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夏休み投稿! その二 「願い」

作者: 乃多留夢

初めましての人は初めまして!乃多留夢です!

『放課後組』のプチ連載が終わり、『願い』というお話を投稿します。

なのですが、私、『放課後組』を間違えて朝の六時に投稿してしまったみたいで…。午後六時のつもりだったんですが…。

さっき見返して「ひゃぁ!?」ってなりました…。馬鹿だぁ…。(泣)

そんな『放課後組』ですが、「放課後組知らなーい、まだ読んでなーい!」という人は、よければそちらも!

このお話は、少し重い話かもしれません。そういったものが苦手な人は、残念ですがこちらでお別れです…。

また他の小説でお会いしましょう!

さて、このお話は、ある女の子の願い事によって生まれました。

その願いは叶うのか、叶わないのか。

それは、読む人の捉え方次第かもしれません。

結末を想像して読んでもらえると嬉しいです!

それでは、本編に進んでください。

 身体を動かすと、ギシッとベッドが音を鳴らす。手に力を入れて身体を起こし、ゆっくりと目を開ける。カーテンの隙間から、チロチロと細い光の線が差し込んだ。

「…もう朝か。」

 別に朝になった確信があったわけではないが、体内時計では朝だと思う。そこまで寝過ごしたつもりもない。

 ベッドから降りることをせず、私、神木カナギ ミコはカーテンの方をぼーっと見つめていた。

「あら、神木さん、起きたのね…。」

 ガラッと音を立ててドアが少し開いたかと思うと、その向こう側から看護師がチラリと顔を覗かせた。そのままそーっとドアを開けると、その女性はゆっくりと私の方に歩いてきた。

「その…具合とか、悪いところは──」

「…ない。」

 その人の言葉を遮り、私はボソリとそう言った。

 すると「あ、あぁ、そう…。」とだけ言って、そのまま何も言わなくなった。

 私はふぅとため息をつく。

 カーテンの向こう側に広がる景色を想像しながら、私は黙っていた。

「えっと、朝食は、どうなさいますか…?」

 その人は余所余所しい言い方でそう聞いてくる。こういう喋り方をする人が一番嫌いだ。気持ちが悪い。

「いらない…。」

 私はその人の方を一切見ずにそう言う。大体こういう態度をとっておけば、居心地が悪くなってこの部屋を出ていくのだ。それでいい。

「じゃあ…また、お昼頃にでも…。」

 私の予想通り、その人は逃げるようにして部屋を出ていった。

 廊下の方から、看護師達の会話が、嫌でも耳に入る。

「ねえっ、どうだった?」

「全然。ホント態度の悪い子。すっごく無口だし…。」

「でも大丈夫よ。もう少しの辛抱。だってあの子──」

 

「──もう少しで死ぬんだもの。」

 

「可哀想よね…。でも普段の行いが悪いせいよね…。」

「ちゃんと薬も飲まないし、すぐ看護師に当たるの。」

「やっぱり、神様はああいう子に罰を与えるのよ。気をつけなきゃ…。」

 正直、聞きたくなかった。

 私がもう永くないのは、自分がよくわかっていた。

 身体はどんどん言うことを聞かなくなるし、少し動くだけで痛みも出始めていた。

 でも、それでも、あんな奴らに助けを求めるくらいなら、それこそ死んだほうがマシだった。

「神なんか、いないくせに…ッ‼︎」

 私は誰にも聞こえないほど小さな声でそう叫び、ベッドに拳を振り下ろした。ギシッ…と軋むような音がして、ベッドが揺れる。

 神は、私を救ってくれなかった。

 それどころか、私の周りには私の心を抉り続ける看護師達がいる。

 看護師は皆、私の事を嫌い、そして、私の態度が悪くなると、すぐ叱った。

 意味がわからない。苛立っているのは私の方。悲しんでいるのも私の方。苦しんでいるのも全部全部私の方。

 …なのに周りの大人達は、そんな私の態度に苛立ち、悲しみ、勝手に苦しむ。

 私が怒っている時にも関わらず怒ってくるし、私が悲しんでいる時に「アンタはこんなことで悲しむの…?」と言って悲しんでくる。頭がおかしくなりそうだ。

「なんで…なんで…ッ!なんでこんなことで苦しまなきゃいけないの…ッ‼︎」

 声を枯らして、私はそう叫んだ。ドアの向こうで、「また何か言ってるよ…。」などと看護師が言っているのも聞こえないくらいに、私は声を出して泣いていた。

 

 

 

「──というわけで!今日から君のお世話をする宮野ミヤノです!よろしくね!」

 病室内に、ハキハキしたその声が響く。

 私はその人物を見て固まる。誰だ、この人は。

「えーっと、神木さんだよね!」

 その質問に、私は顔をしかめたまま黙り、首を縦に振ることもなかった。

 しかし、目の前の宮野と名乗った人物は、笑顔を崩さなかった。私にこんな顔をされたら、大抵の奴らは嫌そうな顔をするというのに。

 私は探るように睨む。きっとコイツも何か企んでいるに違いない。

「あっはは、そうだよね、初めて会ったんだもん。緊張するよねー。私もすっごく緊張してる!けど、神木さんに会えたことが何よりも嬉しいよ!」

 そう言って、宮野は微笑みかけてくる。ますます何がしたいのかわからない。私が緊張?そんなことはない。ただコイツをよく思っていないだけだ。この表情でわからないのか。

 そんなことを考えながらも、私は睨むのをやめなかった。

「うーん、敵意剥き出しだねぇ…。そんなに私、怖い人に見える?」

 今度はしょんぼりとした顔をする宮野。

 正直、怖い人には見えない。だが、人は心の中で何を考えているかわからない。こんな顔をしながらも、私のことを嫌っているかもしれない。

 私は宮野をギロリと睨み続けた。

 

 

 

 宮野がやってきてから、数日が経った。

 相変わらずあの人の明るさにはついていけず、私は冷たい態度をとり続けていた。

「よしっ、じゃあ、一緒にちょっとお散歩しない?気分が明るくなるよ!」

「やだ。」

 私は宮野の方を見ずにそう言う。こんな奴に関わったってろくなことがない。私はゆらゆらと揺れるカーテンをぼーっと眺めていた。

「そうだな…、お腹とか空いてる?おやつとか、どうかな?」

「いらない。」

 ベッドの上でぎゅっと拳を握る。しかし、そんな私に気づく様子もなく、宮野は話しかけてくる。

「んーと…、あっ!じゃあ絵本とか──」

「──もういいってッ‼︎」

 私は宮野の言葉を遮り、声を荒げながらそう叫んだ。

 宮野は目を見開き、そのまま固まってしまった。

「なんで私なんかに構うの⁉︎毎日‼︎無視すればいいじゃん‼︎私の世話なんか適当でいいでしょ⁉︎みんなそうしてた‼︎だって私…、私…ッ‼︎」

 そこまで言ったところで、言葉が詰まってしまう。息がしづらい。苦しい。

 目の奥がジーンと熱くなった気がしたが、そんなのどうでもよかった。

 私は、もうすぐで死ぬんだから。

 私がそう言うよりも先に、宮野が口を開いた。

「じゃあさ。」

 宮野は、さっきとは少し違う、優しい声で言い始めた。

 そして、続けて、こう言った。

「私が神木さんと仲良くしたいから、っていう理由だったらいい?」

「は…?」

 意味が分からない。私と仲良くしたい、なんて言った看護師は、今まで一人もいなかったから。

「私はさ、ついこの前来たばっかりだし、上手くできない事とか嫌な思いさせちゃう事とか、あるかもだけど…。」

 私は、泣きそうになるのを必死に堪えて、宮野の言葉の続きを待った。

「でもね。私はそれでも、神木さんを少しでも笑顔にさせてあげれたらな、って思ったの。だから、しつこいかもしれないけど、これが宮野だ、って思ってくれないかな?」

 へにゃっと柔らかく笑う宮野には、嘘をついている様子はなかった。

 だから、私も、つい睨むのをやめてしまった。

 頬を雫が伝い、細い筋になった。

 私は、この時初めて、人前で泣いた。

「ぅぇ、ぇぐ…。」

 私の嗚咽する声が、狭い病室に小さく響いた。

「意味分かんない…。」

 私がそう言ったのに対して、宮野は優しく笑ってこう言った。

「分からなくてもいいよ。これが私だから。」

 

 

「どう?少しは落ち着いた?」

「…うん。」

 宮野が背中をさすってくれる。その手には、先程までの恐怖はなかった。

 私は窓の外の大きな木を見た。カーテンを、宮野が開けてくれたのだ。

「あ、あの木…。」

「ん?どれ?」

「あれ。」

 私はその木を指差して言った。

「あの大きな木?」

「うん。あの木が、姉さんとの一番の思い出の場所。」

「姉さん?神木さん、お姉ちゃんがいたの?」

 宮野のその質問に、私は木を見つめながら頷いた。

「姉さんは…。」

 思えば、この話を自分からするのは初めてかもしれない。

 そう考えながらも、私の口は自然と動いていた。

 きっと、宮野なら大丈夫、そう思えたのだろう。

「姉さんは、私と同じ病気で、もう死んでるの。」

 そう言い切ってから、私が宮野の方を見ると、宮野のパッチリとした目が大きく見開かれていた。

 宮野からの返事はなかった。だから私は、話を続けた。

「姉さんも、この病室の、このベッドで寝てたの。」

 私はそう言いながら、ベッドのシーツを撫でた。

「親は、私のことを病源だと思ってる。だから、『姉が死んだのはアンタのせいだ。』って、よく言ってた。」

 宮野の方を見たままそう言うと、宮野は顔がサッと青ざめ、口元を手で押さえた。

 こんなふうに感情を表に出すことができたら、どれだけ楽だっただろうか。

 そんなことを考えながら、私は天井を見上げた。

 すると、先程まで黙っていた宮野が口を開いた。

「だから、私にあんなこと言ったんだね。嫌なことがあって、実の親も信じれなくなって…。」

 宮野は泣きそうな顔でそう言って、苦しそうにしていた。

 そんな宮野をじっと見たあと、また窓の外に目を移した。

「あの木は、姉さんが生きてた時、ちょっとした噂があったの。」

「噂?」

「そう。この病院に通う人達の中での噂。『病院の近くの大きな木に、自分の下の名前の書いた紙と鈴を吊るすと願いが叶う』っていう噂。」

「あ、なんか聞いたことあるかも。」

 私は木を見つめて、その日のことを思い出していた。

「まだ姉さんが外に出ることができた時、二人でその木のところに行ったの。紙と鈴を吊るすために。」

「てことは、二人はもう吊るしてるの?」

「うん、吊るした。多分まだあると思う。『ミコ』って書いたやつと──」

 

「──『スズ』って書いたやつ。」

 

 姉の名前を口にするのが久々で、私はゆったりと目を細めた。

「『スズ』…っていうのは、神木さんのお姉ちゃんの名前?」

 それを聞いて、私は宮野の方を向き、少し眉間にしわを寄せた。

「そうだけど…。『神木さん』って呼ぶのやめて。他の看護師達と同じ呼び方で、なんかヤダ。」

 それを聞いた宮野はキョトンとした顔をしていたが、すぐににっこりと笑って、「はいはい。じゃあミコちゃんね。」と言った。

 そして私は、また姉のことについて話し始めた。

「二人で紙と鈴を吊るして、二人で願ったの。『二人の病気が治りますように』って。姉さんなんか、口癖みたいに『願い事叶うといいなぁ。』って言ってた。でも、無駄だった。姉さんは死んじゃうし、私もきっともう時期死んじゃう。それに、後から聞いた話だと、噂はこの病院に通う人達が少しでも気が楽になるようにって言って考えたデタラメなんだって。そりゃ、叶うわけないよね。」

 私はため息混じりにそう言った。

 大体宮野の表情は想像がついていた。だから、私は木から目を離さなかった。

 そして、そのまま、独り言のようにこう言った。

「だから私、願い事変えたんだ。どうせ叶わないだろうけど、せっかく吊るしたんだし、って。」

「なんて願ったの?」

 宮野がそう聞いてくる。私は目線を少し上げて、窓の向こうの空を見た。

「『神になれますように』って。あの木の『噂』を『本当』にして、色んな辛い思いをしてる人達の願いを叶えるの。そうすれば、少しは辛さがまぎれるかなって思ったの。」

「そっかぁ…。なれるといいね、『神様』に。」

 宮野の明るい声につられて、私も少しだけ表情をやわらげた。

 

 

 

 あれから何日も経った。

 相変わらず私は『神になりたい』と願い続けていた。

 私はすっかり身体が使えなくなっており、寝込むことが多くなった。

 それでも、宮野は毎日毎日ここに来て、話し相手になってくれた。

 けど、最近は忙しいのか、何日も連続で来ないことがあった。

「…。」

 一人だと、何も喋る気にならない。そうしていると、この静寂に飲み込まれてしまいそうになる。でも、そんなこと、どうでもよくなっていた。

 いっそ、このまま眠りについてしまおうか。

 ゆっくりと瞳を閉じようとする。

 けれど。

「ッ⁉︎」

 急に息がしづらくなる。ガタッという音と共にベッドが揺れる。

「ぅ、ぁ…ぅぐ…。」

 心臓を強く握られたような苦しさで、声が上手く出せない。

 ナースコールにも手が届かない。

 苦しい。誰か、助けて。

 このまま消えてしまうなら、最期に…。

 

 姉さんに会いたい。

「姉さんに…会いに…いきたい…。」

 残っている力を振り絞って出した言葉は、そんな言葉だった。

 ぼやけた視界。頭はもう、正常に動きそうにはない。

 

 最期に、近くで鳴った耳を刺すような高い機械音が、やけに遠くで鳴った気がした。

 

 

 

 

 

 ある看護師達の会話。

 

「ねぇ、僕。ここの木にその紙を吊るすの?」

 

「うん!おねがいごと、かなえてもらうの!」

 

「そっかぁ。貸してごらん。吊るしてあげる。…よいしょっと。」

 

「ありがと!じゃあねー!」

 

「いえいえ。どういたしまして。ばいばーい。」

 

「…あの噂、すっかり有名になったわね。」

 

「木に自分の下の名前を書いた紙と鈴を吊るしたら『最期』に願った願い事が叶う、ってやつ?」

 

「そうそう。やっぱり、この木は『神様』が見守ってるのかしら。」

 

「さぁ…。でも、あの噂が有名になる前から吊るされてたのもあるわよね。あの、ずっと謎になってるやつ。確かこの辺りに…。」

 

「あぁ、これでしょ?この──」

 

「──『ミコ』って書いてある紙と、『スズ』って書いてある紙。」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

最後が結構フワァっとした感じで終わっているので、そこから妄想を膨らませてくれたらいいなと思っています!

さぁ、そんな少女の『願い』ですが、皆さんは願い事ってありますか?

私は…そうですね…。

沢山の人に自分の書いた小説を読んでもらいたい、でしょうか…。

あ、でも、まずは名前だけでも覚えてもらいたい!

ん?私の名前…、そういえば読み方って書いてなかったですね。

どうも、『乃多留夢(のだるむ)』です。ぜひ覚えて帰ってもらえると…。

この名前、普通に『のだるむ』って打っただけだと、正しく漢字に変換することができないんですよね。

なので一時期『のたるむ』と打って、一文字ずつ変換してました。(笑)

正直、読み方は濁点をつけてもつけなくてもどちらでもいいんですけど、言いやすい方となると、『のだるむ』なんですよね。

好きな方で読んでください。(笑)

というか、よくよく考えると少し変わった名前ですね。『乃多留夢』って。

自分の名前なのに、こういうことを言うのもアレな気がしますが…。

あ、話が思いっきりそれましたね!すみません!

この小説の結末は、自由に想像してください!

願いは叶ったのでしょうか。そして、どのような形で叶えられたのでしょうか。

少女の本当の『願い』とは…。

その答えは…。

それでは!また次の小説で!

以上、乃多留夢(のだるむ)でした!!名前、覚えてくださいね!!

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