちにも聞いてみて下さい。」

YUKI「分かりました。それぞれが魔王討伐に必要なスキルをお持ちのようで良かったです。」

BRISE「YUKI様も早く実技に移りたいと思いますので、スキルの座学研修はこの辺で終了といたします。

   一旦お昼休憩を挟みまして、午後からは実技の訓練ですので、時間になりましたら、訓練場へ

   お越しくださいませ。ご清聴ありがとうございました。」

 YUKIはお腹も空いてきたので、MIRAGEとBRISEの三人で食堂へ向かった。そこではお昼にも関わらず、もう宴会を始めている他の冒険者パーティの姿が散見されたが、ダンジョンの攻略に成功しての祝勝

パーティでもやっているのだろう。ここでの食事は、基本塩ベースの味付けで食材は大きい物が多く

何か動物の塩焼きと大きな野菜がメインで、繊細な和食とは真逆の食べ物だったが、塩味は万能で

何でもまあ美味しく食べることができた。YUKIたちは、三人で他愛もない事をおしゃべりしながら楽しい女子トークを満喫し、食事休憩をゆっくりと済ませた。


 食後は、訓練場に移動して来ていた。先ほどまでの講師の二人はここでは見学に回るらしい。訓練場での研修は体力、魔法、気力の実技訓練である。最初に3人の実技講師陣が紹介された。

 体力講師は、KENROUという名の人間属の男性で胴着を着用していて、

「はじめまして、YUKIさんや。わしは見ての通りの武道家で、大武道家のステータスレベルを持っておる。今回は効率的に体力値のベースを上げる方法を伝授しに来た。次回以降は体術や武器を使用しての訓練もやっていく予定じゃ。よろしくじゃ。」YUKIは少し顔を引きつらせながらペコリと挨拶をした。

 魔法講師は、GANDという名のエルフ属の男性で魔法使いのような格好をしていて、

「みなさん、私は見ての通り、エルフで普段はのんびりとした自然豊かなエルフ自治区におりますが、

 今回の研修で呼ばれましたので、こちらに伺うのはTOMOさんの研修以来で久しぶりですね。

 YUKIさんどうぞ頑張って魔法を覚えましょうね。」YUKIは紳士的な知的なオーラが出ていそうな講師に好意を抱きニコリと挨拶をした。

 気力講師は、PIETという名の獣人属の男性で聖職者のような恰好をしており、

「なぜ獣人の私が講師をと思われるかと思います。普段は王都で司教をやっております。

 今日は勇者パーティの研修ということでこちらに赴きましたよ。どうぞYUKIさんよろしく。

 既に活躍されておられる先輩方もよろしく。」YUKIは優しそうなモフモフ紳士にお辞儀をした。この世界でもそういった職業差別?人種差別的なことをする輩もいるのであろうことが分かった。

 ここからは、練習相手をするためなのか、手本を見せるためなのか、先輩の残り5人も集まってきた。

気力研修は、PIET先生が担当となっており、一番初めに行われた。一同は、気力講師の獣人司教に頭を下げて敬意を表した。

PIET「地球から来られた皆様には気力というものが一番馴染みが無いということで主要ステータスの中

  でも一番時間を割きたい研修となります。最低でも一、二週間は本気で取り組んで下さい。では先

  輩の皆様もお手本を見せるように、YUKIさんと一緒にやって下さいよ。大原則として気力アップ

  は、霊力コントロールによって、やる気、根性、継続力、生きる力のステータスを結果的にアップ

  させるのですが、その方法は祈りが中心となります。魔法とは似て非なるものですよ。霊力は、

  祈りを中心として、御霊の動きをコントロールすることです。地球では朧げに信仰心などという

  言葉で扱われることが多いのですが、信仰心によって祈り、祈りによって御霊に働きかけ、御霊の

  働きによって、やる気、根性、継続力、生きる力のステータスに作用します。トレーニングで

  御霊は見えるようにもなります。御霊は陰と陽の二生成層からなります。地球の医学でも最近は

  交感神経、副交感神経の働きなどと表現されておりますよ。御霊を祈りによって呼び出し、陰層と

  陽層を回転させることでエネルギーを生成し、霊力の必要なステータスに作用させます。宗教者が

  光る霊を見て感動で震えて涙が出るというのは、そういった作用で生きる力に大きく作用します。

  では、先輩の皆様方、YUKIさんにお手本を見せて<やる気>を上げてみて下さい。」

先輩一同は、コクリと頷き必要な初期動作の祈りを始めた。その動作はみんなマチマチで、十字を切る

ような動き、手を押し合わせる者、忍者の忍法を唱えるような動きの者の居た。すると瞬く間に一同の

頭の上から明るい光と暗い光がクルクルと回転し始めた。御霊はトレーニングで可視化できるようだ

った。YUKIは初めて見る光景に唖然とした。

PIET「先輩方、ありがとうございました。YUKIさん如何でしたか。これが気力アップのための霊力

  コントロールです。気力は霊薬でもアップさせることができますが、これをトレーニングすれば

  霊薬は不要になりますよ。」

YUKI「まじかぁ、これぞ異世界って感じで、びっくりしました。良い物見せてもらいました。」

先輩勇者パーティの地球から来た三人も先輩風を吹かすかのように自慢げな表情をして見せた。

PIET「さあ、YUKIさんもできるようになります、当面のやるべきことは見えたと思いますので、徐々に

  トレーニングしていきましょう」

YUKIは祈りの方法から御霊の出し方を先輩方にも直接アドバイスを受けながら、結局その日の実技訓

練は、気力だけで終わってしまった。

 その日は、そのまま全員で夕食のためギルド内の食堂に向かい、当日の反省会という名目でそれぞれ意見交換しつつ、塩味の食べ物をみんなで楽しく食べた。TOMOとYUKIとIGLEEの三人は同性ということもあって自然にいつも近くで固まってお話することが多くなっていった。今日挨拶に来ていた魔法講師のGANDはTOMOの師匠に当たるらしいので、食事の後で同族のIGLEEを連れて挨拶に行くらしかった。お開きになった後は、各自自分の個室部屋に帰りいつも通り、寝るまでの間は自由行動となった。YUKIは昼間に教えてもらった通り図書室へ向かって有意義な時間を過ごした。この世界の地理、歴史、人種、魔王の事など、異世界で生きるために必要な知識をどんどん自主的に溜め込むことができた。もちろんチートスキルの言語自動変換、速読(×100)、記憶力(×100)のおかげであった。


 翌日は、実技研修の続きからスタートなので、ギルドの地下にある実技のための訓練場に集まった。

 午前中は体力研修から始まった。

KENROU「皆さん昨日はよく眠れましたかな。体力研修は皆さんに分かりやすい言語でいうと、

    基礎は筋トレと持久力トレーディングじゃ。剣や槍、斧、弓や体術のトレーディングはその

    応用編じゃ。この訓練場は魔法によって強化されておるから存分に暴れて構わんぞ。

    まずは、基礎から始めるからの、こちらの魔法具で筋トレからやるぞい。」

魔法具はいわゆるトレーニングマシンで魔法によって負荷が掛かる仕組みであった。YUKIはぜんぜん自信が無かったがやってみると、こちらもチートスキルのちから 3200 すばやさ 9600 みのまもり 600 のおかげで、特に息も上がらず、軽くメニューをこなすことができたので、運動不足でやや運動音痴気味の本人が一番びっくりした。持久力トレーニングでは、狭いはずの訓練場が走るたびに拡張されていく魔法が使用されているコースで走っても走っても元の地点に戻ることはなく、上部に表示された魔法モニターからは100KM以上走ったようであったが、こちらも余裕で鼻歌が混じる位だった。「オトン、オカン、オトン、オカン、オトン♪」何故か以前異世界カフェで出会った獣人の女の子が歌っていたリズムが耳から離れず、無意識で頭の中を回転するので、気を緩めると鼻歌となって口から出ることもあった。そんな感じで勇者パーティ全員、午前の訓練は卒なくこなせた。


 午後からは、魔法研修が始まった。

GAND「魔法は、6つの属性から成り立っていますが、YUKIさんもうご存じですか?」

YUKI「はい、座学でも習いましたので。火、水、土、風、光、闇です。」

GAND「よくできました。正解です。各属性はまた明日以降に行いますが、一度先輩方にお手本を

   見せてもらいたいので、前方の的に各々得意な魔法を撃ってみて下さい。こちらは、的に当たる

   時に数値化した後で自動で吸収される仕組みですので、威力を気にせず打ち込んでもらえますの

   でね。ではTOMOさんからどうぞ。」TOMOは無詠唱で闇属性の魔法を的の中心に撃ち込んだ。数値は98と表示された。「まあ。こんなものかしら。」TOMOは満足げに微笑んだ。

GAND「はい、魔法威力98万エルですね。さすがです。」と、どこか誇らしげに笑みを浮かべた。「次はSEI さん、お願いしますね。」SEI は、拳サポーターをはめた右手の拳を突きだし、気合いの言葉を発しながら魔法を放った。「魔法拳!」魔法は的の中心やや左をとらえ、数値は9を示した。

GAND「お見事。威力は9万エルで的もほぼ中心で問題無しです。魔法拳は近距離魔法なのに、この距離では上出来です。」

SEI は、誉められていたのだったが、本人は少し納得がいかない様子に見えた。

GAND 「次はWill さん、お願いします。」

Will は剣を振りかざして、光魔法でゆっくりと的を狙ったが、的ギリギリで数値は1を示していた。

GAND 「Will さん、おめでとうございます。ようやく1万エルを出せましたね。これからも精進しましょう。」Will はまだ新人の扱いのようで、本人も結果には満足しているようであった。

GAND 「次はIGLEE お願い。」IGLEE は弓を構えて魔力の籠った矢を放った。矢は的の中心のさらにど真ん中をとらえた。数値は87を示していた。

GAND 「IGLEE 悔しがることは無いですよ。弓使いで二桁万エルを出すのはこの世界であなただけですね。」IGLEE は長命種のエルフでTOMO よりずいぶん年上だったので、TOMO とは仲良しだったが、魔法ではいつも張り合っていた永遠のライバルのようであった。

GAND 「ではラストはGORRDONさん、よろしくお願いいたします。」

GORRDON は、斧の柄をドンと地面に叩きつけ地面がメキメキと盛り上がり、的全体を土のツララのような物で破壊した。数値は22を示していた。

GAND 「GORRDON さんはいつも豪快ですね。ありがとうございます。」GORRDON は、「まあこんなもんじゃろ」と澄ました顔で答えた。

GAND 「 先輩方の魔法は如何でしたか。YUKIさんもこれから特訓ですね。魔法力アップはイメージ力と経験力ですから、まずは魔法のイメージから始めましょう。」YUKI は、GAND 先生の言われる通りに魔法の基礎を学んでいった。魔法は攻撃魔法以外にも防御系、回復系、補助系、支援系など多岐に渡っていたので毎日多くの訓練によって身に着けていくことができた。


 それから10日ほど経った日の訓練が、いつもの地下訓練場で行われていた。YUKIも先輩勇者パーティメンバーに追い付くべく訓練に励んでいた。YUKIは無詠唱で、小型魔法銃から氷のつぶてを的に撃ちまくっていた。目にも止まらぬ速さだった。リロードをしている時間は感じさせなかったので、マシンガン並みの連射速度だった。的にはほぼ全弾が当たっていて、数値は1~9を示していたので、もうWill を追い越しているようであった。YUKIは、水魔法を小型魔法銃に込めて撃っているようで、いつかのアクション映画で見たことのあるどんなガンマンより早く、全身を回転させながら撃ちまくっていたので、目にも止まらぬ速さだった。

 YUKIは訓練期間中も空いた時間は積極的に図書室の本を爆速で読み、この世界の歴史、文化、地理、魔法、勇者の伝説の話などを理解し記憶していった。最近では古代文字で書かれた書物にも手を出していたのだが、古代文字を読める人は誰も居なったので、既に失われた魔法と言われて現存の魔法士では誰も使い方が分からない異空間収納魔法や召喚魔法の知識も記憶していった。

 またさらに10日ほど経った日の訓練ではこんなこともあった。無詠唱で水を出したかと思えば、それに雷を当てて広範囲に水素と酸素の二層を分離させて、最後は火魔法で大爆発させた。訓練場がもう少しで吹き飛んでしまうほどの威力に講師陣もびっくりで、どうやって今の魔法を作ったのかYUKIに教えを乞うていた程だった。「水H2Oをビリビリって分解して、H2とO2の二つに分けて、マルチプルって魔法で量を増やしてから、ボンッて火を着けるだけなんですが。」この世界では、魔法が発達しているせいで、科学のレベルはぜんぜんだったので、化学式についての理解も全く無かったので伝えることは難しかったのだった。

 知識や魔法の量は日常生活の中でも溢れ出し、YUKIの事を周囲のみんながいつの頃からか賢者様と呼ぶようになったきっかけにいろんなことがあった。

 それは、夕食の時間だった。ギルドの大食堂でいつものメンバーで食事をとっていた際に隣のテーブルで少々わがままを言っている犬耳のかわいい子供たちが親に駄々を捏ねていた。「ずるい、大人たちだけおいしそうにお酒を飲んで、ずるい。。。」という内容だった。YUKIは、微笑みながらその光景を見ていたのだが良いことを思いついたのでやってみることにした。自分の水が入っていたコップに空気中のCO2を集めて冷やしながら溶かして入れてみたのだ。すると、甘くない炭酸入り飲料が出来上がったので、給仕をしていた獣人スタッフに何か囁いて水の入ったコップを10個持って来させて、簡単に魔法で炭酸水を作って見せ、自分のテーブルに6個、隣のテーブルに4個配って飲ませた。「すげーじゃん、YUKIさん。」「ほんと、こんなことも魔法でできるんだ。」「へーYUKIさんは物質が操れるのか。」など勇者パーティからは関心され、「わーお酒みたい。シュワシュワだ。わーいわーい。」と子供たちは喜んでいたが、給仕スタッフも好奇心で一口飲んでそのおいしさや珍しさに飛んで料理長に報告しに行った。その後は、作り方をギルドの上級魔法が使えるスタッフに伝授し、<YUKIシュワー>という名でメニューに載せるようになったが、噂に噂を呼びのちに<賢者シュワー>と言われるようになった。

 きっかけのもう一つはYUKIのお世話をしていたMIRAGEと他メイドたちとのちょっとした会話からであったが、この世界でも衣類に虫が付くらしく、科学が発達していないこともあって、天然素材の服が多かったからでもあった。

「あっまた虫に食われてる。可愛いデザインだったから、せっかくYUKIさんに着てもらいたかったパジャマなのに。」とMIRAGEは愚痴にも似た独り言を言った。

「MIRAGEさん、パジャマだし穴が開いている位気にしやへんから、大丈夫ですよ。」とYUKIは気を使って答えた。

「そうですか、でもお客様に虫食いの服を出すなんてことはちょっと。。。ほんと何とかならないでしょか。」MIRAGEはこの頃にはもうYUKIとは気軽にお話できる仲になっていたので、気兼ねなく話はできたが、虫食いの服を着させるなどできないと言った話のようだった。

「じゃあ、防虫剤作りましょうか。ナフタリンは確か、化学式は C10H8 ベンゼン環が二つでコールタールを分留して作ればできると思うから、ちょっと待ってね。」そういうと自身の魔法のアイテムBOXに収納されていた、ビーカーやメスシリンダー、分留のためのフラスコなどを取り出して、やや黒っぽい透明な液体が入ったフラスコを火魔法を使って温め出した。YUKIは大学生時代にポリマーの研究をしていたので、その知識と魔法を応用すれば、難なく作れるようであった。

「へー、そんな魔法薬作成の器具を持ち歩いている人初めて見ました。」とMIRAGEは感嘆したが、興味はあるようだった。

「あー、これは魔法薬用のなんやね。こないだ露店で見かけて、何かに使えるかなって、学生の頃を思い出して買って置いたんだ。」と理系女の性であろうか、実験器具に興味を持ったからであったらしい。

「あとは、氷魔法で冷却したら、完成っと。はいMIRAGEさん、防虫剤できましたよ。直接手で触らずに紙にくるんでお使い下さいね。」金属光沢のような白っぽい板状結晶の美しい物が出来上がった。

「えーYUKIさんすごい、これが虫よけなんですか、これまでは防虫菊しか見たこと無かったから、すごい

やっぱり賢者様ですねー。」MIRAGEはYUKIの凄さにしきりに感心して謝意を述べていた。


 その日は久しぶりの訓練お休みの日だったので、一番後輩のYUKIの部屋で女子会が行われた。TOMO とIGLEE とMIRAGE の4人が集まった。

部屋はそんなに広くはなく、ビジネスホテル位の感じだったので、小さなテーブルに椅子が二つだけだったので、お姉さま順でIGLEE とMIRAGE が腰掛け、YUKIとTOMO はベッドに腰掛けていた。

女子会と言えば、彼氏とかの男の話が出るのが普通だと思うのだが、気が強くて気高いIGLEE とTOMO や超真面目のMIRAGE と元男性恐怖症だったYUKIたちからは、そんな色気のある話しは全くなかった。ほとんどが、食べ物のお店やお気に入りのカフェの新メニューで少し訓練に関する話題もあった。

TOMO 「皆さん最近はまってることとかってある?私はもっぱらカフェ巡りだけどね。」と、話題を広げる会話の糸口を投げた。

IGLEE 「そうね、私はだいたい休みの日は弓の手入れと武器屋巡り、魔道具のお店とかが多いかな。」

と、エルフの戦士は仕事もプライベートも頭の中を覗くと戦いのことが、多くを占めているようだった。

MIRAGE 「さすが、お姉さま、戦士の鏡ですわよね。私は、図書館巡りですね、そういえばYUKIさんとはギルドの図書室でよくお会いしますわよね。」と、エリートギルド職員は予想通り会話の展開を見せた。

YUKI「そう、MIRAGE さんとはよくお会いしますよね。MIRAGE さんまた今度機会があったら他の図書館も教えてくださいね。」と、元本の虫だったYUKIも負けじと乗っかった。

MIRAGE 「もちろんですとも、YUKIさんは古代語の図書も読めますから、古本屋さんも良いところ教えますわ。」

YUKI「MIRAGE さんありがとうございます、そういえば最近読んだ本に古代魔法の事が書かれた本があって、異空間収納魔法のやり方が書かれてあったので、それはもう前にマスターしたんですが、さらに召喚魔法の事が書かれていたんです。いろいろもっと詳しい本が有ればと思ってたのでちょうどいいかも。」と目を輝かして答えた。

TOMO 「 YUKIさんすごいですねー、異空間収納魔法は、荷物が軽くなるから私も欲しかったんです。良かったら、教えてくださいよー。」と、さすが魔法好きのTOMO もこれには目を輝かして食いついた。

結局、ここに居合わせたみんなにYUKIは異空間収納魔法のやり方を教えて、全員異空間収納スキルを手に入れた。それからも女子トークは遅くまで続き、それぞれが個性に合った休日を満喫出来ているようではあった。


 その次のお休みには、YUKIはMIRAGEと早速一緒に王都の図書館と古本屋をたくさん回って、興味深い本をたくさん読み、情報を手に入れた。大きな収穫の一つは、古代語で書かれた図書から、召喚魔法の具体的なやり方を手に入れたこと。もう一つは御霊とは、神が分け与えてくれる生きるためのエネルギーの事である。

 これらの大きな収穫により、YUKIはこっそり自室で、ホワイトタイガーの子供を召喚することに成功し、ペットとして飼うことにした。これはYUKIに莫大な癒しを与えた。なぜホワイトタイガーなのかと言うと、YUKIが召喚時にそう念じたからであった。子供の頃に出かけた動物園で初めて出会った時からその印象は強烈で、自宅にもマスコット人形を持っていたのだった。それと、もう一つの収穫で、御霊をコントロールするコツが掴めたため、気力を増やす訓練でもWill を追い越してしまうほど優秀な結果が出せた。それは、正に信仰の根本である、神の愛を信じること、信じ続けること、ひいては仲間を信じること、そのベクトルを明確にイメージすることで、御霊を簡単に可視化できるようになって、気力アップの上達に欠かせないことを悟ったからであった。気力は生きるために最も大事な力であった。

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