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旅の記憶 さすらい雲   作者: 報苔京
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記憶の中の旅日記「ちょっと怖すぎてこの選択肢は無理」

 加賀の名湯粟津温泉。

 この温泉は千三百年の歴史がある。

 この前行った加賀山代温泉とはちょっと違う風情。

 山代は文化の薫りだったが、こちらは花の香りがする。

 さてさて、全国いたるところにお祭りがあるものだ。

 街興し村興しも手伝って、結構メイン通りは気合いが入っている。

 ここの祭りは「おっしょべ祭り」 8月下旬が祭りらしく、温泉街のいたるところにピーアールしてあった。

「おっしょべ ってどんな意味なの?」

 部屋の配膳にきた仲居に聞いてみた。

「うーん・・・すいません」

 首をかしげ罰が悪そうに謝った。

「あれ~!仲居さんがそんなことでいいのかなぁ?」

「こちらの出身じゃないもので~」

 聞くと熊本天草の出なのだとか。

「温泉旅館の仲居さんって地元の人って少ないんだよね」

「よくご存じで。ワケアリ専門の仕事なんですよ~(笑)」

 大らかに笑いながらそう返した。

 後で持参したパンフによると「おっしょべー」とは「お末べー」の短縮で、粟津温泉の旅館で働いていた下女「お末」の物語。

  お末は12才。

 隣の旅館で働く竹松という青年のことが好きで好きでたまらない。

 ある夜、我慢できなくなり竹松の部屋に忍び込もうとするが、屋根づたいに飛び移ろうとして失敗、隣の庭に落ちてしまった。

 コトの次第を聞いた街中は、その大胆さに大笑い。 しかし同じ思いを抱いていた竹松だけは、自分の勇気のなさを悔い、お末をゴシップの渦から守るべくプロポーズしたのだという。

 まあハッピーエンドの恋物語なわけです。

 女性たちが着物姿で通りを踊り廻る。

「女性だって好きと意思表示してもいいじゃない!!」

 こんなスローガンなのかな!

 さすが全国温泉旅館百選。

 泊まった旅館の料理はうまかった。

 特にお造りは氷の皿に載せてあって、なかなか風情があった。


 翌日、車を跳ばし、一昔前の自殺の観光?名所東尋坊まで足を伸ばした。

  腰がひけながらも、危険柵のない断崖から、携帯を持つ腕だけ恐る恐る伸ばし写真撮影に成功。

 その気もなく、眩暈がして落ちた人も何人かいるんじゃないのかな、自殺とカウントされた人の中には。

 それくらい吸い込まれそうな断崖絶壁だった。

 やっぱり車の中での練炭より、自然の中に、母なる海に帰るほうがいいのではないのかな。

 変質者に捕まって手助けされることもないわけだしね。

 まあ、その気がないので早々にこの場を退散することにしましょうか・・だって本当に恐いんだから。

       (石川加賀・福井、初夏)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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