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婚約破棄?良いでしょう、私は救国の乙女なので!  作者: 杏仁
第1章 救国の乙女、戦場に立つ
2/24

2.軍に入るとは

 王立軍は様々な領地を巡っては新入隊員の募集を行っている。

 レシステンシアもそこに合流するつもりだった。

 もちろん貴族が着るようなドレスでは行けないだろうから、持っている中でなるべく質素なドレスを選んで着た。最低限の身の回りのものだけ入れた鞄ひとつで出立した。


「軍に入るやつはいないか~!」

 軍人が呼び込みを行っている。そこへ私も近づいて行った。

「はい、ここにおります」

「はあ?貴族の嬢ちゃんがなんの冗談だ?冷やかしは要らねえよ!」

「冷やかしではありません!家が没落寸前ですので、出稼ぎに参ります」

「マジで言ってんのかお前」

 凄まれるが、ここで負けてはとても軍ではやって行けないだろう。足に力を入れて、主張する。

「真面目に言っております!どうぞ私を軍にお加えください!」

「……まあいいか、どうせすぐ逃げ出すだろ、馬車に乗れ!」

 そして新入隊員募集の質素で大きな馬車に乗り込んだのだった。


「わあ女の子だ!うちら以外にもいたよ!エマ!」

「リサ、本当に?まるで貴族みたいなドレスを着てるのね……」

 馬車の中には十数人の人が乗っていて、ほとんどが男の人だったが、その中でも二人の女の子が乗っていた。そして話しかけてくる。

「ええと、私はレシステンシアといいます。よろしくお願いします」

「レシステンシア?長い名前ねーもしかしてホントに貴族?」

 リサと呼ばれた黒髪の子がが興味津々に聞いてくる。

「ちょっとリサ、なにか事情があるのかもしれないでしょう?」

 エマと呼ばれた金髪のお下げ髪の子が咎める。

「いいえ、大丈夫です。確かに私は貴族でしたが、軍に入るからには同じ仲間です」

 そうして軍に入ることになった顛末、つまり婚約破棄の顛末を二人に話したのだった。

「王太子様ったらひどーい!そんなの許せませんよね!」

「婚約を破棄してしまうなんて、そんなことが……」

「リサさん、エマさん聞いてくれてありがとうございます……」

「でも救国の乙女ってホントですか?」

 リサが相変わらずの好奇心で聞いてくる。

「それが、いままでそういった奇蹟を起こしたことは無いのです……」

「軍に入ったことで、もしかしたら何か変わるかもしれないですよ」

 エマが励ましてくれた。


 そうこうしているうちに、馬車がどこかへ到着した。

 そこは王都だった。王都にある王立軍の本拠地。どうやら軍の新人教育はここで行われるようだった。


「わあー王都だ!うち初めて!」

「私もです……」

 リサもエマも感激していた。

「そこ!立ち止まらず進め!」

「はい」「はい!」


 進んだ先に居たのは、見知った顔だった。

「諸君!この度は王立軍への加入、嬉しく思う。まずはここで基礎訓練を積んでもらい、それぞれの部隊へ配属となる!皆の者、精一杯励んでくれ給え!」

「レオンお兄様?」

 レオン・バスラット伯爵令息。すくんだ金髪にに深い海色の瞳。私の幼馴染で二歳年上なので、お兄様と呼んで慕っていた。叙勲を受けて騎士になったと聞いていたけれど、新兵の教育係なのだろうか?

「レシステンシア!?なぜこんな所に!?」

「没落寸前の家のため、妹の治療費を稼ぐため、軍に入りたいのです」

「お前、ここがどういう所か分かって言っているのか?貴族の令嬢が来る所じゃない!」

「分かっているつもりですが……」

「これからお前は数ヶ月の基礎体力訓練、戦闘訓練を課される。そしてその後は部隊配属だ。お前は女だから衛生兵としての仕事が待ってるだろうが、それでも命がけなんだぞ!」

「命がけ……」

「そうだ」

「それでも誰かがやらねばならないことなのですよね?ならば私がやります」

「レシス……」

「救国の乙女と予言されて生まれてきましたが、私は何一つ国のために出来ていません。これからは軍で国のために働きます」

「本当にやるんだな?」

「はい」

「では入隊を認めよう。この三人を女子棟へ案内してくれ。明日からは早速訓練だからな」


 そうして、女の軍人に宿舎へと案内される。

 リサとエマが待っていてくれた。

「あのイケメンさん、知り合いなの?」

 リサに聞かれる。

「幼馴染なんです。まさかこんなところで会うなんて……」

「なんだか運命的ですね……」

 エマがうっとりしていた。

「でもこれで三人一緒に訓練できるね!よかったよかった!女の子少ないからさ、一緒に頑張ろうよ」

 リサが明るく言ってくれる。

「はい、そうですね!頑張りましょう!」


 そうして案内されたのは軍の宿舎、女子棟だった。

 少ないながらも軍には女の軍人がいるらしい。

 それなら私にも頑張れるかもしれない。勇気づけられた。

 リサもエマもそれぞれ割り当てられたベッドの上に居た。

 リサはゴロゴロとベッドの上を転がっていた。

「あー自分だけの寝床がある!素敵だわ!」

「?リサにはベッドがなかったの?」

「貴族のお嬢様には想像もつかないでしょうけど、馬小屋の藁の上で寝てたわ!」

「そんなことが!エマも?」

「私は兄弟たちと一緒のベッドだったわ……」

「そうなのね……」

 生活に困窮した庶民が軍に入る。自分でも考えていたことをあらためて思い出した。

「おふたりとも苦労なさってたんですね……」

「これくらい普通だよーでも軍に入ったからには、出世してガンガン稼いでやる!」

「私も、兄弟たちのために稼ぎます!」

 二人とも気合いはバッチリのようだった。

「私も、家のため、妹のため、稼ぎます!」

「うちら三人頑張ろー!!」

 リサが手を伸ばす。エマも私も手を重ねて、一緒に気合を入れたのだった。

感想、評価ありがとうございます!

明日も12時頃更新します!

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― 新着の感想 ―
[良い点] リサとエマの、まるで部活の新入部員のようなやり取りが可愛いかったです!でも彼女達も、覚悟を決めて入隊したんですよね。 3人とも、負けずに頑張ってほしいです。
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