表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅の記憶 さすらい雲   作者: 報苔京
45/66

記憶の中の旅日記「温泉地に文学あり、とはいえ暑すぎる」

 東京は世田谷、環状8号線沿いに蘆花ロカ公園という大きな公園がある。

 京王線には芦花公園駅もあり、一帯は東京の高級住宅街なのである。

 長く東京に住んでいるが、若い頃はなんで芦花なのかあまり気にならなかった。

 

 群馬県伊香保温泉郷を訪ねた。

 夏休み前の休息、翌日近場でゴルフの予定もあり、これ幸いとネットでいろいろ調べた。

 伊香保にしようか草津にしようか磯部にしようか・・・。

 泊まったのは伊香保の気品あふれる旅館。

 入り口にはいきなり皇太子来館の写真が飾ってある。

 来館は数年前のことらしい。

 ほー、宮内庁御用達の旅館なんだぁ、まあ老舗だからなぁ!!

 100年以上経過した建物は天井が低い。

 各部屋のドアは重厚で趣きがある。

 部屋に通され仲居に聞いた。

「皇太子と雅子さまは何処に泊まったの?貴賓室とかあるの?」

「いや、特別な部屋はないんですよ。なにしろ古い建物ですから。3階の部屋を3部屋利用されました」

「露天風呂も使ったのかな?」

「ええ、確か!」

 話を聞き入るうちに、なんだかわけもなくそうかそうかとワクワク感が増してきた。

 旅好きとしてはこの手の話が大好物なのだ。

 旅通の小ネタになりやすい。

「ここは徳富蘆花トクトミロカが利用してた由緒ある旅館なんですよ。あの不如帰ホトトギスはここで書き上げたんです」

 備え付けてある文庫本を指差し説明を加えた。

 晩年病を患いここで療養を続けていたが、結局その部屋で臨終を迎えたのだという。

 徳富蘆花トクトミロカ・・ 何人ぐらいが知ってるだろう。

 明治時代を代表する文豪。

 国木田独歩クニキダドクホ田山花袋タヤマカタイとともにロシア文学に精通し日本のトルストイとも称される小説家なのだ。

 文庫本の解説を読み、初めてあの芦花公園と繋がった。

 そうだったんだ。

 あそこが蘆花の生家だったんだな。

 

 さてさて、おぼろげながら唯一理解しているそんな徳冨蘆花のエピソードをご紹介しよう。

 東大講堂で東大生を前に演説した蘆花の有名なスピーチ。

 親友であったジャーナリスト幸徳秋水コウトクシュウスイが謀反罪で政府に逮捕され、テロリストとして裁判後即刻処刑された。

 蘆花は徹底的に政府を非難、彼の名誉を回復すべく各地で講壇に立ち支援を要請した。


「諸君、謀反を恐れてはならぬ。謀反人を恐れてはならぬ。自ら謀反人となることを恐れてはならぬ。新しいものは常に謀反なのである。

 人が教えられたる信条に執着し、言わせらるるごとく言い、させらるるごとくふるまい、一切の自立心を失うとき、すなわちこれは霊魂の死である。

 しかし我らは生きねばならぬ。生きるために謀反しなければならぬ時がある。自己に対して、また周囲に対してもだ。

 諸君、西郷も逆賊であった。しかし今日となってみれば逆賊としての西郷が歴史上存在するだろうか。 

 幸徳らも誤って乱臣謀反人となった。しかし百年先の歴史は必ずその結末を惜しんで、その志なさざるを悲しむであろう」

 

 うーん、確かにそうだな。

 明治維新も成功したから革命維新であって、失敗していれば、江戸幕府に対する単なるテロではあったわけだ。

 後世の歴史が後追いでその正しさを証明する。

 まあ現状に日和るなということなんだろうな。

 しかし、困った。

 読み終えてもいないのに、夕食は何だろう?と脳幹が反応している。

 群馬と言えば尾瀬の清酒龍神だよな、と徐々に現状に日和っていく本能を止められない自分との葛藤が始まってしまった。

          (群馬・伊香保、猛暑)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ