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旅の記憶 さすらい雲   作者: 報苔京
22/66

記憶の中の旅日記「これぞ苦行者」

 徳島で巡礼の続きをした。

 今回もレンタカーを使い三番札所からいけるところまで行こうと思った。

 順調に11番まで到達。

 つぎは難所の十二番焼山寺。

 徳島市内から車で2時間の山の頂上。

 なんでこんな処が十二番札所なの?

 愛媛の岩屋寺といい勝負。

 岩屋寺も車で2時間かかり、しかも駐車場から急勾配の坂道を300メーター程上り、さらに三百段ちかい階段を登った。

 途中で足が吊ったのを記憶している。

 八十八ヶ所の中には、こんな具合にあえて苦行を強いる場所があるんだという。

 雲行きがどうもおぼつかないが、もう引っ込みがつかない。

 意を決し、車を飛ばして登っていくと、チラホラ小雪が舞い落ちる。

 嘘だろう、ここは四国だぜ。

 運転は上手いほうではない。

 不安が募る。

 何度やめようと思ったことか。

 でも弱る気持ちを奮い立たせたのは、その道をひたすら歩いて登っている巡礼者たちがいたこと。

 苦闘の末、焼山寺の駐車場に到着。

 しかしそこからさらに1キロ歩いて山頂をめざさねばならなかった。

 ちらほら粉雪が舞う中、数分ほど歩くとスーツ姿は真っ白に変貌。

 まるで巡礼衣裳に着替えさせられたようだった。

 革靴で滑るために、木の枝を杖がわりにした。

 必死の思いで納経所に辿り着いたときは終了時間である五時数分前だった。

 来るべきではなかったともう1度思った。

 帰りの下り道はおそらく凍結してるだろう。

 不安が募った。

「仕事の合間にスーツ姿でくるところじゃなかったですね」

 納経所で我が身の不幸を言い連ねると、とおりがかった坊主がにこっと笑って「これもご縁というものでしょ、泊まっていかれますか」とのたまわった。

 取り急ぎ朱印をもらい、お気をつけての言葉を背に受けて、転げるように駐車場まで駆け下りた。

 もう身なりなど構ってられない。

 車に乗り込みヘッドライトを点灯し、スリップを繰り返しながらおそるおそる山を下った。

 村落にたどりついたときはもうどっぷり陽が落ちていた。

 ちょっと無鉄砲だったと反省しながらも無事の下山に胸を撫で下ろした。

 なるほど、ちゃんとこんなボクにも苦行を強いるわけだ。

 これが巡礼なのかと思った。

 タバコに火をつけた。

 ゆっくり吸い込み、暗闇の中に白く浮かぶ山頂を振り返りながら、予定外の四国の雪景色をしっかり心に刻んだ。

         (徳島・神山町、早梅)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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