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朱雀院  作者: 夢野ユーマ
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龍王の娘

その年は、7月7日、9月9日の節句も小規模ではあったが、役人たちの禄は十分配られた。


役人の中にも、死んでしまった者もいた。


朧月夜は暇をもてあまし、源氏女御や、紫の女王とよく絵を描いていた。


復興は忙しく、(薄雲女院、朝顔の姫宮、一条らは反対したが)帝は源氏に上洛を命じた。

すると、明石の君が出産して落ち着いたら、と返事があり、紫の女王は苦悩に沈んだ。


公務多端ではあったが、帝は紫の女王を慰めた。


「お辛いであろうが、皇族が皇孫を残すのは大切な仕事。源氏の君を許してやってたもれ」


多くの民が喪に服していたため、活気のない年末年始であったが、源氏の君から年末に、明石の君が姫を産み、健やかであると知らせがあった。


また、筆者が拙い故、書き忘れていたが、伊勢の斎宮、六条御息所からも帝にたよりがあった。


「伊勢は雨風が強いぐらいだったのですが、私の祈りが足りなかったのでしょうか?陛下のご叡慮により、過分にいただいた食糧や黄金、白銀も、伊賀、大和経由で都にお届けいたします」


六条御息所は源氏の君を案じていた。


「大嵐で、都に被害が出たとか。御見舞い申し上げます。ところで、源氏の君はご無事だったけれど、田舎娘をはらませたと言うのは真実なのでしょうか?心が千々に乱れます」

六条御息所もたいした悟りは開いていないようだった。


そんな都で、源氏の復活は何か良いことになるかも、とどちらかと言うと好意的に見られた。

そして、上洛してきた源氏の君と明石の君が参内して、挨拶することになった。


帝、母后、一条、彩子、源氏女御、朝顔の姫宮、朧月夜、紫の女王、花散里夫人、麗景殿女御、末摘花女王、太政大臣、左大臣、宰相中将、髭黒は二人を待ち受けていた。


一条と朝顔の姫宮は賢明にも黙っていたが、彩子と朧月夜は「どんな田舎っぺか、笑ってやろう」「女子『おなご』がいなくて、ゲテモノに手を出したのであろう」と悪しざまに言っていた。

源氏の君の女君、特に紫の女王さんは思い沈んでいた。


そこに、「源氏の君と明石の君、姫君が参られました」と報告があった。


そして、入って来た二人を見て、人々は言葉を失い、衝撃を受けた。


源氏の君は衰えるどころか、今様『現代風』の金色の上着で、以前はどこか悪童のようなところがあったが、大人らしい落ち着きを身につけていた。

そして、明石の君は蝶、鳥、花が刺繍された銀色の上着だったが、薄雲女院、紫の女王、朧月夜、一条に匹敵する豪華で、妖艶な美女だった。頭の良さそうな、気の強そうな女性だった。


「源氏の君よ、姫君が生まれたとか、見せてたもれ」

帝が声をかけると、明石の君が姫君を抱いて、にじり寄ったが、驚くべきことを奏上した。


「陛下、若宮さまが天子さまになる時は、この子を皇后にして下さいまし」


人々はざわめいた。あまりにだいそれた願いに思えたからである。また、人が亡くなりやすかったこの時代、赤児同士の婚約など現実味がなかった。

しかし、明石の君はすでに決まったことのように、淡々と奏上した。

帝は即答出来ず、「この子の無事を祈ろうぞ」と仰せになった。


彩子は、明石の君を思い上がっていると思い、かつて自分がされたように、学問的に難しいことをいろいろ尋ねたが、明石の君はスラスラ答えた。そして、琴、琵琶の演奏、香の調合、華道、和歌なども巧みにこなした。


そして、何より、明石の君は全員に豪華な贈り物を用意していた。

黄金、白銀、宝石で作った飾りものを前に、女子『おなご』たちは言葉を失った。


また、光源氏が語ったのだが、明石の君の父、明石の入道は莫大な富を誇って、都の富豪以上に蔵町を持ち、大嵐の時も、すぐ民を救済したと言う。

また、明石の君の母、明石の入道の妻は古『いにしえ』の中務の親王と言う人の子孫で、明石の君は血筋も申し分ないと源氏の君は主張した。


その日は源氏の君のかかり『出費』で、豪華な祝膳が出された。帝は例のごとく、戌の刻(午後8時)ごろには、源氏女御と退出した。

紫の女王さんは明石の君と帰りたくないと嫌がったが、一条や花散里夫人になだめられ、帰って行った。


だが、その夜、帝の玉体に変事が起こった。帝は悪夢をご覧になったのである。


はるか後の世、日の本は武者の世となっていた。そして西日本と東日本の武者が争い、その果てに、西海で、まだ幼い帝が祖母の尼に抱かれて入水すると言う恐ろしい夢だった。


まだ夜が明けぬうちに、源氏女御が一条を起こしに来た。「みーかーどー」と仰せになるので、帝に変事があったか、と一条はかけつけた。


すると帝は高熱を発していたが、意識はあった。「い、戦の夢を見た・・・」と仰せつつ、漢方の何々を調合して、茶とまがりの水と一緒に持って来てたもれ、と仰せになった。

午の刻(正午)まで、安静にしていれば良くなるとも仰せになった。


その言葉通り、昼までに帝は回復し、食事はとらなかったが、薬を服用。三、四日経つと、食事もとれるようになった。


そんな帝に一条はうかがった。


「あの・・・悪夢を見たこと、明石の君と何か関係があるのでは?」


帝は驚いた。


「何故、分かったのです?」

「私は霊感もありませんし、迷信も信じておりませぬ。しかし、明石の君を拝見した時、最高の貴婦人ですが、どこか、とても恐ろしい方のような気がいたしました。入内どころではない、だいそれたことをお考えになっているような気がいたします」


帝はうなずいた。


「それを彩子などに申してはなりませんよ。我も同じように感じました」


帝と一条は手をとりあった。

昨日祝日、今日土曜日と更新を頑張って、ちょっと疲れてしまいました。明日は、昨日、今日ほど更新出来ないかも知れないですが、よろしくお願いします。次回は朱雀院が退位します。

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