表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/68

教え子達からの恩返し(前編)

 今日はバイトが休みなこともあって、勇は昼間からドリームファンタジーにログインした。

 

「やっぱ少ないな」


 さすがは平日の真昼間だけあって、プレイヤーはまだまだ少ない。

 その少数のプレイヤー達も勝手がわかっているのか、どこかに向かって真っ直ぐに歩いているし、助けを求めているような初心者は一人も見当たらなかった。


(声を掛けてくる人も居ないし、今のうちに森以外のエリアでも探索してみるか!)


 そう考えた勇はマップを見ようと、メニューウインドウを開いたところ――


「おっ、いたいた! おーい、おっさん!」


 後ろから声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには見覚えのある顔が二つ。


「おお、カイト君にエミさん!」


 初日に出会ったチャラいカップルだ。

 初期装備の質素な服装とは異なり、おしゃれな服に身を包んでいる。


「よう、おっさん! ようやく会えたぜ!」

「おひさー! マップに表示されたから飛んできたよ!」

「うん、久しぶり……って、わざわざ会いに来てくれたの?」

「おう! 渡したい物があってよ!」


 カイトはすっかり慣れた手つきでメニューウインドウを開き、何度か指を動かす。


<【カイト】さんからアイテムが送られました。受け取りますか?>


 すると、勇の目の前にシステムメッセージが表示された。


「それ、やるよ! この前色々教えてもらったから、そのお礼だ!」

「あ、ありがとう! 何だろう」


 勇は素直に受け取り、そのアイテムを確認してみる。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇

  

【クリムゾンエッジ】

分類:片手剣

攻撃力:30

説明:真紅に染まりし剣


 ◆◇◆◇◆◇◆◇



(……めちゃくちゃ強い。これ絶対レアアイテムだ)


 今、勇が装備しているのは初期装備の【アイアンソード】。


 攻撃力というのは武器そのものの強さを示す数値で、街の武器屋で買える最高値が攻撃力20だ。

 それを踏まえると、30というのはかなり強い。


「ありがとう、カイト君! でも、これ多分レアな武器だよ? さすがにそんな良い物をもらう訳には……」

「いいっていいって! 俺が上げてるのは大剣だから、片手剣持ってても意味ねーし!」

「あ、そういうことか。前に伝えてなかったけど、スキルポイントの振り直しならできるよ――」


 だから片手剣に振り直して使いなよ。と続けようとしたところで、


「ああ、それなら知ってるぜ! でも俺はもう、大剣一筋って決めてっからさ! どうせ使わねーし、おっさんが使ってくれよ!」


 カイトが勇の言葉を遮ってそう言った。


「そだよー。この前のお礼も兼ねてるんだから素直に受け取っておきなって!」


 さらにエミからの後押し。


 あの程度のことでこれほどのアイテムをもらうのは気が引けるが、ここで変に遠慮すれば(かえ)って気を悪くさせてしまう。

 故に、勇は彼らの厚意を素直に受け取らせてもらうことにした。


「……そっか。そういうことなら、ありがたくもらっておくよ! 二人ともありがとう!」

「おう!」

「どういたしましてー!」


(本当にいい子達だな……。俺、幸せだわ)


 勇は感激のあまり、思わず泣きそうになるのをギリギリのところで堪える。

 これまで多くのVRMMOをプレイしてきたが、人から贈り物をされたことなんて初めてだ。 


「じゃあ、早速!」


 勇は彼らからもらった【クリムゾンエッジ】を装備。

 真紅に染まった、見るからに強そうな剣が勇の右手に握られた。


「おお、かっけーじゃん!」

「ねー。ちょっとおっさんには派手だけど!」

「あはは……。ありがとう、大切にするよ! ところで、二人はどこでこの剣を?」

「ん? マップの下のほうにある【試練の洞窟】だけど。おっさん、もしかしてまだ行ってねーのか?」

「あ、うん。実は【駆け出しの森】以外は、まだあんまり……」


 勇は苦笑いしながら答えた。 

 すると、カイトとエミは顔を見合わせる。

 一度大きく頷くと、エミが口を開いた。


「ねえ、おっさん。今って時間あるー?」

「うん、今ログインしたところだから」

「それなら俺達と一緒に今からその洞窟行かね? 丁度向かおうとしてたところなんだよ」

「え、俺もいいの?」

「おう! 人が多いほうがボスを倒すのも楽だしな!」


(ボスが居るのか! それは楽しみだ!)


「そういうことならぜひ!」

「うし! じゃあもう一人連れが来るから、そいつが来たら――お、丁度来たみたいだ。おーい!」


 カイトの視線のほうに目を向けると、これまた見覚えのある男の子が駆け寄ってきていた。


「ジークさんじゃないですか! この前は本当にありがとうございました!」

「リオン君! 久しぶり……って、えっ? 三人って知り合いだったの?」


 てっきりカイト達と同じく派手な人が来るかと思いきや、来たのは初日に出会った優等生君――リオン。

 まさかこの三人が知り合いだとは思ってもおらず、勇は驚いた。


「ああ、リオンとはコミュニティ掲示板で知り合ってさ。なっ!」

「はい! ジークさんにこのゲームのことを教えてもらった者同士ってこともあって、仲良くなって。たまに一緒にプレイしてるんです」


(コミュニティ掲示板……そういえば前に見た時、リオンって名前の書き込みもあった気が。なるほど、それでか)


「へえ、そうだったんだ! 会えて嬉しいよ!」

「はい、僕もです!」

「リオン、今日はおっさんも来てくれるってよ!」

「え、本当ですか!? やったー!」

「おう! よし、じゃあ揃ったことだし、早速行くとすっか!」

「「「おー!」」」


 かくして、四人は【試練の洞窟】に繋がる転移の魔法陣に向かって歩みを進めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 恩返ししてくれるのほんといい子達……
[一言] なんかこの小説好きw エタらないでねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ