23.再びの戦火
宣戦布告が出された以上、いつどこからスタセリタ軍が攻めてきてもおかしくない。
天馬騎士団の詰所は皆武装するのに大わらわだった。
私も鎧を身につける。更に帯剣する事にした。
剣はずっしりと重かった。敵の命を奪う。その覚悟を改めてしたかった。サリオス王を殺し、スタセリタを滅ぼせと女神の声を受けた私にはその覚悟が必要だと思った。
兵員輸送のための大きな幌馬車に乗って目指すはスタセリタとの国境。
天馬騎士団は皆叙勲されて騎士になったのだから、馬に乗って格好つけたいところだが、生憎レオン騎士団長以外馬術の心得がなかった。
斥候の報告によるとスタセリタ軍は既に国境を越え、旧ソニンク辺境伯領へと侵入しているとの事だった。
一刻も早く駆けつけスタセリタ軍を殲滅しないと……。
レシステンシアは考え、その思考の恐ろしさに気づいた。
でも、女神のご意思はスタセリタを滅ぼすこと……。覚悟のために帯びた剣に触れて、改めて自分がスタセリタを滅ぼすのだと心構えをした。
やがて旧ソニンク辺境伯領に入り、皆は警戒態勢を取った。
私は馬車を降りて、声を張上げた。
「私は女神の御使い、救国の乙女レシステンシア!スタセリタ軍よ、降伏してください!そうすれば命までは取りません!」
スタセリタ兵士の気配がする……。しかし降伏するつもりは無いようだ。
ややあって三方向から兵士たちが出てきた。
囲まれる……!
「はあっ!」
私は軍旗を振り回して距離をとる。
そして帯びた剣を抜き、一人の兵士を目掛けて振り下ろす!
ガキン!と音を立てて兵士の鎧に剣は吸い込まれていった。
もう一度、鎧で覆われていない首元を狙って剣を……!
「女神様が何を言ったか知らないけど、あんまり無理しない!」
マリアさんが代わりに兵士にとどめを指してくれた。
「マリアさん!」
残りの兵士二人もテオさんとジルさんが相手取ってくれた。
「そうだ、俺らを忘れんじゃねえぞ!お前だけの手柄にするもんか!」
「貴方様のことは私たちがお守りします……!」
「テオさん、ジルさん。ありがとうございます……!」
そうだ、わたしには仲間がいる。もちろんレオンお兄様も……。あまり気負いすぎちゃダメだ。
私のやるべきことをやる、怪我人の治療も忘れないようにしないと……!
その時、唐突に光の道が見えた。
「えっ!なに……」
これは女神様の導きなの?
「レシステンシア、どうした?」
レオン騎士団長が私の動きに目をとめた。
「光の道が見えるんです、女神様の導きかと……」
「光の道……。よし、その先に連れて行ってくれ、レシステンシア」
「はいっ!」
レオン騎士団長と騎士団員を伴って光の道の中を駆けていく。
女神様が導く先とは一体?
その先は敵の本陣だった。古い砦を活用している。
「私は女神の御使い、救国の乙女です!どうか降伏してください!そうすれば命までは取りません!」
お決まりの文句を叫んで砦の入口に立つ。
「…………」
返事は無い。
「レオン騎士団長、いいですね、突入します」
「ああ、天馬騎士団!いくぞ!」
おぉーと鬨の声を上げ、騎士団は砦の中へ散っていく。
私も砦の奥、総大将がいるであろう場所を目指して、進んで行った。
道中スタセリタ兵士に襲われる。
軍旗を降って距離を取り、剣で鎧の隙間を突く。すると兵士は血を流して倒れ伏した。
できる、私にも兵士を殺せる……!
皆の手だけ汚して、私だけ綺麗なままではいられない!
これでいいんですよね?女神様……。
私の問いかけは空に消えるばかりだった。




