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とあるオカルト板の書き込みにて

作者: 山村

 これは俺が小学生の時の話なんだが。


 父親が転勤族ってやつで某県に転勤したての頃。俺んちは転勤族っていっても前に住んでたところもそんなに都会じゃなかったし家が裕福だったわけでもないから周り近所に馴染むのにも時間はかからなかった。

 社宅の場所が結構な田舎で転入先の小学校は全校生と合わせても50人くらいのそれなりの田舎だった。

 だからなのかすぐに友達は出来た。イケメンでちょっと怖がりなA、可愛くて好奇心旺盛なB子、運動神経が良くて実家が寺のC。

 ちなみに俺は顔は普通で、転校続きでそれまで友達がいなかったから暇な時は勉強しかしてなかったから当時は周りの子より勉強ができた。

 暇な時が無いんじゃないかってくらい4人で色んな遊びをしまくってたし、色んな所に冒険もした。近所で行ったことのない場所なんてないんじゃないかってくらい。

 でも実際はそうじゃなくて、その地域には絶対に入って背景場所があって、それがCの実家の寺の近くにある竹林だった。村の人は勿論、俺たちも言いつけを守って絶対に入らなかった。

 大体一年くらいで転勤を繰り返してから、今回もそれくらいで転校しちゃうんだろうなって思ってた。それでも何かの間違いで転勤がなくなるように願っていた。


 それから一年が経って俺が4年生になった時、やっぱり親父が仕事の都合で違う県に転勤することが決まった。

 初めてできた友達に、優しい近所の人たち。勿論俺は離れたくないと駄々をこねたが無駄だった。

 A達にそれを話したら、みんな悲しんでくれて、Cが「絶対に忘れられない思い出を作ろう」って言い出して、そしたらB子が「あの竹林に行ってみよう」って言った。

 確かにそれは大冒険だし忘れられない思い出になるだろうと思ったけど、Aが「流石に大人も近寄らない場所だし、危ないから止めた方がいい」と止めた。

 俺もその意見に賛成だったけどB子とCは違った。

 B子は「ちょっと入ったらすぐに出て来ればいいよ」って言っていて、Cもそれに乗るように「前に親父が入っていくのを見たことがあるけど無事に出てきてる」と俺たちを説得し始めた。

 結局俺とAは折れて竹林へ冒険に行くことになった。

 決行日はその日の昼過ぎ、終業式が終わってランドセルを家に置いたらCの家の寺に集合。

 Cの家から竹林にまっすぐ行くと辛うじて人が通った形跡のある道があって、多分Cの父親が使ってる道だ。俺たちはその道を行くことにした。機転を利かせたAが迷わないようにとビニール紐を持ってきていて入る所の竹に結んで、Cを先頭に俺たちは竹林の中に入った。

 竹林というだけあって竹が多いが真っ直ぐに伸びているためか見通しはそれなりに良かった。

 特に危険なこともなく、危機感の薄れた俺たちは得意げにどんどん奥に進んでいった。

 最初は見通しも良かったが奥に行くにつれて竹の密度が濃くなっていって、Aが「そろそろ引き返そう」といった所でB子が奥の方に建物を見つけた。

 大きな祠のような、小屋のようなものだった。扉には数枚の御札らしきものが貼ってある。

 今にして思えば小さな祠だったが当時の俺たちには結構大きくて、小学校の鶏小屋くらいの大きさに感じられた。

 所々塗装が剥げていたが手入れはされているようだったその建物に巻き付けるようにしてロープが張り巡らされていて、いかにも封印されている風だった。

 きっとこれが立ち入ってはいけない理由なんだと察したがB子は持ち前の好奇心が勝ったのか「中に入ってみない?」と言った。

 今まで乗り気だったCも流石にそれはまずいと思ったのだろう俺とAと共に帰ろうとB子の説得を始めた。

 けれどもB子は「いくじなしの弱虫!」って罵って、俺たちの制止を振り切って扉に手を掛けた。

 鍵も付いていなかったからか扉はすんなりと開いた。中は物置のように中板が一枚水平に張ってある作りになっていて下には何もなく、上には埃を被った花瓶が一つあるだけだった。

「なーんだ。ただの花瓶じゃない」というB子の言葉に俺たちも花瓶一つに何を日言っていたんだと、少し気が大きくなった。

Aが「割っちゃおうぜ」と言って、俺もそれに乗って花瓶を地面に叩きつけた。今考えたら怖がりなAがそんなことを言う訳がなかったんだ。少し考えたら分かることなのに。

 しかし土が柔らかかったのか花瓶は割れず、それをた見たB子が「もっと力を入れなさいよ」って笑いながら、今度は石に向かって投げつけた。花瓶は派手な音を立てて割れた。

 中から丸められた紙が出てきたので拾って広げてみると、多分梵字? の書かれたお札のようなものだった。それを見た刹那俺は全身が粟立つのを覚え、「やばいから帰ろう」と提案したらAとCもそれに頷いてくれた。 B子は黙ったままだったけど満足したのか素直に俺たちの後ろをついてきた。

 Aの持っているビニール紐をいくら辿っても出口にたどり着けず、外すら見えなかった。不安に思ってビニール紐を手繰り寄せてると、こんなに弛ませていたかと思うくらいにスルスルと手元に集まっていくビニール紐。ついにはビニール紐の端が俺たちの眼前に現れた。

 しっかりと堅結びにしてあったはずなのに解けた跡があって、俺たちは竹林から出られなくなったのだ。

 その事実にAが泣き出しそうになった時だっだ。それまで静かだったB子が急に笑い始めたのだ。

  俺たちは君が悪くなってB子から距離をとって、恐る恐る声を掛けた。


「B子? 大丈夫か?」


 するとB子が今まで俯いていた顔を上げた。顔面は真っ白を通り越して青くなっていて、白目を剥いていた。

 そうて一言。


「……出してくれて……ありがとう……」と言った。


 俺とAは逃げ出さ王としたがCがそれを制止した。


「きっとあの花瓶の中にいた悪霊が取りついたんだ」と言って、震える手をポケットに入れた。


 取り出したのは一枚の御札だった。

 Cが父親に内緒で持ってきていたらしく、お札を見た途端に取り乱し始めたB子に「うおおおおぉぉぉ」と一心不乱に突進してCはお札をB子の背中にお札を張り付けた。

 するとB子は苦しみ始めて、しばらくするとB子の体からふっと力が抜けた。

 その様子にほっとしたのも束の間、次はAが白目を剥いてCに襲い掛かった。体格も運動神経もCの方が断然強いのにCが力負けしている。

 俺も必死になって引きはがそうとしたが全然びくともせず、邪魔だとばかりに鳩尾にAの肘が食い込んで俺はその場に倒れた。

 Cの手がポケットに伸びているのが見えたから、もしかしたらまだお札があるのかもしれないと俺も必死に手を伸ばしたらAの足に踏みつけられ俺はとうとう身動きが取れなくなった。

 だんだんと呼吸も苦しくなっていき、朦朧とする意識の中でCが口の端から泡を吹いているのが見えたその時だった。


「破ぁ!!」


 踏みつけられていた右手が解放され、苦しかった呼吸も楽になった。


「もう大丈夫だ」


 Cの父親だった。

 AはC父の腕の中でぐったりとしていて、倒れていたB子もC父に引き寄せられる。

 俺の右手は青紫色に腫れ、掴まれていたCの首元も紫色になっていてAの手形がはっきりと残っていた。

 C父がまた「破ぁ!!」って言ってB子とAの背中を順に叩くと、ウェッと黒い塊を吐き出して意識を取り戻した。

 吐瀉物を見ると黒い塊は髪の毛が大人の拳大に丸まった物だった。

 それから4人揃ってC父に付いて行くとすんなりと竹林から出られた。入った時には昼過ぎだったのにもうすっかり暗くなっていた。

 暗くなっても家に帰ってこないことに心配した親たちがCの家の寺に集まって、C父がもしかしたらと竹林を見に行ったら俺たちがいたそうだ。

 このことは村中に知れ渡り俺たち4人はこってりを絞られた。

 病院に行って、俺の右手は骨折、Cの首も鞭打ちの診断が下された。


 後に聞いた話ではCの親父は生まれた時から修行をしていてこれまでにも色々な霊的事件を解決してきたらしい。

 寺生まれってスゲェ……ってその時初めて思った。


 この間たまたま仕事でその村の近くを通ってこのことを思い出しから数十年ぶりにCに連絡したらB子一家は村での居心地が悪くなったのかあの後俺とは別の県に一家揃って引っ越したらしい。

 Aはあの一年後に父親が亡くなって母親の実家のある県に引っ越したらしい。

 Cはあれから寺の仕事の手伝いを積極的にして修業をして、東京の企業に就職するために今年上京するんだそうだ。

 久しぶりに会いたいと今度一緒に飲む約束をしたから今から楽しみだ。

 きっと親父さんと同じくらいスゴくなっているに違いない。

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