記憶の中の旅日記「大観だらけ?」
久しぶりに旅に出た。
山陰の旅。
島根県、あのドジョウすくいで有名な安来のそばに、これまた有名な美術館がある。
その名は足立美術館。
あまり絵画に造詣はないのだが、一度は行ってみたい美術館ではあった。
名園につつまれ、名画に染まる。
これがコンセプト。
日本庭園と近代日本画をゆったりと鑑賞できる。
開館したのは、昭和45年秋のこと。
創設者足立全康が自ら収集した、横山大観を中心とする近代日本画と、陶芸、彫刻、蒔絵、童画などの魅力的なコレクションの数々が館内にちりばめられている。
そして日本の神々のふるさとと言われる出雲の国の恵まれた自然を借景に、四季折々の表情を醸し出す13,000坪の日本庭園が館をやさしく包む。
全康氏は、若い頃から庭園にも大きな関心を持っていて、美術館を造るにあたって全国を巡って木や石を捜し求めたという。
日本庭園ランキングで、足立美術館の庭園が毎年のように「庭園日本一」に選ばれている。
全康氏はこの広い台地を自らのキャンパスにして、日本絵画を描いていたのだろう。
この美術館のすばらしいところは、いわゆる金にものをいわせて世界の名画を掻き集めたみたいな宝飾さを感じさせないところだと思う。
要するに創設者のポリシーがしっかり根底にある。
榊原紫峰や横山大観コレクションはおそらく世界一らしい。
「紅葉」「龍躍る」「海潮四題・夏」など、代表作を含む選りすぐりの名品が館内に計り知れない重厚感を漂わせていた。
夜は鳥取のちょっと寂れてしまった皆生温泉に宿をとった。
玉造温泉に押され気味ではあるが、ちょっと塩っぱい露天風呂は程よく身体を癒してくれる気がした。
しかし、最近はちょいと温泉通に近づいたせいか、設備が整ったスパよりも、田舎の人里離れた小さな温泉宿が現実逃避としてはベストな気がする。
とはいえ日本海の潮の香りと波の音を枕にゆったりとした空間を満喫できるなんて、なんと至福な瞬間なのだろうと実感した。
ふとこんなことを思い出した。
日本人と欧米人の音に関する反応の違い。
言葉という音・・これは両者とも左脳が反応。
楽器の音・・・・これは両者とも右脳が反応。
雑音・・・・・・これも両者とも右脳が反応。
虫の声、波の音、風の音・これは結果が別れる。
欧米人は右脳、日本人は左脳が反応する。
つまり、日本人は自然の音を自然からの語りかけと捉える本能があるらしいのだ。
なかなか面白い実証結果だよね。
窓を少し開け、もう一度波の音、風の音に耳を澄ませた。
「ご苦労さん。そして、おかえりなさい。また旅を始めようよ」
そんな語りかけに聴こえた。
(島根安来・鳥取皆生、盛春)




