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一般人の俺を放っておいてくれないアイドル幼なじみ

作者: しゆゆ

ハッピーエンドです。

珍しくNLです。

俺の名前は村雨むらさめ れい。どこにでもいる一般人だ。

ほんっとうにどこにでもいるモブみたいな男なんだ。だから…誰かこの状況から助けてくれ。

「麗、 どうして私を避けるの?」

「いや、避けてるわけじゃ…」

「ううん、避けてる。私は分かるよ」

「そ、それより俺の上から降りてくれよ…」

「でも、降りたら逃げるでしょ」

「え、いやぁ…」

誰か助けてくれーーー!!!!



-------------------------

ごく普通の一般人の俺には、まったく釣り合わない幼馴染みがいる。

そいつの名前は七森ななもり 七深ななみ

生まれたときから家が隣だったという理由だけで、俺たちは幼馴染みになって、なぜか七深に好かれている。

七深は小さいときから可愛かった。俺は小さいながらも彼女が可愛いことを理解していたし、それとは関係なく七深とは仲良くしていた。


ただ…俺たちが中学生になった頃、とある出来事が起こった。

それは、七深がクラスメイトから告白された。

ただまあ、それ自体は特に問題ではない。問題だったのは、七深の断り方だ。

「私には麗がいるから。ごめんね」

俺と七深は、別に付き合っていたわけではない。普通に幼馴染みとして、せいぜい毎朝一緒に学校に登校してたぐらいだ。それだって、家が隣だし、中学生になってめちゃくちゃ美少女になった七深が変なことに巻き込まれないように一緒にいただけだ。


だというのに、七深が変な断り方をしたせいで、俺たちはカップル扱いされるようになったし、余計に七深がくっついてくるようになった。

そしてそれは、当時中学生だった俺には気恥ずかしかった。ただまあ、その時は俺が、

『あまりくっつかれると恥ずかしいから…もうちょっと我慢してくれると嬉しい』

って伝えたら、またある程度の距離を空けてくれるようになった。



中学の時はそれだけだった。

そう、そしてそれからも特に何もなかった。

なのに…。


気付いたら七深はアイドルとしてデビューしていて…。

いつの間にか大人気アイドルグループのセンターになっていて…。

そして何故か俺に馬乗りになっていた。



-----------------------

「ちょ、七深!一回落ち着こう!」

「私は落ち着いてるよ?焦ってるのは麗だけ」

「いや、そりゃそうだろ!何が何だか分かんねぇし…それに、大人気アイドルの七深がこんなことをしてるってバレたらとんでもないことに…!」

「別に、私は気にしないよ」

「俺が気にするの!!それに、俺らもう高校生だぞ!?

こんなことをするのは良くないって!」

「どうして?」

「っへ?」

「どうして良くないの?」

「え、えっとぉ、それは…」

言えるかよ!美人の七深に馬乗りにされるなんて、俺の俺が…なんて!

「と、とりあえず、降りてくれよ。話なら聞くからさ」

「じゃあ、手錠して良い?」

「て、手錠??」

「これ」

七深はどこから取り出したのか、右手に2つのおもちゃの手錠を持っていた。

「なんでそんな物を…わ、分かった。付けて良いから降りてくれ!!」




何故か手錠を手首と足首に付けられてベッドの上に転がっている俺と、その横に座っている七深。

おもちゃの手錠のくせに頑丈だから、俺が逃げる術はない。

なんとかここを切り抜けなければ…!!


「そ、それで、えっとぉ…なんだっけ?」

「どうして麗は私から逃げるの?」

「あ、あぁ…別に逃げてないよ?」

「…目、泳いでるよ?」

「そ、そんなことないっす」

俺は真っ直ぐ七深を見つめる。

「心拍数も上がってる」

「な、七深にさっきまでくっつかれてたからだよ。ていうか、見るだけじゃ分からないでしょ」

「麗、嘘ついてるよね?」

「ど、どうしてそう思うの…?」

「私の幼馴染みとしての勘が、嘘って言ってる」

「そ、そっかぁ」

それは言い訳できねぇ…!七深は昔から、無駄に俺の考えが読めるような節があったから…。


「麗ってさ、私のこと好きだよね?」

「それは、えっと」

「好きでしょ?」

「は、はい」

「私も麗のこと好き」

七深が顔を近づけてくる。

うおおおお、お前可愛すぎるだろ!?なんで俺なんかのこと好きなの!?

自分で言うのも悲しいけど、俺なんてどこにでもいるモブじゃん!

顔も中の中ぐらいだし、身長はバスケしてたから少し高いけど、勉強もスポーツも得意ってわけじゃないし!


「麗、どうして私のことを好きなのに、避けるの?」

「さ、避けてないよ」

「嘘。最近、休み時間に教室に行ったら、絶対にいないし」

「たまたまよ、たまたま…」

「一緒にお風呂入ろうとしたら断るし」

「それは小学生の時からじゃん!」

「一緒の布団で寝てたら、朝にはベッドの下で寝てるし」

「それは狭いから…というかなんで俺が知らないうちに俺の部屋にいるの!?」

「今だって目を背けてる」

「それはお前が前のめりなせいで、服の隙間から胸が見えそうだから…!」

「なんで?私のことが好きなら、見れば良いじゃん」

「いや、それは…!!」

七深が両手で俺の頬を捕まえた。

「麗、私と結婚するよね?」

「そ、それは…それはぁ…!」

「嫌なの?」

「え、えっとぉ、なんというか、あの、別に嫌とかじゃなくてね…」

「嫌なんでしょ」

「あー、そのー、ちがくて…」

「なんで嫌なの?」

「ち、ちがうって」

「なんで?」

「え、えっと」

「なんで?」

「……」

「なんで?」

七深と俺の額がくっつく。目の前に七深の目がある。

ひえっ、ゆるしてぇ…。

「それは…俺と七深は釣り合わないから…」

「はぁ?」

「ひぃっ」

怖い!!助けて!!!殺されちゃうよぉ!!!!

「釣り合わないって何?」

「だって、七深が気付いたらアイドルになってるし…」

「それは麗のためだよ?」

「えっ、俺のため?」

「うん。だって麗、中3の時に、『あー、アイドルと結婚できるとか羨まし。一般男性って何だよ…お前アイドルと結婚してる時点で一般男性なんかじゃねぇから…!』とか、ネットニュース見ながら言ってたじゃん。

だから、麗はアイドルと結婚したいのかなって思って」

「まさか、それでアイドルなんかに…?」

「うん」





…こわっ!?

え、七深ってこんなに重たかったっけ!?

今絶対、一瞬心臓止まったよ!?

ていうか、俺そんなこと言ったっけ…?覚えてねぇ…。


「そ、そうなんだ」

「なのに、アイドルになったのに、麗は全然手を出してこないし」

「それは、その」

「私のこと好きでしょ?なのに、釣り合わないって何?

私は初めて会ったときから麗と結婚するつもりだったのに、麗はいつまで経ってもプロポーズしてくれないし」

「初めて会ったときからって…あ、あはは、そんなご冗談を」

「嘘じゃない。私、初めて麗にあった日からずっと今日までのこと覚えてるよ」

「そんなまさか、だって0歳の時だよ?」

「覚えてる。麗ったら、私にキスしてきた」

「え、うそぉ!?」

「私は麗に嘘をついたことなんてない。後でお義母さんに聞いてみて」

「」


言葉も出なかった。

まさかそんなにも、七深が俺を愛してくれてたなんて…あまりにも重すぎる。

俺には、あまりにも。


いや、だって俺、ただの一般人だよ?

七深のことは可愛いから好きだけど、俺なんかじゃ釣り合わないって。

俺は普通に、普通に可愛い女の子と、普通に付き合えたらそれで…高校生なのに今後60年ぐらいある未来が確定するとか怖すぎるって…!!

それに人気絶頂のJKアイドルと結婚とか、俺ファンに恨まれるって…!!


「ふーん。そんなこと考えてたんだ」

「えっ!?うそ、今の全部口から出てた!?」

「うん。でもまさか、アイドルになったのが間違いだったなんて」

「いや、間違いってわけじゃ…」

「ううん、間違いだった。麗と結婚できないなら、アイドルなんて辞めるよ」

七深はポケットからスマホを取りだして、何かを打っている。

そして、打ち終わったら、恐らくどこかへ送信した。


すると…数秒後には七深のスマホに電話がかかってきて。

七深がそれを切ったら、スマホからSNSの通知音が、うるさいぐらいに連続で鳴り響いた。


「え、七深、お前何したの…?」

怖くなった俺が聞いてみると…七深がスマホの画面を見せてきた。

そこには、七深のSNSアカウントと、ついさっき七深が投稿したと思われる文章が表示されていた。


『【ファンの皆へ大切なお知らせ】

私、七森七海は、ただいまをもって、S3VEN+ST4RSセブンスターズを卒業します。

理由は、幼馴染みの男の子と結婚するためです。

以前から事務所とは連絡を取っており、既に本日24時で契約が切れるようになっています。

応援してくださっていたファンの皆には、急なことで本当に申し訳ないと思っています。

今までありがとうございました。

七森 七深』


「は、はあああああっ!?おま、何やって…!

今すぐそれ消せよ!!!」

「やだ」

「やだって…そ、それに、理由の相手って…」

「そう、麗だよ」

「いや、ちょ、マジで落ち着けって!?」

「私はずーっと落ち着いてるよ。

それより、麗」

「ちょ、だから馬乗りはやめろって…!」

「私、アイドルじゃなくなったよ。

だから…私も一般人」

「そ、それが何だよ」

「一般人同士、釣り合わないとか、ないよね?」

「な、まさかそれだけのためにアイドルを辞めたのか!?」

「うん。それ以外に理由なんかないでしょ」

「う、うそぉ…」

七深、その行動力はマジで怖いよ…。

「麗、結婚しよう」

「うっ…わ、分かった。結婚するから上からどいてくれ」

「本当に結婚してくれる?」

「も、もちろん。だから降りて…」

いつ結婚するかは分からないけど!!

とりあえず今は離れてもらって、手錠を外してもらわないと!!

そしたら、SNSの投稿も消して、間違えたってことにするから…!まだなんとかリカバリ出来るはず…!!

幼馴染みと結婚するために引退するアイドルとか、ファンからしたら幼馴染みへのヘイトがエグすぎるって…!!

「じゃあ、これに印鑑押してもいいよね?」

「へっ?」

またまた七深はどこからか、1枚の紙を取り出した。


紙の左上には『婚姻届』の文字。そして書類にはなぜか()()()()()必要事項が書かれていた。証人欄には俺と七深の母親の名前が…!!!


「っておい!何勝手に偽造してんの!?」

「証人欄は本物だよ」

「いや、夫になる人が嘘じゃん!!」

「でも、麗の字だよ」

「いや、ホントに書いた覚えないから!七深が書いたんだろ!」

「正解。麗、印鑑押しても良いよね?」

「え」

「結婚するんだし、いいよね?」

「い、いつとは言って…」

「今すぐ結婚するか、既成事実を作ってから結婚するか、どっちが良い?」

「おい、まさか…!」

「今すぐ結婚しないなら、私は麗の子どもを妊娠するね」

「ちょ、やめろって!それは本当にヤバいやつ!!」

「じゃあ、印鑑押して、市役所に提出しても良いよね?」

「うっ」

「いいよね?」

「…はい」

「ありがと。私、うれしいよ」

中学の卒業祝いにもらった俺の印鑑を、婚姻届に押す七深を見つつ、俺は冷静考える。

印鑑を押すために、七深は俺の上から降りている。

今なら、どうにか手錠を外しさえすれば、婚姻届も破れるし、SNSの投稿を消せるはず…!!

それには…!!


「な、なあ七深。どうせなら一緒に届け出に行きたいからさ…手錠外して?」

「…本当にそう思ってる??」

「う、うん、思ってるよ。

俺が七深を好きなのは本当だし、ちょっと早いとは思うけど、七深がどうしてもって言うなら、結婚もやぶさかではないし」

「そっか…嬉しいな。麗ったらいつまでも拒否するから、本当は嫌なのかと思った。

私のことを好きなら、問題ないよね」

「うん、うん!七深と結婚できるのは嬉しいよ!

だからさ、手錠なんか外して、一緒に行こうぜ?

今なら役所にも間に合う時間だしさ…!」

「分かった。麗も一緒に出しに行きたいなら、外すね」

「お、おぉ、ありがとう!!」

七深がポケットからおもちゃの手錠の鍵を取り出した。

よし、よし!外れた瞬間に、最優先で婚姻届を真っ二つにしてやる…!!


百歩譲って美少女の幼馴染みである七深と結婚することは、一般人の俺でもギリギリ、本当にギリギリ許容範囲ではある。

でも、高校生なのに今すぐにとか、子どもが出来たからとかは、許容できるわけがない!!


婚姻届を破って、SNSの投稿を消したら、七深のことを説得しよう!

俺が社会人になって、仕事が慣れたころ…25歳ぐらいなら喜んで俺からプロポーズでも何でもするからって…!!


七深が手錠の鍵穴に鍵を挿して、その鍵を回して…。


「え、なんで回さないの?外してくれないの?」

「ふふっ、気が変わった」

「えっ?」

「せっかく麗を好きに出来るんだから…既成事実を先に作っても良いよね?

だって今日結婚するんだし。数時間の誤差だよね?」

「え、ちょ」

七深は手に持っていた鍵をベッドの下に落とすと、俺の服をたくし上げた。

「ま、待って、話が違うじゃん!一緒に役所に行くんでしょ?今すぐ家を出ないと17時過ぎちゃうよ…?市役所って確か17時までじゃ…」

「あれ、麗ったら知らないの?婚姻届は24時間いつでも出せるんだよ??

いまから3時間ぐらいシテも、問題ないよ」

「…は?」

「なんか麗から、変なことを考えてそうな雰囲気を感じたからさぁ。

私の勘違いかもしれないけど、念のためね、念のため」

「ちょ、待って!念のためでする事じゃないって!!」

七深が俺のズボンのベルトを外す。待って、マジで色々ヤバいって!!

「大丈夫だよ。アイドルの期間は短かったけど、麗が社会人になって、仕事に慣れるぐらいまで保つぐらいのお金は稼いだし。それに、アイドルは辞めたけど歌手とかになっても良いしね」

「いや、そういう話じゃ、待ってって!!!」








半年前から、俺の名前は七森 麗です。

妻のお腹は、そろそろ出産も近付いてきているので大きいです。

幸せではあります。本当です。


ただ…一般人っぽく平穏に生きたかったなぁ。

ハッピーエンドです。

主人公は、自身の恵まれた環境に気付いてなくて、なんだかんだこの幼馴染は自分のもとに戻ってきてくれるって甘い考えを持ってます。

幼馴染は、主人公の考えを全て理解したうえで、己の物にするべく全力です。多少強引なのは、主人公がなんだかんだ自分のことを好きなことを理解したうえでの行動です。


ハッピーエンドですよね?ね?

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