第1章 第13話
「どうする?電理。」
「逃げるしかないだろ。」
「だよねぇ?これはちょっと無理そう。」
陥没したビルの屋上には通常のオークの大きさの1.5倍ほどに肥大化し、紫色に変色した皮膚を持った特異なオークが立っていた。
(未来さーん!)
(どうしたの!?)
(ちょっとまずそう、まじで死にそうになったらまた連絡するから。)
(え、ちょっ、刹那ちゃ)
すまんな、未来さん。今統率で話せる余裕がないんだ。とはいえ後で謝んないとな。
「氷魔法!」
取り敢えず反応される前にオークを凍らせる、この間に逃げないとチャンスが無くなる。
「下まで降りるぞ!」
今にも倒壊しそうになっているビルの階段を駆け下りる。
「電理、あのオーク、氷から出られないと思うか?」
「正直言うと怪しいよな。」
氷を破壊して外に出てくる可能性がある。今までモンスター相手に魔法を使って脱出されたことはないが、あの氷が絶対に溶けない訳じゃないのは未来さんが溶かしてたから分かっている。
「さて、下まで降りたわけだが。これで追ってくるかどうか。」
「ガァァァァ!!!」
「駄目かぁ……けど視界からは外れたからこれで逃げられ」
そうして逃げようとした瞬間、目の前に砂埃が舞う。オークはビルの屋上から飛び降り、俺たちの前に立ち塞がった。
「ファーーー!死ね!」
「迎え撃つしかないか…」
迎え撃つとしてもこのままじゃ負けは濃厚。一人で三種ののモンスターからの猛攻に耐えてたやつに俺等二人で勝てるわけがない。
「装備作成!」
近距離でまともに扱えるのがまだピストルだけ。あとは電理の剣だけでこいつを捌き切らないといけない。
「やるぞ、刹那!」
「ああ!」
こうして俺たちが覚悟を決めた瞬間、オークがこちらに向かって走ってきた。ただ走っているだけなのにもう目では捉えきれなくなりそうなスピードだ。
「「身体強化!」」
こちらも身体強化で対応する、だが身体強化を使ったとしてもオークのスピードに追いつけない。
「俺がやる、援護頼む!」
電理が前に出て、俺が援護。前に鳥、カラスズメ戦でやったのと同じやり方でまずは戦うことになった。だが、
「電理!」
オークと斬り結んでいた電理が体勢を崩し、1mほどもある斧を振り下ろされていた。
「ガァァァァ!!!」
「は?」
オークの斧が振り下ろされる直前でハンマーに変化する、んな馬鹿な。もしかして、モンスターもスキルが使えるのか?
「なっ!」
間に合うか?咄嗟に氷魔法弾を放つ、それはオークの腕に当たり、一瞬だけ動きを鈍らせる。その隙に電理は雷魔法を使いつつ、体を翻し脱出する。
狙いを外し、地面に当たったハンマーは初めてこいつと遭遇したときのような甲高い音をだし、爆破を起こした。
キーーン
「み、耳がぁ!平気か、電理?」
「一応な、結構掠ったけど。というかあれ、何だと思う?」
「まぁ、多分あの感じ、ジェットハンマーだろ?」
ハンマーにブースターを取り付けて火薬の勢いで威力を上げるやつ、命中したらやばそう。
「ゲームでしかないと思ってたが実在したんだな?」
「こんな形でお目にかかることになるとは、スキルって本当になんでもありだな。」
つまり、あのオークはとんでもない移動速度でジェットハンマーをぶち込んでくるクソモンスターってことだな、死ね。
「どうやって倒す?」
「氷魔法で動き鈍らせてる間にワンパンとか?」
「できんの?」
「無理、その場の勢いとノリで勝つしかない。」
「お前、ノリって…」
「それしかないんだからしょうがないだろ!」
「ガァァァァ!!!」
ここは大通り、攻撃を避けるのに使えそうな障害物は残っている車ぐらいしか見当たらない。
「よいしょっと、これで効果が出るかどうか。」
取り敢えず車の裏に身を隠す、奴がハンマーを振り上げたらがら空きになる胴体に裏から氷魔法をありったけぶち込む。
「装備作成、サブマシンガン!おら、こっちだオーク!」
電理とやり合っているオークの横をサブマシンガンで撃って注意をこちらに引き付ける。
「ガァァァァ!!!」
電理が奴の頭上に待機して凍らせた瞬間全力で攻撃できるようにしている。ここからはオークがどんな行動をするかにかかっている。
「ガァァァァ!!!」
振り上げてきた!車ごと俺を吹き飛ばす気か、それなら勝てるかもな。
「氷魔法!」
このままなら確実に氷魔法は命中していた、だがオークは途中でハンマーを振り上げるのをやめ、足で車を吹き飛ばした。
「なっ!」
「ガァァァァ!!!」
そうして無防備になった俺の身体の左側にオークは容赦なくハンマーを横薙ぎにするように振り、命中した。
「あっ、がっ!」
その上、命中した瞬間ジェットハンマーの機構が動き、火薬の勢いにより、俺の身体はさらに加速しビルの窓ガラスに突っ込んだ。
「これ、しばらく…動けない、やつだ…」
直撃を防ぐためにハンマーが命中する直前にハンマーと俺の間に装備作成でスナイパーライフルを何本か作成してクッションにしたのは良かったがどっちみちとんでもない威力だった。痛すぎて意識が朦朧としてきた、足が震えて立ち上がることができない。さらに左腕もプランプランしていて動かない、確実に折れてる。
「刹那!」
俺にとどめを刺そうとしたオークを電理が食い止めてくれた。どうすっかな、これ。
「刹那、サブマシンガンをオークに向かって撃ちまくれ!どこでもいいから傷をつけろ!」
「装備…作成、サブマシンガン。」
言われたとおりにサブマシンガンを撃ちまくる。ほとんどの弾がオークの皮膚に弾かれる。だが、一発だけ目に当たり血が飛び出す。
「よくやった!このまま、こいつを感電させて殺すぞ!」
電理が俺に再び指示をする。電理ももうそろそろ限界らしい、剣の振りに先程までのキレがない。とっとと殺すしかない。
「…氷魔法弾!」
サブマシンガンで氷魔法弾をありったけ撃つ。しかし、オークは氷をいとも簡単に破壊し、拘束などまるでできていない。
「だが、全身に氷が付着すれば十分だ。氷よ、溶解しろ。」
俺の命令とともに付着していた氷が水に変わる。オークは全身ビチョビチョになった。
「…この状態で電気を流したらどうなるかな?電理!」
「任せろ!」
先程傷つけた眼球に向かって電理が剣を突き立てる。さらにそこに雷魔法を流し込む。
「ガァァァァ!?!?!?」
電理をはたき落とすためにオークはハンマーを振り上げる。だがそれは俺が撃ち落とす。
「そろそろ死にやがれ!!」
電理が雄叫びとともに剣をオークの身体を両断するように進めていく。しかしそれは途中で止められる。オークが最後の力を振り絞り空になった両手で剣を受け止めていた。
「…よぉ、オーク。」
俺も最後の力で立ち上がり、電理の持つ剣を一緒に押し込む。ついに剣を受け止められなくなったオークは氷魔法で生み出した水に流れた雷により黒焦げになりながら身体を両断され死んでいく。
「じゃあな、クソ野郎!!!はぁぁぁ!!!」
「ガァァァァァァァァ!!!」
「…おい、刹那!」
「あ?」
どうやら気絶してしまっていたらしい。電理に起こされて、目が覚める。
「!、痛った!!!」
腕がぁぁー!折れてんのに酷使しすぎたらしい。今までの人生で感じたことのないぐらいの痛みを感じる。
「取り敢えず、オークには勝てた。よくやった、おつかれさん。」
「それどころじゃねぇ!」
「…お前は本当に忙しいやつだな、少しぐらいは勝利の喜びを噛み締めたらどうだ?」
「噛み締めてて死んだらどうすんだ!?」
「そんな死に方するわけ無いだろ!」
本当に勝ったんだよな?こんなんでいいのだろうか?まぁ、この変な空気にしたの俺なんだけど。
「腕は何かで固定しないと悪化するよな。…そうだ、お前氷魔法で固定したらいいんじゃないか?」
「腕の周りを氷で覆うってことか?」
「ああ、そしたら滅多なことじゃ動かないだろ。三角巾はないな、一先ず俺の服破ってやるから、それで首から下げてろ。」
「えぇ、電理の?汗臭そー!」
「…もうやんねぇぞ?」
「冗談冗談、ごめんごめん。」
…やってみたはいいが氷を吊るってる変な人みたいになっちまった。甘んじてこれで行くしかないか。
「そうだ、未来に連絡取れるか?」
「取れるぞ。」
(未来さーん?)
(刹那ちゃん!?もう、心配したんだよ!平気なの?怪我してない?)
(お、落ち着いてくれ。心配かけてごめん、怪我は電理は全体的に軽傷だから問題ない。俺は左腕が派手に折れた!)
(何でそんな楽しそうなの!?重傷じゃない!?)
(いやー、別に動けるし問題なし!)
(うーん、こっちに合流してもらおうと思ってたけど予定変更。刹那ちゃんは連理さんの所に戻ってもらおうかな。電理も多分そっちの方がいいっていうよ。)
「電理?未来さんが俺は連理の所に戻ったほうがいいっていうんだけど。」
「やっぱ未来もそう思うんだな。よかったよかった、その確認のために連絡させたからな。」
(いやです!)
(駄目だよ、連理さんの所でちゃんと治癒魔法を受けて。)
「諦めてとっとと戻れ。」
電理が俺の肩に手を乗せながら戻れと促してくる。この人達は連絡が取れてないのに何で連携取ってくんだよ?
(…諦めて戻ります。)
(うん、そうして明日までしっかり休んでおいて。戻るのは連理さんに伝えておくから。)
(お願いします。)
「戻ることにしたぞ。」
「そうか、俺は新拠点の方に向かうから付いてはいけない。モンスターに見つからないように気をつけろよ。」
「了解、んじゃまた。」
「あぁ、またな。しっかり休めよ。」
そう言い電理はここから去っていった。俺も向かうとするか。
4日目「強敵」
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