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屁の真相を暴け!?

「グワァァァァァァァァ!!」


突如、耳をつんざくような轟音が、京都駅構内に響いた。


「……な、なんや今の音……?」


大村が耳をピクピクと動かしながら辺りを見回す。


龍二が周囲の暴徒を確認しながら、首を傾げる。


「……何の音ですかね?まるで……何かが爆発したような……。」


しかし、大村は龍二を睨みつけながら一歩前に出た。


「おい龍二……お前やな?」


「え?何がですか?」


「屁、こいたんお前やろ?」


龍二は一瞬キョトンとしたが、すぐに顔を赤くした。


「は?何言ってるんですか、僕じゃないですよ!」


「ほな、誰や?屁をこいたのは?!ワシには分かる!この臭い、間違いない!!」


「だから僕じゃないですってば!」


すると、大村は鼻をクンクンさせながら、ゆっくりと志穂の方へと向き直った。


「……ほな、志穂か……?」


志穂は一瞬唖然とし、次の瞬間、怒りで顔を真っ赤にした。


「はぁぁぁぁ!?私がこくわけないでしょ!!」


「いやいや、ウチの霊障対策課に女子らしい女子なんておらんやろ……。」


「ちょっと!?セクハラですよ!私、ちゃんと女子だから!!」


「……せやかて、屁の音、結構デカかったで……。」


「関係ないでしょうが!!」


「ふむ……でも龍二も否定しとるし……なら、やっぱり志穂やな?」


「違いますっっ!!」


志穂は顔を真っ赤にしながら、大村を思いっきり殴る構えを見せたが、その時——


「ギャァァァァァァァ!!!」


「逃げろォォォ!!」


「助けてぇええええ!!」


突如として、駅構内の群衆が恐怖の悲鳴を上げながら、一斉にこちらへと押し寄せてきた。


まるで波のように、怒涛の勢いで三人の方へ向かってくる。


「な、なんやなんや!?」


「ちょっと待って!なんでこっちに向かってくるのよ!?」


「うわっ!?こっち来ないでください!」


三人は戸惑いながらも、その場で立ち尽くした。



そして——その異変の『正体』が、ゆっくりと姿を現した。


駅構内の奥——そこから、巨大な影がゆっくりと歩いてくる。


「ズン……ズン……。」


やがて、その影が明るい照明の下に現れると、三人は目を疑った。


「……え……?」


志穂が息を呑む。


目の前に現れたのは——


身の丈、優に二メートル半を超える筋骨隆々の鬼だった。


全身の皮膚は灰色に近く、巨大な腕には鋭い爪。


ゴツゴツとした岩のような筋肉に覆われた上半身。


そして——額には、一本の漆黒の角がそびえ立っていた。


鬼は口をゆっくりと開く。


すると、鋭い牙がギラリと光る。


「グルルルル……。」


喉の奥から、地の底から響くような低い唸り声が漏れる。


その威圧感に、大村、龍二、志穂の三人は完全に固まった。


「……な、何で鬼がこんなとこにおるんや?」


「班長……流石にまずいですよ……。」


志穂も額に冷や汗を浮かべながら、慎重に後退しようとする。


しかし——


そんな緊迫した空気の中、一人だけ違う反応を示した男がいた。


龍二は、目を輝かせながら、鬼を見つめると——


「す、すごい……! ほ、本物の鬼だ……!!」


感動したように、ポケットからスマホを取り出した。


「サイン……いや、写真一緒に撮ってください!」


鬼はさらにこちらへと歩を進めてきた。


圧倒的な威圧感に、三人は身を固くする。


「……お、おい龍二……そんなこと言っとる場合ちゃうぞ……。」


「でもこれ、絶対貴重な経験ですよ!? こんな間近で鬼を見ることなんて——」


「ええから、逃げる準備せぇっっ!!!」


「ちょ、待ってください!ちょっとだけでいいんで! 記念写真を!!!」



——カシャ。



シャッター音が響く。


次の瞬間——


——「ガアァアアアアア!!!!!」——


「……っ!!!」


空気が震え、天井の照明が微かに揺れる。


「バカタレ!! 鬼が怒ったやないか!!」


大村が叫びながら龍二を思いっきり後ろから引っ張る。


「ひぃぃぃぃっ! 何余計なことしてんのよ!!!」


「ハハ……お、怒らせちゃいました?」


「アホっ、どっからどう見ても怒っとるやろが!!!」


鬼の目がギラリと光り、龍二に向かって鋭い爪を振り上げる。


「うわあああああっ!!!」


「とにかく逃げるで!!!」


大村の叫びとともに、三人は一斉に駆け出した。




「どわぁぁぁ!! 追ってきとるやんけぇ!!」


「えっ!? 何で僕らだけ狙うんですか!?」


龍二が悲鳴を上げながら全力疾走する。


鬼は、他の者には目もくれず、一直線に三人を追いかけてくる。


「なんでこっちばっか狙ってくんのよ!? 他にも人いっぱいいるじゃない!!」


「龍二がシャッター切ったからやろが!!!」


「そんな理由で!? ちょっと心が狭すぎません!? もっとこう、器のデカい鬼かと……!」


「そんなもんあるかぁぁぁ!!!」


三人は猛スピードで京都駅の構内を駆け抜ける。


後ろからは、鬼の足音が響き、地面が振動する。


「おい龍二!! お前が撮ったんやから、お前が責任取れ!!!」


「えっ!? なんでですか!?」


「お前が悪いやろ!!」


「こ、こういう時は年功序列で偉い人が対応するべきですよ!! だから、班長お願いします!!!」


「なんでや!! こういうのは若いもんが先に立つべきや!!!」


「そうよ! 私の方が年上なんだから、龍二が行きなさいよ!!!」


「いや、それはおかしいでしょ!! 男女平等って知ってます!?」


「こんな時に言うことちゃうわ!!!」



三人が責任のなすりつけ合いをしていると——


「うわああああん!!! ママぁぁぁぁ!!!!!」


母親とはぐれたのか、男の子がぽつんと床に座り込み、大粒の涙を流していた。


「ママぁぁぁぁぁぁ!!!」


鬼は三人を追いかけていたが、その目線の先にいた子供に気づき、ゆっくりと足を止めた。


「……っ!!」


三人の足が、一瞬だけ止まる。


「…………!」


「ちょ、ちょっと……!」


「ど、どうしよう……!?」



一瞬の静寂。


そして——「お前ら、先に逃げろ!!」


大村が、子供の方へ向かって猛ダッシュした。


「えっ……!?」


龍二と志穂が驚く間もなく、大村は一直線に子供の元へと走る。


鬼が、ゆっくりと足を上げる。


「おい……どけっ!!」


大村は叫びながら、転んでいる子供を一気に抱きかかえる。


そして——


鬼の巨大な足が、振り下ろされた。


「っ……!!!」


ギリギリのところで、大村は子供を抱えながら横に転がる。


——ズシィィィィィィィィン!!!!!!


鬼の足が地面に叩きつけられた瞬間、駅の床が割れ、瓦礫が宙を舞う。


それでも、大村はしっかりと子供を抱いたまま、転がりながら衝撃を受け流す。


そして、振り返り——鬼を睨みつけた。


「……っ、ここはワシが止める……!!」


「班長……!!?」


「この子を連れて、はよ行けぇ!!!」


大村の声が響く中、鬼は再び巨大な腕を振り上げた。


「——っ!!!」


大村はすんでのところで子供を抱えて横に転がった。


———ズガァァァン!!!———


巨大な拳が地面を抉り、破片と土煙が舞い上がる。


「もうちょっとや、すぐお母ちゃんのとこに返したる……!」


そう言い聞かせるが、大村自身も焦っていた。

こんな場所で鬼と正面からやり合うのは無謀すぎる。


「班長!!」


駆け寄ろうとする龍二を、志穂が手で制止した。


「待って龍二!! 今行ったら巻き込まれる!」


鬼は一歩ずつ大村に迫る。


「……っ、ここはワシが止める……!!」


「班長……!!?」


「この子を頼む!!!」


——が。


「——そういうのが、一番ムカつくんですよ!!」


突如、鬼と大村の間に影が割り込んだ。


「——志穂!?」


「班長を置いて逃げられるわけないでしょ!!」


振り返ることなく、志穂はまっすぐ鬼を睨みつけた。


握りしめた拳が、わずかに震える。


(……使った後の地獄みたいな痛み……もう二度と使うもんかって、誓ったばっかじゃん……!!)


「……あー、もうどうにでもなれ……ッ!!」


——次の瞬間。


「どっせぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!」


彼女の拳が鬼の顔面を捉えた。


——ドガァァァァァァン!!!!!


衝撃波が周囲に広がり、駅の床が砕け散る。


鬼の巨体がありえないほどの勢いで吹き飛び、壁に叩きつけられた。


「お、おおおおお……!?」


龍二が目を見開く。


鬼は唸りながらゆっくりと起き上がろうとするが——


「……まだまだッ!!!」


志穂は一気に踏み込み、鬼の腹にもう一発、拳を叩き込んだ。



——ドゴォォォォォォン!!!!!!



鬼の背後にあった構内の柱が、一瞬にして粉々に砕け散る。


「……ッ……ッハァ……ハァ……ッ!」


全身に嫌な汗が滲む。


腕が痺れ、心臓が張り裂けそうなほど鼓動が激しくなっていた。


(あと一発……!!)


鬼がよろめきながら立ち上がる。


「いい加減……おとなしく……なりやがれぇぇぇぇぇ!!!」


志穂は最後の力を振り絞り、渾身の拳を鬼の顎に打ち込んだ。



———バギィィィィィィン!!!



鬼の首が勢いよくのけ反り、全身が一瞬硬直する。


そして——


鬼の体が黒い霧になり、弾けるように消えた。


「……ッ!!」


志穂は肩で息をしながら、力なく腕を下ろした。


「……やった……?」


「……倒したんか……?」


龍二と大村が目を見開きながら言うが——


その横で、志穂は膝をついた。


「あぁ…もう…使っちゃった……!」


全身がすでに悲鳴を上げ始めていた。


(……あー、これ……ヤバいやつ……)


もう筋肉の痛みがジワジワ来ている。

明日からまた、トイレすら這いずる生活だ。


「おい志穂!無事か!?」


近くにいた母親に子供を渡すと、大村はすぐさま駆け寄った。


「……無事なわけないでしょ……班長のバカ……!!」


志穂は大村を睨みつつも、どこか苦笑を浮かべていた。


穏やかな空気が流れる中――。


「えっ……え……嘘だ……そんな……」


突如、龍二の震えた声が響いた。


「なんや、龍二。ワシの活躍に感動したんか?」



だが——龍二の顔は蒼白だった。


彼が指差す先、京都駅構内の通路の奥。

そこに——



「グギャァァァァァァ!!」



「アオオオォォォォォン!!」



「グワァァァァァァァァ!!」



「ウオオオオォォォォォォォォォ!!」



「……嘘やろ……」



——一体じゃない。


——十体、二十体……それ以上の数の鬼たちが、ゆっくりとこちらに向かっていた。


「班長!こっちもです!!」


志穂が叫ぶ。


反対側の通路にも、同じように大量の鬼がいた。


絶望が、ゆっくりと喉を締め上げるように広がる。


「……もう、あかん。」


大村はぐっと拳を握りしめ、苦い顔で呟いた。


「すまん二人とも……ワシがスカウトしたばっかりに……」


「何言ってるんですか、班長。」


志穂が、疲れ切った体を押し上げて立ち上がる。


「最後までご一緒しますよ。」


「そ、そうですよ……!」


龍二も震えながら、スタンガンを構える。


「電圧を……最高出力にして……」


彼はゴクリと唾を飲み込みながら、震える手でスイッチを押した。


「や、やってやります……!」


三人は背中を合わせ、じりじりと迫る鬼たちを見据えた。


もう逃げ場はなかった。



——鬼たちの瞳が光る。



——喉の奥から、唸るような低い声が響く。



——そして、奴らが一斉に動いた——



その瞬間——


「———ッ!!?」



———突如、視界が白に染まった。———



「……なんや!?」


「うわぁ!!」


「きゃっ!!」


構内が、凄まじい閃光に包まれる。



——ドガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!——



雷鳴が轟き、爆風が三人を吹き飛ばした。



「な、なんやこれ……!?」


目を開けた大村が見たのは——


構内を駆け抜ける、まるで、龍のような雷光だった。



——バリバリバリバリィィィィッ!!!



青白い稲妻が龍の姿を成し、京都駅構内を縦横無尽に駆け巡る。


その鋭い軌跡が、次々と鬼たちを焼き尽くしていった。


鬼たちは抵抗する間もなく、雷の奔流に飲み込まれ——



———バシュゥゥゥゥゥン!!!



一体、また一体と 黒い霧へと霧散していく。


「……ッ!?」


大村たちは、ただその光景を呆然と見つめるしかなかった。


雷の龍が構内を駆け抜けるたびに、鬼たちの影が消えていく。



——ドガァァァァァン!!!



最後の鬼が雷撃を浴び、断末魔とともに霧となって消えた瞬間——


「グワァァァァァァァァ!!!」


——構内に静寂が訪れた。


「……な、なんやったんや、今の……?」


耳鳴りが残る中、大村が息を飲む。


辺りを見回すが、もう鬼の姿はない。


ただ、構内には黒い霧がゆっくりと漂うだけだった。


「……た、助かった……?」


「ま、まさか……誰かが……?」


志穂と龍二が顔を見合わせる。


そして——


「すまん、龍二……屁じゃなかったんやな……」


「……てか、今それ言うんですか班長!?」


「ん? いや待て……」


大村が顔をしかめ、鼻をひくつかせた。


「……でも、なんか……クサないか?」


「えっ……?」


確かに、ほんのりと……


異様な臭いが漂っている。


「えっ……まさか…班長…!!?」


「いや、絶対ワシちゃうぞ!」


「僕も違いますよ!? てか、こんな状況でそんなこと考えるのやめてください!!!」


「いや……違う……」


大村は真剣な顔で霧の中を見つめた。


「……この霧……臭うんや……」


「えっ?」


「つまり……鬼の匂いや……!」


雷で消えた鬼の残滓。


それが、まるで何かの死骸のような異臭を放っていた。


「……くっさ!! なんやこれ!!!」


「うわぁ、ホントに臭い!?」


「僕ダメです、気持ち悪い……!!」



——鬼が消えても、臭いは残る。


「……いや、結局屁みたいなもんやんけ!!!」


三人は臭いから逃れるようにフラフラと京都駅の構内を後にした——。



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