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 俺たちは、市場での準備を終えてダンジョンまでやってきていた。


「まずは試しで五層まで行ってみようと思う」


 俺がそう言うと、アインは考え込むように、シーナは驚くように反応したが、俺は構わず話を進めた。


「詳しい期間は決めてないが、五層までなら一日もあれば辿り着くだろ。そこで軽く腕試しをして、そこから先はまたその時に考えよう」


 俺たちが用意した食料や水はおおよそ五日分。ただしこれはあくまで用意してあるだけであって、五日丸々潜り込むつもりではない。

 そう言うと、シーナが恐る恐る手を上げた。


「シーナ?どうかしたか?」

「えっと、その……私、一日でそんなに歩けない……と思います」


 シーナはまだ小さな少女で、荷物持ちも兼ねている。たしかにシーナの言うこともわかるが、それにはすでに対策があった。


「大丈夫。シーナには支援の魔法をかけるから、いつもより足も動くし疲れにくくなるよ」

「えっ……リゼルさん、支援もできるんですか?」


 俺のその言葉にいち早く反応したのは、アインの方だった。


「一応な。っつっても、大したもんじゃないぞ?」


『風の楔』にいたころは、使えるというだけで使ったことはなかった。Sランクパーティーに必要とされるほどの支援ではなかったというわけだ。支援魔法単体で見たら、せいぜいEランク程度だろう。俺のメインはあくまで、ヒーラーなのだ。


「いやいや、使えるってだけでもすごいですよ」

「そうか?まあ、とにかくそういうわけだからシーナは安心していい」

「すみません。私なんかのために……」


 シーナは自分に魔法を使ってもらうことに対して申し訳なさを感じているようだったが、そこには言及しなかった。

 事実、戦闘職側に気を使われるなんてポーターとしては失格だろう。だが、俺たちやシーナのことを考えれば仕方のないことだ。


「では、私からもいいですか?」


 今度は、アインが手を上げた。


「一度、リゼルさんの使える魔法を教えといてもらいたいです。斥候兼ヒーラーって言ってましたけど、もっと具体的には何ができるんですか?」

「そうだな、俺は──」


 俺にできるのは、高位治癒魔法と低位の支援魔法及び攻撃魔法。あとは、索敵魔法だ。

 魔法以外でできるとこといえば、ダンジョン内にある罠の発見や解除といったところだろうか。いざという時の近接戦闘も鍛えてはいるが、魔物を倒せるほどのものではない。杖を使って攻撃されないようにけん制する程度だ。

 そのことを伝えると、アインは納得したように頷いた。


「なるほど。どうりでそんな無駄に長い杖を持っているんですね」

「無駄とは失礼な奴だな……」


 たしかに長い杖だということは認めるが。


「つまり、私は後方には気を使わなくていいんですか?」

「そうだな。というか、索敵があるからアインは何も気にしなくていいんだぞ?」

「……?そういうわけにもいかないですよね?」

「?」


 アインは何を言っているのだろうか。

 索敵があれば敵の位置を確実に割り出せるので、奇襲なんてされることはない。それに俺の場合は、索敵に引っかからない───つまり、索敵の魔法に反応することがない魔力を持たない敵や罠に関しても、知見が深い。せっかく索敵の魔法が使えるのならと、必死こいて斥候に必要な技術を習得したのだ。


「とにかく、その辺の詳しい力を見せるためにもひとまずはダンジョンに潜るしかないだろ」

「それもそうですね。私の力も実際に戦闘を見てもらわないと伝えられませんし」

「それじゃ、出発と行くか」


 俺の掛け声で、二人はダンジョンの入り口へと向かっていった。

 今までは黙って指示に従う側だったので、俺はなんだか少し心がざわつくような感覚を覚えたのだった。


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