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旅の記憶 さすらい雲   作者: 報苔京
35/66

記憶の中の旅日記「恋の街札幌♪♪」

 札幌大通公園を歩いている。

 今がベストシーズン・・・のはずだった。

 色とりどりの花々が園からはみ出すほど咲き乱れている・・・はずだった。

 確か例年このタイミングは、散り始めのサクラと咲き始めるライラックのピンクと白のコントラストが絶妙のタイミング・・のはずだったのだ。

 だからわざわざ、五月中旬というタイミングで札幌出張入れたのに・・・。

 残念ながら暖冬の影響か、サクラは消え去りライラックだけがどうだとばかりに咲き誇っていた。

 とはいえ、札幌の代表といえばやはりこのライラックなのだろう。

 別名リラともいう。

 仕方がないので、ここでちょっと良い話を。


 100年前、ライラックの苗木がアメリカからサラ・クララ・スミス女史によって持ち込まれ、彼女の開いた女学校に植えられた。

 その後、大戦によりキリスト教の女学校は、日本国政府においては批難の対象となり、当時の校長も何度も警察に連行されたそうだ。

 サクラに対しライラックは敵国の国花ということで全て伐採、そして焼かれた。

 だが、何度焼かれてもその根元から新たな芽が出て増えてくる。

 それが今では札幌の象徴の木となった。

 北海道大学の植物園には、当時持ち込まれた苗の1つが焼かれずに残っているんだけど毎年満開の花を咲かせるそうだ。


 良い話でしょ!?

 ということで、ライラックの可愛らしさを満喫し、木漏れ日のベンチに腰掛けた。

 片手には札幌が生んだもうひとつの有名人、渡辺淳一の文庫本を携えている。


「リラ冷えの街」

 なかなか味のあるストーリー。

 男と女、どろどろ感もまた絶品である。

 恋愛とは何なのか?

 子供というのは本当に愛の結晶なのか?

 それとも情念の結果なのか?

 日本においては人口減少による少子化対策が叫ばれている現在、医者でもある作者は、数十年も前にもうこんなことを妄想していたのかと想像すると、ある意味感動すら覚えてしまった。

 よし、であるならモノ書きの端くれ、ボクも渡辺淳一ワールドに挑戦、唐突にもショートストーリーでも書いてみるとするかな~。


「KITA ホテル」

 さざなみのような心地良いうねりが、まだ躰中をさ迷っていた。

 全身で受け取った良質の快感が、血管を通り何度も何度も体中に巡回されているようだ。

 薄目を開けると君はもう鏡の前で身支度を始めている。

 時計をみやり、時間か?とつぶやいた。

 振り返りながら、目じりと口元だけで君はいたずらっぽく微笑んだ。

 ついさっきまで本能のすべてを包み込んでいたその唇は、メイクを終え潤いをふたたび蘇らせていた。

 パールピンクのブラウスの胸元がはだけ、純白のランジェリーがまるでもう一度誘うように鏡に写っている。

 目を伏せ、いま一度陶酔の世界に引き戻したい願望を抑えこんだ。

 ホテルを出て、二人は絡みつくように表通りまで歩いた。

 揺らめくように惜しむように彷徨うように、ただゆっくり歩いた。

 通りすがりのタクシーを止めると、「行くね」とだけ言い残し、君は急ぐように後部座席にすべり込んだ。

 走り去る窓越しに陰りを写し、それでも必死に笑みを繕いながら手を振っている。

 余韻を残さなかったのがせめてもの優しさなのか。

 かすんでいくテールランプに手をかざすと、急に止めどない愛おしさがこみ上げてきた。

 底冷えの残る夜風が、歩道沿いに咲く薄紅のライラックを揺らしている。

 そんな残像を振り払うようにタバコを取り出し唇に近づけると、指先に君の残り香がかすかな余韻を醸し出していた。

 流れいく煙を見つめ、ひとつため息をつくと、たまらなく躰中が熱くなった。


 結構良いデキかも・・・と自画自賛!!

 さすがに恋の街札幌なんだなぁ。

 しかし、まあここは花より団子ということで、ランチは二条市場内にあるウニイクラ丼を食べました。

 なんと2700円也。 

 ちょっとぼったくり過ぎなんじゃないの?が正直な感想ですが。

           (札幌、晩春)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



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